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本日は、若菜晃子『岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020』
(岩波書店)の、お話です。
どうぞ、おつきあいくださいませ。
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(大人になってから読み、児童文学に再び夢中になったきっかけの本。)
『トムは真夜中の庭で』も、『床下の小人たち』も、
大好きな児童文学作品は、「岩波少年文庫」で読みました。
そんな「岩波少年文庫」の1950(昭和25)年・創刊以来の
70年にわたるあゆみをまとめ、代表作やゆかりの作家・画家・翻訳者や
当時の読者だった著名人のエッセイやエピソードも掲載。
巻末には、総目録まである、優れものです。
気になるところだけ、パパっと読んでもオッケ~なので、
連休前から、通勤時間に読んでいました。
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(劇団四季のミュージカルにもなった、ケストナーの少女小説。
ケストナーは、全集で読んだ『飛ぶ教室』が大好きでした。)
創刊時の5冊は、クリスマスの発売だったので
「クリスマス・キャロル」を入れ、他「あしながおじさん」「宝島」
「小さい牛追い」「ふたりのロッテ」でした。
少女だった「ぐりとぐら」の中川李衣子氏が、
その本を手にした回想記も、感動ものです!
また、創刊時の表紙は青森の「小ぎん」があしらわれていたとか・・・
なぜ「小ぎん」だったかは、創刊メンバーだった石井桃子氏に
ゆかりではないかと推測・・・
・・・などなど数々のエピソートに興味が尽きません。
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(『ベルリン1945 上』「ベルリン」三部作の最終巻。)
でも・・・本当を言うと、
子どもの頃に、「岩波少年文庫」を読んだ記憶がないのです。
夢中になったのは、大人になって、いわゆる児童文学の名作を
読み出してからのこと・・・
どうして読まなかったのかなぁ?
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(『ベルリン1945 下』 書影が無かったので出しませんでしたが、
『あの頃はフリードリヒがいた』の衝撃は忘れられません)
その答えも本書にありました。
1962(昭和37)年から1973(昭和48)年は、
「新刊活動休止期間」だったというのです!
この頃は児童書の全盛期で、
各社の「豪華な装丁」の本が読めるようになり、
「小型で地味な」少年文庫は「片隅に追いやられていった」と・・・
・・・まさに、わたしは、この時期に子ども時代を過ごしていました!
全盛期にふさわしく、家には、毎月、小学館の全集が届けられていたし、
高学年になると、一般書である旺文社文庫の特装版を
揃えてもらってもいたし・・・
そりゃあ、「少年文庫」を読まなくても、しかたがありません・・・
今まで、このシリーズを、なぜ子ども時代に読まなかったのか、
手に取る度に、チクッと心が痛んでいたのです・・・。
おかげで、すっきりしました!w
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(ハードカバーで読んだ記憶のある『床下の小人たち』)
本書の「おわりに」で、
石井桃子さんが、海外の留学先で図書館員から聞いた
言葉が引かれています。
「かつてあったいいことはどこかで生き続ける」
石井桃子さんは、岩波少年文庫の創設に尽力され
その後も、生涯にわたり、関わり続けた方です。
この言葉を紹介し、著者の若菜氏は続けます。
「人間はかつてあったいいことを支えに、少しでもいい未来を信じて
生きているのではないだろうか。...ひとりの人間にできるのは、自分がいいと
思うことを全力を尽くして残すことであり...
その先は、そのときの人たちが、また継いでいってくれるのだと思う」
この部分を読んでいて、涙が出てきてしまいました。
(通勤中、電車の中なのに!)
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(『まぼろしの小さい犬』も、ピアスの名作です)
わたしも還暦が近付いてきて・・・いろいろ考える、お年頃w
それだけに・・・
今、ひとつの本を読み続けることが、その本を残すことになり、
次の世代の誰かが、きっと、そのまた次の世代へ「いいもの」として
継いでくれる・・・そう信じたいと思います。
大人になってから読み始めた「岩波少年文庫」ながら・・・
もう30年は経ちました。
『トムは真夜中の庭で』も、『床下の小人たち』も、
みんなみんな、岩波少年文庫の現役として、並んでいます。
「かつてあったいいことはどこかで生き続ける」のですね・・・
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お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
冒頭画像は、大庭城址公園で撮影。
ゴールデンウィーク明けの朝、こちらは雨降り・・・
どうぞ、お気を付けてお出かけ下さいませ。
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拙ブログでは、読んだ本の一部だけをアップしていますが、
ブクログ「由々と本棚」は、読み終わった本を収めています。
本のお好きな方、どうぞ、遊びにいらして下さいませ。