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読み出したら止まらなかった~「ナポリの物語3」

2020-05-20 | 2022夏まで ~本~
発売と同時に買ったのに、読む気になれず、一年も経ってしまった・・・
前巻も、そうだったのだけれど・・・

エレナ・フェッランテ『逃れる者と留まる者ーナポリの物語3』(早川書房)。
読んでいて、やたらと不安にさせられます。
それでも、読むことを止められない・・・圧倒的な筆力のなせる業でしょう。


ざっくりと、あらすじを。

ナポリの同じ地区に生まれ育った、「わたし」エレナとリナ。
前巻で、初めて小説を書き上げたエレナは、若き大学教授と結婚し、
フィレンツェで暮らし始めます。つまり「逃れる者」。

一方、リナは夫と別居し、幼なじみの男性と同居しながら、
工場勤めを経て、新しいビジネスを起こします。
リナはナポリに「留まる者」です。

520頁に及ぶ単行本なのに、「狭間の時」と題された一章だけ・・・
「訳者あとがき」に「青年期から壮年への過度期を指したものだろうか」と
ある通りの展開でした。

この第三巻は、一年以上も前に出版され、また、既に第四巻も出て、
シリーズは完結しておりますので
ここでは、私にとって印象的なことだけを・・・



まず、女友達との関係。

自分自身と、つい重ねてしまいます・・・

大人になってから親しくなった友人は大丈夫。
でも、いわゆる幼なじみ、リラとレヌー(エレナ)のような関係は怖い気がします。
お互い何でも知っていると思うだけに、素直に接することができなくなるんです。

わたし・レヌーがリラに対して感じる気持ち、
リラがレヌーに対して感じている(であろう)気持ちが
私と女友達の関係に置き換えられ、よくわかるだけに、気分が悪くて・・・

といって、相手の幸せを願う気持ちは人一倍です。

それがわかる、リラの言葉。

「なんのためにあんなに勉強したの?
わたしの分まで素敵な人生を送ってくれたらいいなってずっと思ってたのに。
見損なったよ、レヌーの馬鹿。」(521頁)

第三巻の最終盤、誰がどう見たって、失敗するであろう道を行こうとする
エレナ(レヌー)に対し、リラがぶつけた言葉です。

私は鏡を見ているようで、二人の関係はいたたまれません。
でも、互いを思い合う気持ちの強さも知っています。
そして、それも自分の鏡であるだけに、読み続けるのです。

こういった女同士の関係を描けるところが、女性作家ならではだと感じています。



それなのに、女性作家によくある食事のシーンが
この小説では、ちっとも楽しそうではありません。
舞台もイタリアなのにっ!?

本巻では、レヌーの手料理が「最初の皿、メイン、手作りのデザート」まで
と出てきたのに、詳しくは書かれず、結果、料理は、おいしいも何もないんです。
しかも、レヌーは母の作った料理を、あからさまに「まずい」と書いているし・・・。

イタリアといえば、「マンマ」の手料理なのにね・・・w

・・・という具合に、「ナポリの物語」は
イタリアのイメージを、良くも悪くも、ひっくり返すのでは?と
毎度、思っています。

以前、イタリア語を学んで身にしみたのですが、
イタリア語は、かわいらしい発音とは裏腹に、文法が規則的で細かいんです。
これは、イタリア人気質のあらわれではないかと、当時思ったものでした。

(実際、私が出会ったイタリア人は、けっこう気難しい人が多かった)


(書影は版元ドットコムよりお借りしました)


80年代に入ってから、イタリアはファッションの国として
今のイメージになってきましたが、
それ以前、わたしの幼い頃は貧しく暗いイメージだった気がします。

ゲーテの「イタリア紀行」を言うまでもなく
かつてはヨーロッパの中でも、際だった憧れの国ながら・・・
第二次世界大戦後のイタリアは、苦難の道を歩んだようです。

とりわけナポリは、90年代ですら、「ナポリに個人旅行する」というと、
治安が悪いと、周囲から心配されたものでした。

その「ナポリの物語」・・・

私たちの多くが抱くイタリアの「マンジャーレ!カンターレ!アモーレ!」の
(Mangiare!Cantare!Amore! 食べよう!歌おう!愛そう!)
陽気なイメージとは、かけ離れています。

しかも、舞台は、私が持つイメージの
暗いイタリア、1970年代のことですから・・・

読み終わってすぐに、第一巻をドラマ化した、その動画予告を見ました。

これが、まさに、私の想像のままでした。
全体に抑えた色調の画面に、街や家庭のありようは、
絶対的なヒエラルキーに基づき、暴力的ですらあります。

第一巻で、リラが父親に投げ飛ばされ、窓からすっ飛んだという
エピソードは衝撃でした。
ドラマは、あの世界がそのままなのでしょう。


ドラマも気になりますが・・・・・・
この外出自粛が明けたら、完結編となる4巻を買いに走るつもりです。

まずは、私の中で、この物語が、リラとレヌーがどうなるのかを見届けないと、
気持ちが収まりません・・・。

本当は、読むのが怖くて、第三巻を「積読」状態にし、
もう先を読まなくて良いかなぁと、思っていたくせに・・・
読み始めたら止まりませんでした。


「緊急事態宣言」発令・第41日目。

医療従事者の皆様、エッセンシャルワーカーの皆様に、
心からの感謝と敬意を。
どなたさまも、我が家も、どうか、今日の日を無事に過ごせますように。

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お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
勝手ながら、ただいま、コメントをご遠慮しております。

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