久留米つつじマーチの期間中、博多の義兄と大分のF夫婦は、我が家にお泊まりである。
その間、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ・・・と言いたいところだが、
皆寄る年波には勝てず、9時ともなれば欠伸ばかり出て、
「ふわーーー。おっと、もうこんな時間。寝よっと。」
「お休みなさーい。」
ジジイになったもんである。
ついでに言うと、Fさんらは月曜にも久留米で所用があり、日曜まで我が家に泊まる事になっている。
本来ならばその用件の前に、髙良山に登る予定だったのだが、
「イテテ、豆が・・・」
「私も筋肉痛で・・・」
「止めとこか。」
「さんせーい。」
そんな情けない会話の後、向かったのは、
田主丸の紅乙女酒蔵である。
あらかじめ電話で、酒蔵見学を申し込んでいる。
先ずは蒸留棟から。
「アラジンの魔法のランプのごたるでしょ。これはフランス製の蒸留器で、本来はブランディに使われるやつです。」
「ひょー、こんな蒸留器、他所の酒蔵では見たことなかね。」
三つに別れていて、それぞれ役割が違うんだそう。
ウイスキーと違い、ブランデーは随分と複雑らしい。
「これは樫の木です。こんな大きな樫は珍しかげなです。」
「ははあ」
煉瓦造りの建物の前までやって来た。
紅乙女酒蔵は、地元の古い酒蔵の奥さんが、65歳の時に創業したのだそうだ。
「これが、凝りに凝ってですね。こだわりが凄かとですよ。」
「何となくわかります。」
「どうぞお入り下さい。」
分厚い扉を開けると、
暗闇に浮かぶステンドグラス。
館内に入ると、プンと甘い香りが鼻をくすぐる。
「樽から蒸発した天使の分け前と言うやつです。照明つけます。」
「オーナーは設計図ば見て、どうにもデザインが気に入らず、設計家をフランスで勉強させたらしかです。勿論、紅乙女の費用で。」
「ステンドグラスが、酒を美味くするとは思えんばってん、そこに強い思い入れがあったとやろね。」
この樽も全部フランス製との事。
とんでもない初期投資である。
樽ばかりではない。
「甕もあります。樽と甕はそれぞれ別の焼酎になります。」
因みにここでは焼酎の事を『祥酎』と表記する。
女性オーナーならではの感性だ。
幾つかの樽には、著名人のサインがある。
これは漫画家、いや今はイラストレーターの江口寿史のもの。
ステンドグラスに描かれるのは、初代社長がこよなく愛した薔薇。
この半円状の建物は、
「今は事務所ですが、昔はここも貯蔵庫やったらしかです。」
スペース的にロスが出る形状だが、ここでも敢えてデザイン重視である。
売店
合計40km歩いた自分へのご褒美だ。
「少し高いけど、これ買っていい?」(私)
「買えばいいじゃん。」(家内)
ワーイ (ノ^∇^)ノ
ついでに、隣接するワイナリーへ。
森の中のワイナリー。
いい雰囲気である。
日付ごとに瓶が並べられている。
中には創業当時のものも。
巨峰ワイナリーが1972年、紅乙女酒造は1978年創業となっている。
いずれも同じ酒蔵の出資である。
同じ酒類製造とは言え、全く未経験な事業に、ごく短期間のうちに、相次いで莫大な資金が投入されている。
50年前、この界隈は沸騰していたに違いない。
当時のその熱気が、未だにこの森に残っている気がした。