年金機構のすぐ近く、更に言うなら、我が家のすぐ近くに《ほてい食堂》という大衆食堂がある。
定食類やチャンポンなどの麺類、焼き飯他、メニューが豊富な店である。
私がこの手の大衆食堂に目がないのは御存じだろう。
現役の頃から、ちょくちょく食べに行っていた。
そんな店であったが、大将が病気でもしていたのだろうか。
一年近く、休業が続いて、心を痛めていた。
もう、このまま閉店だろうと、馴染み客なら誰しも思っていた筈だ。
それが半年ほど前だったか、不意に【営業中】の札が下がった時は、飛び上がるほど驚いたものだ。
復活したのか!
それ以来、いつか行きたいと思っていた。
いい機会だ。
年金機構に行ったついでに、寄ってみた。
いかがであろう。
ずいぶん昔に流行った店舗デザイン。色褪せた看板に、入り口を隠す怪しげな簾。
非の打ちどころがどこにも無い。
鳥肌が立つような【美】すら感じるではないか。
顧客は近所のサラリーマンが中心である。
以前は、店に入るなり、大将が放つ大声の挨拶で、迎え入れられたものだ。
その声の大きさを表現するなら、
「らっしゃいませーーーー!」
ぐらいだったが、
「いらっしゃいませ。」
なんだよ、普通の声になっちゃってるよ。
よっぽど、病気が堪えたんだな。
念のためにいうと、病気のせいにしているのは、私の勝手な想像だ。
更にさらに、あれだけ豊富だったメニューが、半分、いや4分の1以下になっていた。
定食類がごっそり全部無くなっちゃった。
どうやら、以前のメニューをこなすには、まだ本調子ではないのは間違いないようだ。
それなら仕方がない。
今日は、頭が定食色になってしまっていたが、素早く書き換えた。
ほてい食堂は、元々チャンポンが人気メニューなのだ。
「チャンポン頂戴。」
「へーーーい。」
「お待ちどおさま。」
来た来た。
え、レンゲの底が、何やら傷だらけで汚そう?
フッ
そんな事を気にするようでは、まだまだひよっ子である。
何事もなかったかのように、泰然と箸を取り、胡椒を振りかけ、ウスターソースをチョイと回しかける。
このチョイが重要なのだ。チッでもチョロチョロでもダメなのである。
チョイなのだ。
ここら辺の機微は、経験を積むしかなかろう。
これが、通が久留米チャンポンを食す時の作法である。
ズズズー
旨い!!
よかった。味は全然変わってないよ。
あー、美味しかった。
完食。
大将。
無理せず、長ーく続けていってね。