佐々木禎子さんが折った鶴の数は少なくとも1300羽以上だったことがご遺族の話から分かっていますが、いろいろな数の説があります。
ベラルーシ(ロシア語圏)では新聞記事の内容により、643羽説が広がっていましたが、1980年代以降は644羽説が広がりました。
そのきっかけになったのは1977年にアメリカの児童文学作家エレノア・コアが英語で「Sadako and the Thousand Paper Cranes サダコと千羽鶴」という本を書いたからです。その中で「サダコは折り鶴を644羽作った。足りなかった分は二人の友人が作って棺に入れた。」と書かれているのです。
英語の影響力は大きいです。
ここから644羽説が世界中に広がりました。
一方で、千羽作ろうと思ったけど644羽しか作れなかった。残りは356羽。これを友達二人が一晩で作り上げ、サダコのお葬式に持って行ってお棺に入れた(きっちり千羽の鶴といっしょにサダコは天国へ旅立った。)・・・というのは現実味がありません。
単純計算で1人178羽の折り鶴を納棺に間に合うよう折りまくったことになります。
また356羽の折り鶴を持ってきてお棺に入れた友達など存在していなかったことは遺族の証言から明らかです。
やはり、このアメリカ人作家は、あくまで想像の世界、創作の世界でこの作品を執筆していると、念頭に入れてこの本を読むほうがいいです。
それにしてもどうして644羽という数字を作者は選んだのでしょう。そういう数字を英語で書かれた新聞で読んだとか、643羽と聞いたことがあったが、英語で発音すると643より644のほうがきれいに聞こえる(ような気がする)ので、644という数字にしようという考えがエレノア・コアの頭の中に浮かんだ可能性もあります。
実話を元にしたフィクションですよという前提があれば、折り鶴の数字なんていくらでも作者の好きなように書けるのです。
でも純粋な子どもの読者は、これが正しいんだと思いこんでしまいます。
ともかく英語で書かれ、さらに英語からの翻訳をするのは多くの翻訳家ができるので、この本は多くの言語に翻訳され、世界中に広がっていきます。もちろん日本語訳も出版されました。
ロシア語版は1981年に初版が発行されたようです。(すみません、調べたけれど確証が得られませんでした。)
こうしてロシア語圏には1980年代以降、644羽説が広がっていきます。
画像はロシア語版「サダコと千羽鶴 Садако и тысяча бумажных журавликов」1987年度再版の表紙です。
"Садако и тысяча бумажных журавликов : Повесть : [Для мл. шк. возраста] Элеонора Корр; Перевод с англ. М. Кулиса; [Предисл. М. Дудина; Рис. С. Спицына] Л. : Дет. лит : Ленингр. отд-ние, 1987.
明らかに原爆の子の像をイラストにしています。英語版の表紙は着物を着たサダコが折り鶴を持っていたりしてカラフルで、平和への希望が表れているのですが、ロシア語版はやはり「鎮魂」というイメージの絵が描かれていますね。
ロシア語版では、出版社の判断で「小学生対象文学作品」とされています。
(12)に続く。
ベラルーシ(ロシア語圏)では新聞記事の内容により、643羽説が広がっていましたが、1980年代以降は644羽説が広がりました。
そのきっかけになったのは1977年にアメリカの児童文学作家エレノア・コアが英語で「Sadako and the Thousand Paper Cranes サダコと千羽鶴」という本を書いたからです。その中で「サダコは折り鶴を644羽作った。足りなかった分は二人の友人が作って棺に入れた。」と書かれているのです。
英語の影響力は大きいです。
ここから644羽説が世界中に広がりました。
一方で、千羽作ろうと思ったけど644羽しか作れなかった。残りは356羽。これを友達二人が一晩で作り上げ、サダコのお葬式に持って行ってお棺に入れた(きっちり千羽の鶴といっしょにサダコは天国へ旅立った。)・・・というのは現実味がありません。
単純計算で1人178羽の折り鶴を納棺に間に合うよう折りまくったことになります。
また356羽の折り鶴を持ってきてお棺に入れた友達など存在していなかったことは遺族の証言から明らかです。
やはり、このアメリカ人作家は、あくまで想像の世界、創作の世界でこの作品を執筆していると、念頭に入れてこの本を読むほうがいいです。
それにしてもどうして644羽という数字を作者は選んだのでしょう。そういう数字を英語で書かれた新聞で読んだとか、643羽と聞いたことがあったが、英語で発音すると643より644のほうがきれいに聞こえる(ような気がする)ので、644という数字にしようという考えがエレノア・コアの頭の中に浮かんだ可能性もあります。
実話を元にしたフィクションですよという前提があれば、折り鶴の数字なんていくらでも作者の好きなように書けるのです。
でも純粋な子どもの読者は、これが正しいんだと思いこんでしまいます。
ともかく英語で書かれ、さらに英語からの翻訳をするのは多くの翻訳家ができるので、この本は多くの言語に翻訳され、世界中に広がっていきます。もちろん日本語訳も出版されました。
ロシア語版は1981年に初版が発行されたようです。(すみません、調べたけれど確証が得られませんでした。)
こうしてロシア語圏には1980年代以降、644羽説が広がっていきます。
画像はロシア語版「サダコと千羽鶴 Садако и тысяча бумажных журавликов」1987年度再版の表紙です。
"Садако и тысяча бумажных журавликов : Повесть : [Для мл. шк. возраста] Элеонора Корр; Перевод с англ. М. Кулиса; [Предисл. М. Дудина; Рис. С. Спицына] Л. : Дет. лит : Ленингр. отд-ние, 1987.
明らかに原爆の子の像をイラストにしています。英語版の表紙は着物を着たサダコが折り鶴を持っていたりしてカラフルで、平和への希望が表れているのですが、ロシア語版はやはり「鎮魂」というイメージの絵が描かれていますね。
ロシア語版では、出版社の判断で「小学生対象文学作品」とされています。
(12)に続く。