一自治制度問題について
新しい寮が龍南の地、黒髪に建てられて暫くすると、文部省から椿秦一郎という人が幹事として来任している。大いに自治思想を鼓吹したので,自治論が沸騰し、今までの請負の炊事ではその弊害も大きいので、藤本充安氏、武藤虎太氏が中心となり学校当局と交渉した。六ヶ月後には寮の自炊制度が確立したようである。当時の自治とは自炊を意味し、自治即自炊であった。このようにして自治制度は確立し、炊事委員が選挙された。
二、自炊制度について
寮生全員の選挙により第一回委員として藤本充安氏、白石秀太氏、安藤俊明氏の三名選ばれた、一年の後には林市蔵氏と自分が委員となった。
食費は大体の標準を立て、実費を一人づつ頭割りにして徴収した。そして事務の煩雑を避けるため、肝属某を雇い炊事の監督をさせた。自炊制度確立の結果として費用低減し、一般学生の不平を減じたものである。しかし予算が超過して寮生から不足額を徴収しなければならぬ場合には、委員がひそかに弁償せねばならぬこともあったとあるからつまり藤本充安、武藤虎太等の首唱した自治、自炊制度も、その時期に芽生えて来た賄征伐の現象を憂えていた矢先のことであり、椿幹事の鼓吹に刺激され、両々相待ってその機運の熟した結果、寮生自らの協力で自治制度を確立したものである。