先月23日、河北新報にロナルド・ドーア氏の「株主所有権の絶対性、根本原理の修正が急務」と題したコラムが載った。先日持ち株でニュースとなったブルドックソースの創業を紹介しており、以下はその一部抜粋。
「最近話題になったブルドックソースの遍歴をその観点から見ると面白い。明治末期、日英同盟が提携された1902年、日清戦争当時のナショナリズムで一時下火になった、ハイカラな洋風好みが復活し、イギリスのウスターソースなど、洋食の調味料を売る会社として創立された。大正期にペットとして大流行だったブルドックをマークにして会社もブルドックにした…
「日本的」の対照は、昔ヨーロッパ的だった。鬼畜も米英でなくて、英米だった。今や圧倒的にアメリカとなった…」
ブルドックソースの経緯は私も初耳だが、氏のコラムにはおかしな箇所がある。①日清戦争によるナショナリズムでハイカラな洋風好みが一時下火になった②ハイカラの復活が日英同盟が提携された1902年、の2点。戦争によるナショナリズムでハイカラが敬遠されるなら、その後の日露戦争以降の風俗の説明がつかないではないか。そこで、ドーア氏に反論メールを送ってみた。
Dore様、しばらくです。
今月のコラム「株主所有権の絶対性、根本原理の修正が急務」ですが、間違い箇所がありますよ。貴方も学者の端くれなら(しかも八十過ぎて)、このような表記は困りますね。歴史に詳しくない者が見れば、誤解を招くものです。
貴方は日清戦争に伴うナショナリズムで、ハイカラ志向が下火になったと書いてますが、これは違います。依然として西欧への憧れは下火になっておらず、ハイ カラ趣味は続いていました。それは明治の文豪たちの作品を見れば分かります。日清戦争より十年近く前に出版されたにせよ、坪内逍遥の「当世書生気質」など、横文字だらけの台詞が並んでいるし、鹿鳴館時代の影響もある。下火になったのは東洋趣味(伝統的な中国嗜好)の方でした。Wikipediaにもハイカラについて記されてます。一体どんな調査をされたのですか?
また鬼畜の後に続くのが米英でなく英米だったとの、恨みがましさが漂う指摘も的外れ。第二次大戦前まではまだ英国の国力が上回っていたし、あいうえお順の 日本語表記から英が先に来るのも当然。そう言えば第一次大戦で英国と戦火を交えたトルコも、19世紀までは親英でしたね。
バカの一つ覚えよろしく「ナショナリズム」の言葉を列記するのは左翼学者の特殊性ですが、英国知識人は他国を非難する場合も「ナショナリズム」を連発するのは、20世紀はじめから変化ありませんね。以前私もブログで書いたことがありました。歴史的道徳的判断は何処にありや?
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/399a803aa5d8bdd4cad64f063bfee456
それにしても、大仰なコラム題ですね。経済に絶対性、根本原理を定義するのは、左翼経済学者くらいかも。もっともらしく「日本型」「アメリカ型」の分類を 学説風に並べて悦に入るのはご自由ですが、経済が根本原理で動くとお考えなら、お笑い種です。だから共産圏で経済が破綻した。デイトレーダーはもちろん、 零細企業経営者の方が経済を知っている。
経済学を学ぶのは経済学者に騙されない為、と言った人がいますが、政治学もまた然り。政治経済学者とは、その方面に関心がありながら、生かす力量もないインテリが辛うじて体面を保つためにある職業なのでしょう。
では、失礼。
英国のベストセラー小説『ジャッカルの日』に、英国の公務員は丁重な問い合わせには丁重に応対するという特徴があると記されていたが、学者のドーア氏にはどうしたものかこの常道は当たらない。むしろ丁重な反論だと無視されるので、あえて正反対のメールを送ったら、やはり反応があった。
※M様
あれだけ晴らさなければならない鬱憤はどうしてたまったのでしょう。
Ronald Dore
揶揄が込められているにせよ、俗に言えば“釣れた”のだ。とりあえず“電凸”に返信があったので、私も2度目のメールをする。
その②に続く
◆関連記事:「愛国心とは…」
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「最近話題になったブルドックソースの遍歴をその観点から見ると面白い。明治末期、日英同盟が提携された1902年、日清戦争当時のナショナリズムで一時下火になった、ハイカラな洋風好みが復活し、イギリスのウスターソースなど、洋食の調味料を売る会社として創立された。大正期にペットとして大流行だったブルドックをマークにして会社もブルドックにした…
「日本的」の対照は、昔ヨーロッパ的だった。鬼畜も米英でなくて、英米だった。今や圧倒的にアメリカとなった…」
ブルドックソースの経緯は私も初耳だが、氏のコラムにはおかしな箇所がある。①日清戦争によるナショナリズムでハイカラな洋風好みが一時下火になった②ハイカラの復活が日英同盟が提携された1902年、の2点。戦争によるナショナリズムでハイカラが敬遠されるなら、その後の日露戦争以降の風俗の説明がつかないではないか。そこで、ドーア氏に反論メールを送ってみた。
Dore様、しばらくです。
今月のコラム「株主所有権の絶対性、根本原理の修正が急務」ですが、間違い箇所がありますよ。貴方も学者の端くれなら(しかも八十過ぎて)、このような表記は困りますね。歴史に詳しくない者が見れば、誤解を招くものです。
貴方は日清戦争に伴うナショナリズムで、ハイカラ志向が下火になったと書いてますが、これは違います。依然として西欧への憧れは下火になっておらず、ハイ カラ趣味は続いていました。それは明治の文豪たちの作品を見れば分かります。日清戦争より十年近く前に出版されたにせよ、坪内逍遥の「当世書生気質」など、横文字だらけの台詞が並んでいるし、鹿鳴館時代の影響もある。下火になったのは東洋趣味(伝統的な中国嗜好)の方でした。Wikipediaにもハイカラについて記されてます。一体どんな調査をされたのですか?
また鬼畜の後に続くのが米英でなく英米だったとの、恨みがましさが漂う指摘も的外れ。第二次大戦前まではまだ英国の国力が上回っていたし、あいうえお順の 日本語表記から英が先に来るのも当然。そう言えば第一次大戦で英国と戦火を交えたトルコも、19世紀までは親英でしたね。
バカの一つ覚えよろしく「ナショナリズム」の言葉を列記するのは左翼学者の特殊性ですが、英国知識人は他国を非難する場合も「ナショナリズム」を連発するのは、20世紀はじめから変化ありませんね。以前私もブログで書いたことがありました。歴史的道徳的判断は何処にありや?
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/399a803aa5d8bdd4cad64f063bfee456
それにしても、大仰なコラム題ですね。経済に絶対性、根本原理を定義するのは、左翼経済学者くらいかも。もっともらしく「日本型」「アメリカ型」の分類を 学説風に並べて悦に入るのはご自由ですが、経済が根本原理で動くとお考えなら、お笑い種です。だから共産圏で経済が破綻した。デイトレーダーはもちろん、 零細企業経営者の方が経済を知っている。
経済学を学ぶのは経済学者に騙されない為、と言った人がいますが、政治学もまた然り。政治経済学者とは、その方面に関心がありながら、生かす力量もないインテリが辛うじて体面を保つためにある職業なのでしょう。
では、失礼。
英国のベストセラー小説『ジャッカルの日』に、英国の公務員は丁重な問い合わせには丁重に応対するという特徴があると記されていたが、学者のドーア氏にはどうしたものかこの常道は当たらない。むしろ丁重な反論だと無視されるので、あえて正反対のメールを送ったら、やはり反応があった。
※M様
あれだけ晴らさなければならない鬱憤はどうしてたまったのでしょう。
Ronald Dore
揶揄が込められているにせよ、俗に言えば“釣れた”のだ。とりあえず“電凸”に返信があったので、私も2度目のメールをする。
その②に続く
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