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『人生最後のご馳走』を読む

2021-02-19 | 2022夏まで ~本~
「人生の最後、何が食べたい?」
よく話題になることですが・・・

青山ゆみこ『人生最後のご馳走~淀川キリスト教病院のリクエスト食』
(幻冬舎文庫)は、もっと現実的。
著者がホスピスに通い、患者、スタッフの方々に取材した記録ですから。

この本は、上間陽子さんの幼い娘さんが、
いつも見入っている本なのだとか。

『海をあげる』(→上間陽子『海をあげる』を読む)のエピソードに
幼い女の子が夢中になる、大人の本って、どんな本なのかしら・・・と
早速、読んでみました。

・・・なるほどです!

天ぷらや、寿司など、おいしそうなカラー写真が満載なので
文字が読めなくても、夢中になれます。
わたしも、美味しそうだなぁと惹かれましたものw

大人には、それだけではありません。
これがホスピスで提供された食事だと知って驚くはず。
メニューが豊富なだけでなく、器や盛り付けも、料理屋さんのようなのです。

レストランガイドかと見まごいます!


(以下、食べ物の画像は、アップする機会を逸した最近撮影のもの。
まず↑は、この冬、生の鱈の子を見つける度に、繰り返し作った
「タラコとこんにゃくの煮物」。)


ホスピスは、末期がんの患者さんが、
苦痛を和らげる治療を受けながら、最期の日々を穏やかに過ごす、
医療施設。

サバイバーのわたしが、かつて入院し、今も通院している病院にも、
緩和ケア(苦痛を和らげる治療をする)病棟が設けられています。

当時、わたしの入院中に、帰宅をしていた重篤の患者さんが
一般病棟に緊急搬送され、一時的に、
ベッドが隣り合わせになったことがありました。

その患者さんに、看護師さんが
「今、先生がモルヒネを打ってくれるからね!」と
声をかけていたのが忘れられません。

あの方は余命宣告も受けていらしたはずで、おそらく、
その後、緩和ケア病棟に移られ、食事なんて考えられなかったのではと、
この本を手にしたときに、思い出しました。

でも、この本の患者さんは違います。
食事を楽しみにして、召し上がっていらっしゃるのです。

それは、普段から、メニューがバラエティ豊かなだけでなく・・・
このホスピスでは、患者さんの希望に合わせた食事を、
週に1度「リクエスト食」として出していることが、大きいのでしょう。

日本に初めて開かれたホスピスゆえの先見性なのかもしれません。


(母のお得意、たまり漬け・・・来年も作れるのかな・・・)


本の中では、それぞれの患者さんの病名・年齢のほか、
簡単なプロフィールと共に、その方のリクエスト食の写真が
添えられています。

患者さんがインタビューに答える言葉は、生き生きしていて・・・
時にユーモラスで、病気すらも笑い飛ばすような語りです。
リクエストも、ステーキやらお好み焼きやら、健康な人と変わりません。

このホスピスに入るまでは、全く食べられなかった方が、
今では、リクエストをし、食べるのを楽しみに待っていられる・・・

そうなると、つい、素人は・・・
「好きなものを食べることで、医学的に病状が回復する、数値が良くなる」
ような気になってしまいます。

筆者も、そのあたりを医師(池永昌幸・副院長)に尋ねていました。


(今年最初にして最後!?大好きな「甘平」!)


お答えは・・・

・・・ホスピスでは、患者さんの痛みを少しでもやわらげるために
「薬の処方をかなり細かく調整」し、その結果、食欲が戻ることが多い。

辛い闘病生活で失いかけた希望を、「看護師たちの手厚いケア」で取り戻し、
結果、表情も血色も明るくなる・・・

「食事が病状を劇的に変えることはありませんが、
食を含めたケアのすべてがつながると、患者さんの心や体の痛みを
少しでも軽減することができるのではないでしょうか」149頁

リクエスト食は、そのひとつの表現だともおっしゃっていました。

先生のおっしゃることは、
コロナ禍で奮闘される医療従事者の皆様に通じることなのでしょう。
頭が下がるばかりです。


(ぜんざい。餅つき器を買ってから、お餅がおいしくて、小豆をコトコト煮る機会が増えています。)


松永副院長は、「私たちは『私はあなたのことを大切に思っている』という
思いを、それぞれの立場で患者さんに伝えることが大事」と、
おっしゃいます。

我が家では、今、身近な高齢者が岐路に立ちました。
私たち夫婦も、夫が定年を迎え、これから、どう生きるかを模索中。
二人とも年をとったなぁと、お互いを見る度に、嫌でも感じていますw

だからこそ、いたわりの気持ちを大事にしたい・・・

「あなたを大切に思っている」・・・

そのことが、相手に伝わるよう暮らしていくことは、
今すぐ、実践できるはず。
そんなことも考えさせられました。

(↑最近、疲れていてピリピリの我が家。
ケンカにも疲れ果て、この気持ちに、たどり着いた!?w)

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福士蒼汰さん主演「神様のカルテ」(テレ東)
櫻井翔さんの映画のイメージが強かったのですが、福士くんも好演です!

大好きだけれど、今は出かけられない松本を舞台にした原作(全5冊)の
イメージが、ちゃんと生きていて、昨夜、録画を観て号泣しました。
本日の記事とも響く部分が大きいこともありましょうが・・・

テレ東ドラマにしては、CMが圧倒的に少いのも嬉しい・・・w

オススメです!

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