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本のプレゼント

2020-05-21 | 2022夏まで ~本~
小学校2年生のとき、交通事故に遭いました。

放課後、仲良しの家に行く途中の横断歩道・・・

ほんのちょっと脇見運転をした車がやってきて、
せっかちな私は、車が来る前に渡ろうと急いだものだから・・・
はねられて、数メートル飛ばされました。

幸い、大きなケガはなかったものの、後頭部を打っているからと
一週間ほど入院しています。

実は、そのときに、読んだ本が、今の私を作ったような気がするのです。




車を運転していた、おじさん・・・

といっても、それは八つの子どもから見ればで、
本当は、お若かったのでしょう、
お母様と二人暮らしだという、優しい男性でした。

おじさんは、私が見ても気の毒なくらい、
事故を起こしたことを申し訳ながり、毎日、見舞いに来てくれました。
そして、その度に、必ず、本を持ってきてくれたのです。

子ども向きのダイジェスト版ながら、オルコット『若草物語』、
シュピリ『アルプスの山の少女(ハイジ)』、ウェブスター『あしながおじさん』、
モンゴメリ『赤毛のアン』・・・そしてバーネット『秘密の花園』。

最初は、1冊暇つぶしにと持ってきてくれたのに、
私が、たちまち読んでしまったので、
それからは、あれこれ持ってきてくれたのでしょう。

「小学校2年生の女の子が好きそうな本は?・・・」と、
お仕事の合間に、本屋さんで選んでくれていたのかもしれません。
『アルプスの山の娘』だけは、私からリクエストした気がします。

そんな風にして、私は、一週間、飽きることなく、
繰り返し、繰り返し、本を読んで過ごしました。

私自身は、さして気にしなかったのですが、
当時、両親は頭を打っているからと心配し、私をあちこちの脳外科医に診せ、
脳波の検査などを受けさせたものです。

小学校5年生の頃だったっか、ようやく医師のお墨付きが出て、
私の脳外科・詣でも終わりました。
それが、あの優しいおじさんとの、お別れとなったはずです。

確かに脇見運転の過失はありましたが、
おじさんは、どれほど不安だっただろうか・・・と、
大人になって思い至りました。

たぶん、お元気なら70代後半・・・
お優しい方だったので、きっとどこかで
ご家族とお幸せに暮らしていらっしゃることででしょう。



さて、私。
後遺症に悩まされることもなく、元気に過ごし、半世紀・・・
本好きな、アラカンおばちゃんになりました。

あのとき、おじさんが、入院中の私に、毎日、プレゼントしてくれた本は、
数年後、母が揃えてくれた「少年少女」向きの全集で読み直し、
さらに、また大人向きの翻訳を読むようになります。

どの本も、大人になった私の近くにあり続け、
ずっと私を支えてくれました。

交通事故の加害者と被害者ではありますが・・・
おじさんがくださった、本のプレゼントを
今の私は感謝してやみません。


梨木香歩さんの『秘密の花園ノート』(岩波ブックレット)から
土屋京子訳の『秘密の花園』(光文社)を読み直していたら・・・

・・・そんな幼い日の記憶がよみがえってきました。

これからも、きっと私を支えてくれるはずの本との出会い・・・
60代、70代、その先も私の人生は続くと信じて・・・
大事にしていくつもりです。



「緊急事態宣言」発令・42日目。

医療従事者の皆様、エッセンシャルワーカーの皆様に
心からの感謝と敬意を。
どうか、どちらさまも、我が家も、今日の日を無事に過ごせますように。

◆アップし損ねていた、スズランの花。来年を楽しみに・・・

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お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
勝手ながら、ただいま、コメントをご遠慮しております。

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