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「どこかで生き続ける」~『岩波少年文庫のあゆみ』

2021-05-06 | 2022夏まで ~本~
本日は、若菜晃子『岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020』
(岩波書店)の、お話です。
どうぞ、おつきあいくださいませ。


(大人になってから読み、児童文学に再び夢中になったきっかけの本。)


『トムは真夜中の庭で』も、『床下の小人たち』も、
大好きな児童文学作品は、「岩波少年文庫」で読みました。

そんな「岩波少年文庫」の1950(昭和25)年・創刊以来の
70年にわたるあゆみをまとめ、代表作やゆかりの作家・画家・翻訳者や
当時の読者だった著名人のエッセイやエピソードも掲載。

巻末には、総目録まである、優れものです。

気になるところだけ、パパっと読んでもオッケ~なので、
連休前から、通勤時間に読んでいました。



(劇団四季のミュージカルにもなった、ケストナーの少女小説。
ケストナーは、全集で読んだ『飛ぶ教室』が大好きでした。)


創刊時の5冊は、クリスマスの発売だったので
「クリスマス・キャロル」を入れ、他「あしながおじさん」「宝島」
「小さい牛追い」「ふたりのロッテ」でした。

少女だった「ぐりとぐら」の中川李衣子氏が、
その本を手にした回想記も、感動ものです!

また、創刊時の表紙は青森の「小ぎん」があしらわれていたとか・・・
なぜ「小ぎん」だったかは、創刊メンバーだった石井桃子氏に
ゆかりではないかと推測・・・

・・・などなど数々のエピソートに興味が尽きません。


(『ベルリン1945 上』「ベルリン」三部作の最終巻。)


でも・・・本当を言うと、

子どもの頃に、「岩波少年文庫」を読んだ記憶がないのです。
夢中になったのは、大人になって、いわゆる児童文学の名作を
読み出してからのこと・・・

どうして読まなかったのかなぁ?


(『ベルリン1945 下』 書影が無かったので出しませんでしたが、
『あの頃はフリードリヒがいた』の衝撃は忘れられません)


その答えも本書にありました。

1962(昭和37)年から1973(昭和48)年は、
「新刊活動休止期間」だったというのです!

この頃は児童書の全盛期で、
各社の「豪華な装丁」の本が読めるようになり、
「小型で地味な」少年文庫は「片隅に追いやられていった」と・・・

・・・まさに、わたしは、この時期に子ども時代を過ごしていました!

全盛期にふさわしく、家には、毎月、小学館の全集が届けられていたし、
高学年になると、一般書である旺文社文庫の特装版を
揃えてもらってもいたし・・・

そりゃあ、「少年文庫」を読まなくても、しかたがありません・・・

今まで、このシリーズを、なぜ子ども時代に読まなかったのか、
手に取る度に、チクッと心が痛んでいたのです・・・。

おかげで、すっきりしました!w


(ハードカバーで読んだ記憶のある『床下の小人たち』)


本書の「おわりに」で、
石井桃子さんが、海外の留学先で図書館員から聞いた
言葉が引かれています。

「かつてあったいいことはどこかで生き続ける」

石井桃子さんは、岩波少年文庫の創設に尽力され
その後も、生涯にわたり、関わり続けた方です。

この言葉を紹介し、著者の若菜氏は続けます。

「人間はかつてあったいいことを支えに、少しでもいい未来を信じて
生きているのではないだろうか。...ひとりの人間にできるのは、自分がいいと
思うことを全力を尽くして残すことであり...

その先は、そのときの人たちが、また継いでいってくれるのだと思う」

この部分を読んでいて、涙が出てきてしまいました。
(通勤中、電車の中なのに!)


(『まぼろしの小さい犬』も、ピアスの名作です)


わたしも還暦が近付いてきて・・・いろいろ考える、お年頃w

それだけに・・・

今、ひとつの本を読み続けることが、その本を残すことになり、
次の世代の誰かが、きっと、そのまた次の世代へ「いいもの」として
継いでくれる・・・そう信じたいと思います。

大人になってから読み始めた「岩波少年文庫」ながら・・・
もう30年は経ちました。

『トムは真夜中の庭で』も、『床下の小人たち』も、
みんなみんな、岩波少年文庫の現役として、並んでいます。

「かつてあったいいことはどこかで生き続ける」のですね・・・

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お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
冒頭画像は、大庭城址公園で撮影。

ゴールデンウィーク明けの朝、こちらは雨降り・・・
どうぞ、お気を付けてお出かけ下さいませ。

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拙ブログでは、読んだ本の一部だけをアップしていますが、
ブクログ「由々と本棚」は、読み終わった本を収めています。
本のお好きな方、どうぞ、遊びにいらして下さいませ。

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