習学寮史を読んでいたところ習学寮の日常生活の時間割り振りが記載されていた。この中に時間を知らせる喇叭手の活躍が見られる、その他賄い夫、掃除夫、等々の所謂行(二)職員への差別が見られる以下その説明時間文に創作を加えて転載してみた。明治30年代の習学寮の日常生活である。学校は生徒中心で回っていたことが理解されよう。
習学寮日常生活
午前六時起床喇叭が静まり返った寮内に響き渡る。夏であればもうとっくに明るいが、冬の時期はまだ薄暗く寒い、起床喇叭で目を覚ましたとしても起き上がる者は殆ど居ない。食堂では朝食の準備の炊夫が食器を取扱う音がする、七時に朝食開始の喇叭がなると起き上がり金盥をがちゃがちゃいわせて洗面所に急ぐもの、トイレに行くものが多くなる、一方新聞閲覧室では早起きした連中四~五人は既に朝食も終わり新聞に見入っている。しかしまだ大半の寮生は起きて来ない。春眠暁を覚えずというところか?目覚しがなっても平気の平左である。
八時に授業始業を告げる玄関脇の鐘がやけに響く、今まで白川夜船していた連中もいやおう無しに跳ね起き、上着を着るのももどかしく廊下に飛出す。トイレめがけて突入するも各所とも満員、漸く便所にありついても無常にも八時十分には授業開始の鐘が鳴り渡るというようなことが連日の恒例である。
八時まで朝食、同時にこの時間帯では診療も行われる。
八時十分には授業開始、寮には病気のものか、サボっているものが数名残っているだけで全くのもぬけの殻になる。二時限目が終って大半の寮生が寮のホールに設置されている郵便受けのところに殺到する。特に新入生は故郷からの便りを待っているのか、この傾向が強い。
十時頃には作業員が廊下を掃きにくる。土曜日には廊下の雑巾掛けも行われる。午前中の授業は十二時に四時限が終了し、同時に昼食の合図の喇叭が響きわたる。書物を自分の部屋に持って行くのももどかしく食堂へ駆け込む、食堂では賄夫に対し、「飯、漬物、お茶、まかない早く早くと」と大声で奇声を発する状態で、賄夫はてんてこまいであり、現代であれば考えられない賄夫等は自分らが雇用しているのだと言う気分で人間差別も甚だしい。又この時間帯に校長、教頭、生徒主事、それに寮生約七名が知命堂階下に於いて会食を行う。これがほとんど連日恒例の集まりである。
十二時から一時まで昼食、そうこうしているうちに零時五十分には午後の授業の準備の鐘がなり、午後一時授業開始、二時五十分には六時限目終了し、一日の授業は終了する。
三時になると風呂が沸いたことの喇叭が響く、五時の夕食まではスポーツクラブの連中は武夫原で、サークルに所属していないものもほとんどが戸外で活動する。
文系に所属しているものは部室としているサークル室に集まりこれからの討議をかさねる連中も居る。中にはこれらのことに関心なく碁、将棋に興じたり読書に励むものもある。
五時夕食の喇叭が鳴る。三時から五時まで入浴、五時から六時まで夕食、毎週火曜日と金曜日二回図書の貸し出しが行われる。書物は誰でも自由に借り出すことが出来る。
夕食を食らって街に出るもの、裏の立田山に食後の散歩をするもの、三三・五五である。六時半になると電灯が点灯され十時頃までは自習の時間で、今日の復習、明日の予習にと励むものが多い。図書館は九時までは開かれている。七時から九時五十分まで学習、十時になると点検喇叭が鳴り、点検委員が点検簿を持って各部屋を巡回する
。
寮生は各自の部屋の前に出て自分の姓名を名乗り点検を受ける。礼をして点検が終る。点検委員は点検簿を持って寮務室の宿直教官の所へ持って行き、点検委員の仕事が終る。十時点検、特別の集会等がない集会室の電気が消される。点検が終わって外出するものも多く、食堂のポーターへ腹作りへ行く者も居る。
十時二十分就寝喇叭が鳴る。しかしそれで寝床に着くものはほとんど無く予習、復習に励む者、友人と天下国家について議論を交わす者も多い。ついには一晩中討論し気が着いた時は東の空が暁に染まっていることも度々である。
各時間は喇叭を以って合図した。点検時間に遅れたものは玄関に備付てある遅刻簿に姓名始め帰寮時間、理由、寮室名、を記入しておくことになっている。また外出に際しては玄関脇に設置してある名札を裏返しにし、赤字の方を出しておき、帰ってきたときに表の黒字の名前を出しておくようになっている。
深夜十二時を過ぎる頃になると流石に殆どの窓は暗くなるがそれでもあちこちの部屋では談笑する声が聞こえる。特に試験の期間など殆ど電燈が消えることなく徹夜する者も多い。中には月の明るい深夜の武夫原を東光原を中には龍田山への散歩と洒落込むものも居る。晴れた夜には星が流れ、雨の降る夜はもの悲しく更に静かである。龍南の夜は深々と更けて行く。
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習学寮日常生活
午前六時起床喇叭が静まり返った寮内に響き渡る。夏であればもうとっくに明るいが、冬の時期はまだ薄暗く寒い、起床喇叭で目を覚ましたとしても起き上がる者は殆ど居ない。食堂では朝食の準備の炊夫が食器を取扱う音がする、七時に朝食開始の喇叭がなると起き上がり金盥をがちゃがちゃいわせて洗面所に急ぐもの、トイレに行くものが多くなる、一方新聞閲覧室では早起きした連中四~五人は既に朝食も終わり新聞に見入っている。しかしまだ大半の寮生は起きて来ない。春眠暁を覚えずというところか?目覚しがなっても平気の平左である。
八時に授業始業を告げる玄関脇の鐘がやけに響く、今まで白川夜船していた連中もいやおう無しに跳ね起き、上着を着るのももどかしく廊下に飛出す。トイレめがけて突入するも各所とも満員、漸く便所にありついても無常にも八時十分には授業開始の鐘が鳴り渡るというようなことが連日の恒例である。
八時まで朝食、同時にこの時間帯では診療も行われる。
八時十分には授業開始、寮には病気のものか、サボっているものが数名残っているだけで全くのもぬけの殻になる。二時限目が終って大半の寮生が寮のホールに設置されている郵便受けのところに殺到する。特に新入生は故郷からの便りを待っているのか、この傾向が強い。
十時頃には作業員が廊下を掃きにくる。土曜日には廊下の雑巾掛けも行われる。午前中の授業は十二時に四時限が終了し、同時に昼食の合図の喇叭が響きわたる。書物を自分の部屋に持って行くのももどかしく食堂へ駆け込む、食堂では賄夫に対し、「飯、漬物、お茶、まかない早く早くと」と大声で奇声を発する状態で、賄夫はてんてこまいであり、現代であれば考えられない賄夫等は自分らが雇用しているのだと言う気分で人間差別も甚だしい。又この時間帯に校長、教頭、生徒主事、それに寮生約七名が知命堂階下に於いて会食を行う。これがほとんど連日恒例の集まりである。
十二時から一時まで昼食、そうこうしているうちに零時五十分には午後の授業の準備の鐘がなり、午後一時授業開始、二時五十分には六時限目終了し、一日の授業は終了する。
三時になると風呂が沸いたことの喇叭が響く、五時の夕食まではスポーツクラブの連中は武夫原で、サークルに所属していないものもほとんどが戸外で活動する。
文系に所属しているものは部室としているサークル室に集まりこれからの討議をかさねる連中も居る。中にはこれらのことに関心なく碁、将棋に興じたり読書に励むものもある。
五時夕食の喇叭が鳴る。三時から五時まで入浴、五時から六時まで夕食、毎週火曜日と金曜日二回図書の貸し出しが行われる。書物は誰でも自由に借り出すことが出来る。
夕食を食らって街に出るもの、裏の立田山に食後の散歩をするもの、三三・五五である。六時半になると電灯が点灯され十時頃までは自習の時間で、今日の復習、明日の予習にと励むものが多い。図書館は九時までは開かれている。七時から九時五十分まで学習、十時になると点検喇叭が鳴り、点検委員が点検簿を持って各部屋を巡回する
。
寮生は各自の部屋の前に出て自分の姓名を名乗り点検を受ける。礼をして点検が終る。点検委員は点検簿を持って寮務室の宿直教官の所へ持って行き、点検委員の仕事が終る。十時点検、特別の集会等がない集会室の電気が消される。点検が終わって外出するものも多く、食堂のポーターへ腹作りへ行く者も居る。
十時二十分就寝喇叭が鳴る。しかしそれで寝床に着くものはほとんど無く予習、復習に励む者、友人と天下国家について議論を交わす者も多い。ついには一晩中討論し気が着いた時は東の空が暁に染まっていることも度々である。
各時間は喇叭を以って合図した。点検時間に遅れたものは玄関に備付てある遅刻簿に姓名始め帰寮時間、理由、寮室名、を記入しておくことになっている。また外出に際しては玄関脇に設置してある名札を裏返しにし、赤字の方を出しておき、帰ってきたときに表の黒字の名前を出しておくようになっている。
深夜十二時を過ぎる頃になると流石に殆どの窓は暗くなるがそれでもあちこちの部屋では談笑する声が聞こえる。特に試験の期間など殆ど電燈が消えることなく徹夜する者も多い。中には月の明るい深夜の武夫原を東光原を中には龍田山への散歩と洒落込むものも居る。晴れた夜には星が流れ、雨の降る夜はもの悲しく更に静かである。龍南の夜は深々と更けて行く。
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