おはようございます。
本日は、久しぶりの読書録、
アイスランド小説「花の子ども」についてです。
どうぞ、おつきあいくださいませ。
オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティル『花の子ども』(早川書房)。
邦訳は、この4月発売ですが、原作は2009年の出版です。
まずは、あらすじを・・・。
22歳のロッビは、母の遺したバラを手に旅をする。
目的地に着くまでに、さんざんの目に遭い、
ようやく到着した先では、なんと、赤ん坊を育てる羽目に・・・
実は、ロッビは、既に父親なのだ。
一夜、いや一瞬の出来事で、恋人でもない女性が妊娠・・・
その彼女が9ヶ月の子を預けに、異国の遠い修道院へやってききた。
そんな彼に周囲は暖かい・・・
旅の始まりから、ずっと彼は親切にされてきたのだが・・・
これからのロッビはどうする、どうなる?
・・・というお話。
当初、「それはないだろう」という先入観で読み始めたせいか、
理解できない部分がありました。
たとえば、ロッビが精を出す、異国の修道院のバラ園造りは
どうやら無給らしい・・・
いくら母親の遺産があっても、22歳の若者がそんなことする・・・?
・・・何より、一瞬の関係で、ほとんど知らない男との子どもを
まだ学生の女性が未婚のまま産んじゃう?
父親であるロッビは出産に立ち会ったものの、何をするわけでもなく・・・
そして、ロッビがやたらと身体のことを、つまりセックスのことばかり
考えているのが理解不可能・・・
そのくせ、女性の前ではカッコがつかないでいるわけで・・・
なんだろう?これ・・・
疑問符だらけながらも読み進められたのは、
ロッビの視点で、わたしも旅をし、出会う人々に助けられたからでしょう。
そのうち気づきました。
ロッビは誠実で聡明な、いい奴なんです・・・
早川書房の紹介ページ(本書の巻末解説でもある)によると・・・
「”ジェンダー・ギャップ世界最小”のアイスランド発の小説」であり
本国では「『新たな男性像』を描き出した点を評価され、
アイスランド女性文学賞を受賞した長篇小説」なのだそうです。
また、訳者の神崎朗子氏も「あとがき」で
「アンナとロッビの生きる社会や、ふたりがつくろうとしている家族は、
日本のものとはかなり異なる」(366頁)と、書いておいでです。
なるほど、ニッポンの典型的アラカン女が
戸惑ったのも当然なのでした。
外国文学を読む上で、異文化による違いを知ることは
醍醐味ですし・・・
一方で、「どこの国でも人間の気持ちは同じ」と
普遍性に共感することも、また面白いわけですし・・・
本書でも、わかる、わかる~と、うなずく部分も多々ありました。
ただ・・・カトリックについての知識があった方が
より理解しやすいかなというのが正直なところ。
私の場合、知識が浅く、読み切れなかったと感じています。
・・・何はともあれ・・・
この↑ラブリーな表紙に惹かれて読み始め・・・
ロッビのだめんずっぷりにニヤニヤ、
周りの優しさにほっこり、
おいしそうな食事に、その度、お腹を鳴らしました。
そして・・・
読み終えてなお、ロッビとアンナ、娘のフロウラル・ソウル・・・
三人の行方に想いを馳せております。
読後もなお、キャラクターが、離れずにいてくれる・・・
それは、わたしにとって「名作」の証です。
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お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
バラ園を造るロッビにちなみ、バラの画像をいれています。
既出ばかりで、ごめんなさい!
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拙ブログでは、読んだ本の一部だけをアップしていますが、
ブクログ「由々と本棚」は、読み終わった本を収めています。
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