12・7・18
作者は女性です
「老いの身に故郷ありて栗とどく」
この句を読んで作者は男だろう、と思ったら松本つや女、女性です。
「女は自分から老いの身っていうかなァ」と疑問に思った。
孫が生まれた、と云う知らせで私と家内は病院に急いだ。
硝子越しに見る、
まだ名前がない女の赤ちゃんに家内は硝子をトントンと叩いて、
「始めまして赤ちゃん、私がおばあちゃんですよ!」と云っている。
女はサッサとおばあちゃんになれるのに
私はおじいちゃんとは云えない。
「老いの身」が女性であっても不思議じゃないのかな、と思った。
その程度の解釈で数年経った。
2000年、鎌ケ谷市が基本計画策定について、
ボランティアグループからの提言を求められた。
ボランティアグループから30人ほどの人が集まって提言をまとめる。
私が司会をした。
最初に一言ずつ発言してもらい、和んだところで本論に入ろうと思った。
ホワイトボードに
「老いの身に故郷ありて栗とどく」を書き、参加者一人一人に
作者は男と思うか、女と思うか問うた。
答えは多分、作者は男性説が多いだろう、と思っていたら、
参加者全員が作者は男、
「残念でした!作者は松本ちよ女、女性です!」
会場が和んだところで本論に入る予定だった。
「老いの身って誰かしら……」
作者以外の解釈があるのか?
「作者のご主人?」
「いえ、作者のお父さんじゃないかしら……」
老いの身を作者の父親と読むと、この句がよくわかる。
私は悪乗りして、
父親の職業は、どこに住んでいるのか、かなり出まかせの質問を連発した。
大学教授から大工の棟梁まで、
田園調布から江戸川区小岩までと其々に読める。
俳句って座の文学と云われる一端を味わった