おはようございます。
本日は額賀澪『風は山から吹いている―― Why climb mountains with me? 』
(二見書房)の感想文です。
どうぞ、おつきあいくださいませ。
ほろ苦い想いをかみしめながら、読み進めば、最後は温かい涙・・・
そんな額賀澪氏の青春小説を『きみはレフティ』(小学館)以来、
ずっと楽しみにしてきました。
でも、最近の作品は、作者の想いがあふれすぎているなぁ、
やっぱりお若いなぁと・・・
アラカンおばちゃんは、戸惑うばかりでした・・・
(『タスキメシ』小学館。主人公はタスキをつなぐ、高校駅伝部員。
「タスキメシ」を実践して、我が家に定着したレシピもあります♫)
でも、今回は、イイですっ!
お話は・・・
高校までで、きっぱりと、スポーツクライミングを辞めた筑波岳。
ところが、大学入学早々、クライミング部から執拗な勧誘を続けられ
逃げるつもりで、登山部・梓川穂高と、山を登る羽目に・・・
いつしか、山登りを楽しむ岳。
その山頂で、かかってきた恩師からの無言の電話・・・
やがて恩師の滑落死を知らされる・・・自死か?事故か?
最後に恩師と会ったときの自分が吐いた暴言に苦しむ岳。
穂高と共に恩師の滑落死ついて、調べるために、山へと向かう・・・
そして・・・
・・・ラストは良い意味で、何度も裏切られます。
来るぞ、来るぞ・・・と額賀作品を読み慣れていた私も、
最後のは、全くの予想外でした。感涙・・・
(『ウズタマ』小学館。タイトルの意味がわからないんだけど・・・
その戸惑いを吹き飛ばす面白さ。「サッポロ一番」が食べたくなります)
初めて、自分と同じ名前の筑波山に登った岳に、
穂高が言います。
「険しい道を何時間もかけて昇って、日常から離れることで
自分にこびりついてる余計なものを引き剥がしていくのが登山なんだと
俺は思う。
まあ、下山するときに引き剥がした余計なものを
全部拾い集めることになるんだけどね」
そうやってまたに地上に帰って行くんだよ。(052頁)
(『タスキメシ 箱根』小学館。「タスキメシ」の続編。
箱根駅伝ファンとしてはたまりません。来年は沿道観戦したいなぁ)
・・・・そうなんですか!?なんと素晴らしい!
だから、昨今の登山人気なのでしょうか・・・
個人的な感想ですけれど・・・
額賀氏ご自身が、本作で、余計なものを引き剥がされ、かつ、
後から、拾い集めることもせずに、青春小説として昇華なさった気がします。
―― Why climb mountains with me?
この問いかけが、直接に響き、そこから全てが始まり・・・
物語が一貫しており、揺らぎません。
それが切なくもあるのですが・・・
なお、登場人物が山の名前を持つことは、
とっても重要なモチーフになります。
山のお好きな方なら、たまらないでしょうね♫
(『風は山から吹いている ―― Why climb mountains with me?』)
さて、恩師は、スポーツクライミングの選手として活躍、
ところが、引退後は転職続き・・・三十路を越えてなお定職がなく・・・
それゆえ、自死か、事故かと、滑落死の謎が深まるのです。
いわゆる「アスリートのセカンドキャリア」問題は、
オリンピック真っ只中なだけに、タイムリーな内容です。
この時期に、狙って出版したのかな~なんて、ついつい・・・ねw
本作で五感を全開して登山を楽しみ、旅ゴコロも満足。
感涙と共に、
コロナ禍の夏休み、本の世界で遊んでまいりました。
本日もおつきあいいただき、どうもありがとうございました。