~ 見るべき程の事は見つ いまは自害せん ~
『大物之浦ニ霊平知盛海上ニ出現之図』
(だいもつのうらに れい たいらのとももり かいじょうに しゅつげんの ず)
大蘇芳年筆
平知盛(たいらのとももり)は平安時代末期の武将。平清盛の四男。
源平合戦の功績ありながら兄頼朝と不和になり
都を追われ西国へ落ち延びる身となった源義経
摂津国・大物浦から船を漕ぎ出し、一行は瀬戸内海を西へ進む
ところが出発して暫くすると にわかの暴風に見舞われ
高波に舵を取られて船中は大きく揺れ動く。 そして…
壇ノ浦で滅んだ平家一門の亡霊が、行く手の海上に現れた。
安徳天皇を中心に、勢揃いした平家一門の亡霊たち
その中でもひときわ禍々しい妖気を放つ一人の武将
彼こそ、滅びゆく平家一門の全てを見届け
壇ノ浦の露と消えた総大将・平知盛の怨霊であった。
「義経よ、ここで会うとは珍しい・・・。そなたに追い詰められた我等の末路と同じように
今度はそなたを海の藻屑としてくれようぞ」 知盛は一行の船に襲いかかる。
応戦する義経。しかし相手は亡霊、刀では対抗できない
弁慶は義経を押しとどめると、数珠を押し揉み、法力によって撃退しようとする。
弁慶の祈祷とともに亡霊の姿は次第に遠ざかる
怨霊の群れから逃げるべく船頭は渾身の力で船を漕ぐ
なおも迫り来る亡魂を祈りによって追い払い、遂に船は逃げきることができた。
あとには波の音だけが、そこには残っているのだった。。。
能楽「船弁慶」より