明け方になると、きまって尿意で眼が覚める。
ギリギリまで我慢し、限界に達すると、「チッ」と舌打ちし、布団から這い出す。
判で押したような、早朝の私の行動である。
あー、やだやだ。
親父と同じ事をしてるよ。
事が済めば、再び布団に潜り込み、こう考える。
(さて、今日は何をしよう)
そうだ。
良いこと考えた!
「おい、仰烏帽子に行く事にした。来るか?」
「はあ。」
「芍薬咲いとるみたいやぞ。」
「・・・いきなり言われて、行けるかー!!」
ふん、ならいい。
俺一人で行くまでだ。
山の準備をさっさと済ませ、トーストを口に押し込み、ヤツから赤口号の鍵を奪い取る。
「んじゃ。あばよ。」
「あ、待って。今日は肉ば買いに行くけん、ジムニーは・・・」
「肉やら要らん。何なら今日から、ベジタリアンになってもよか。」
ダッシュで家を出る私だった。
またしても前段が長くなった。
そんな訳で、仰烏帽子山である。
福寿草以来である。
バイケイソウが大繁殖する登山道を登っていくと、
おっと、いきなり出た。
山芍薬だ。
何しろ『立てば芍薬』なのだ。
そこはかとない気品すら感じる。
この原生林の尾根を抜けると、福寿草の保護区域である。
保護区域もこの通り。
風に揺らぐ純白の花弁。
夢中でカメラを構えていると、突然ガサガサ!と何かが動く音が。
びっくりして音がする方向を見やると、
ペアだろうか。
鹿が二匹、立ち止まって、こちらをジッと見つめていた。
人間がロープ内に入れない事を知っているのか、悠然としたものだ。
暫く立ち止まったままである。
気になるのは、バイケイソウと山芍薬のテリトリーが重なっている点だ。
どう見たって、バイケイソウの方が強そうである。
現にこの山では、山芍薬の100倍は繁茂している。
そのうち、山芍薬が駆逐されてしまう、なんて事ないだろうか?
蕾もたくさんあって、もうしばらくは楽しめそうだ。
保護区域を通り過ぎ、石灰岩が露頭する傾斜を下っていくと、
仏石である。
仏石からは、鎖を掴んで少し登り返さねばならない。
稜線にでた。
例によって、ここから先は省略して、
ワープ!
ハイ、山頂。
遠く霞んで見えるのは霧島連山。
あんまり早く家を出たせいか、昼飯には早すぎである。
しょうがない。
時間も余っているし、五木村まで行って、五木豆腐でも買って帰るとするか。
赤口号を取り上げたせいで、買えなかったであろうバーゲンの肉の代わりに。