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Tシャツとサンダルの候

天高き阿蘇の空と物忘れ


三俣山お鉢巡りで、膝が何ともなかった事に気を良くした私。


「阿蘇山に登ろうか。いつまた登れんようになるか分からんし。お前登った事無いやろ。」(私)

「あー、じゃあ行く。」(家内)



ちゅう事で阿蘇である。

前回、単独で登った時は、仙酔峡からのアクセスだったが、今回は砂千里側からである。



烏帽子岳を振り返って、パシャリ。




砂千里ヶ浜。

火山荒原というそうだ。

常に流れくる有毒ガスと、度重なる降灰により、極端に植物の生育に適さない環境となっている。



赤茶けた山肌と黒い無機質な地面は、まるで月面を思わせる。




「んじゃ、月の砂漠ば行くぞ。」

「お、おう。」

「因みに、正面に見える崖ば登って、あの稜線に出るっちゃけんな。」

「ひょえーー!」

「だーいじょうぶ。実際は、見た目ほど険しくなかけん。」



僅かに生育する植物が作った塚。




外輪山と九州脊梁の山々。


「何か墨絵のようね。」



「な、見た目ほどじゃなかやろ。ちょこっと、きつかだけたい。」

「・・・」


この頃までは、阿蘇の空には重たい雲が広がっていたのだが・・・



随分と登ってきた。


「おっちゃん、コースマーカーから外れとるぞ。」

「こっちでも間違っとらん。黙ってついてこんか。」

「ふん、私はこっちを行くわい。」


隊長の指示に従わない隊員には困ったものである。



不意に青空が広がってきた。

ワーイ!


「あとどのくらい?」

「ここまで来たら、もう一息じゃ。」



そら出た。

稜線だ。

後は気持ちがいい稜線歩きが待っているだけだ。



「あれが高岳で、」




「向こうが去年登った根子岳たい。」

「ふーん。ところで、もこに朝ご飯はあげたんやろ。」

「あっ!!」

「バカモンが!」


平隊員に叱られて、青ざめる隊長であった。



稜線を行く。




中岳火口。







このピークを登りきると、




中岳山頂だ。

火口にスマホを向けるオバサンがやたらと邪魔である。



あらぬ方向を見て呆然しているオヤジ。

いつの間にかヤツが撮っていたらしい。

これは、遠く愛犬に思いを馳せ、反省している姿なのだ。



高岳へ続く稜線を行く。




トレランやってるよ。

元気だね。



頂上が見えてきた。




到着。




月見小屋と根子岳。




天狗の舞台


「おや?人影が見えるな。行けるようになったんやろか?」

「もこがお腹を空かせて待っとる。早く帰らんと。」


ごもっとも。



『できましたよ~』by 早川聖来

わかってるよ~



一刻も早く帰宅せねばならぬ事情を、自ら作ってしまったのだ。

ラーメン食い終わったら、とっとと引き返そう。



中岳稜線まで戻ってきた。

噴煙がもろに砂千里を覆っているのが見える。

降りる時までには、風向きが変わっていますように。

火山ガスって、曝気されてても、結構目や喉に来るんだよね。


草紅葉と言えなくもない登山道を、大急ぎで降りていく私達だった。



ドピューーーン






「ただいまー、もこ。ごめんよ!」



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