五高の資料整理顛末記 2000

六月二十七日　火　雨
七時三十五分に出発したが、どういうわけか八時には着いてしまった。何時もより十分早い。四十五分には開室した。生徒綴りの冊子はあまりにも汚損が烈しいので、まだ手をつけていない会計等の帳簿を確認する。

まず支出内訳簿と歳出内訳簿，大正時代までは表題は両方とも歳出であったようで昭和に入り支出簿と言う名前が出来たようである。
台帳と冊数を突き合わせるに内容が同じ物でも表題が一字でも異なれば別立てとして整理してあるので項目が多いこと、多いこと、その上この帳簿類は汚染がひどい。と言うのは
地下室にそのままの状態で保管してあったものを埃も払わずキャビネに格納してあるので
埃は出来るだけ落として歳出内訳簿、支出内訳簿と年代の古い順に帳簿の保管らしく縦に並べ替えた。三〇冊ばかり整理して並べるだけで五時間近く係った。時間がかかったのは当時の会計の内容はどんな物であったのだろうかと、内容を見たからであり、しかし手があまりに汚れるから手袋を使用しているが、このときには四足も真っ黒にしてしまった。掃除機を使用し埃は吸わせたがそれでも埃はおちなかった。

　　　　　
　　創建当時の正門

敢えて言えば地下の倉庫からキャビネに移し変えるとき少しでも埃をはらってあったなら、これほどまではと思われた。会計帳簿など資料として見る人もいなかったのか、七夕さん（付箋）はただの一枚もなかった。来週の整理のためにキャビネットの前にほうりだし掃除機をかけてから保管することにしたい。

昭和十五年度の支出内訳簿からその内容を観察してみた。勅任俸給、奏任俸給、判任俸給の区別がある。吉岡校長と杉山教授が勅任俸給で、他の大分部の教官は奏任または判任俸給であった・その他事務を中心に雇員給、雇人給があって、学校の維持管理のため・小使い、給仕、巡視、交換手，常夫、の職種の人たちは傭人給であった。二〇年後の熊本大学の私が在職した時代の先輩諸氏の名前も数名見出された。また支払内訳の中には島津製作所福岡支店を初めとして、後の熊本大学への納入業者としてはばを利かせていた佐伯印刷、長崎書店、同仁堂、吉井薬品等々が見られた。