最初は、なんていう鳥か
まったくわからなかった。
猛禽類なんて、ほとんど見たことがない私は
大きな川の上を悠々と飛ぶ、黒っぽい鳥…というと
「トビさん」くらいしか思いつかない。
ある朝、その鳥の「漁」を見た。
今から6年くらい前のことだ。
朝、いつものように川縁で
見たことのない鳥がいないかと
あちこち眺めていると…
向こう岸に近い辺りを、川に沿って
流れを遡るように飛ぶ
大きな黒い鳥がいる。
遠くてよくわからないけど
カラスとか、カワウなんかとは
体型が違ってる感じ。
「きっとトビさんだね」
でも、いつもは高い所を
円を描くように飛ぶヒトなのに
珍しい気がして、目を凝らして見ていると…
その鳥はスーッと高度を下げて
川面に着水?と見えたかと思うと
バタバタ翼を羽ばたかせて
エッチラオッチラ
なんとか、やっと飛び立った。
驚いたのは、足で掴んでる銀色の物体!
「きゃー!! あれって魚じゃないのォ~」
そう、結構大きな魚なのだ。
(鳥にとっては分不相応な獲物?)
もちろん、魚は暴れる。
鳥の方も苦労していて
なかなか高度が上がらない。
「どーなるんやろ、逃げられちゃうかな」
もう、ハラハラドキドキ
出来るものなら、手伝ってあげたい。
鳥の方が、そのまま
落っこちてきそうに見えた頃…
それでも、なんとか少しずつ
飛び方がスムーズになってきて
大きな鳥は、いつものように
近くの山の方へ姿を消した。
「知らなかった~ トビさんって
生きてる魚も獲るのね」
ところがところが…
その数日後、同じ川に架かる
大橋の上を歩いていると
遠くから、よく似た鳥が飛んできて…
私のいる大橋の方が川上。
お蔭で、鳥の「着水」?を
真正面から見ることに。
「わっ、こんな近くで見られるなんて!」
でも… 今度は鳥が
なかなか飛び立たない。
ジタバタジタバタ…
「大丈夫かしら」
魚が暴れるのか、飛び立てなくなったのか。
「考えてみると、水鳥じゃないんだし
水面からよく飛び立てるなあ…」
なあんて思う間もなく
鳥は、ちょっと羽ばたいた後
ソソクサと?元来た方へ飛び去った。
足には何も掴んでなかった。
その日の夜、仕事から帰ってきた家族が
地元紙の夕刊を見せてくれて
「この前言ってた『魚獲る大きな鳥』って
これのことじゃないか?」
記事の見出しは
「ミサゴの狩りの失敗」
え~~!!!
(あれってトビさんじゃなかったの~?)
その記事に貼った連続写真は
私が橋の上から見ていた光景に
ソックリ。
あのとき、すぐ近くに
こんな写真撮ってた人が居たなんて…と
思うくらいのソックリ度合い。
「とにかく、ミサゴっていう鳥さんなのね」
それまで聞いたこともない名前だった。
その後は、そんな間近で
「漁」を見る機会はなかったけれど…
「チャレンジする」ミサゴの姿は
遠い所から、何度か見かけた。
時には「遊んでる」のか、それとも
「目下練習中」なのか… というくらい
何も獲れない(獲らない)ときもあって
「もしかして若いミサゴなのかなあ」
な~んて、想像を膨らませたり。
それでも、あの重そうな魚が暴れるのを
なんとか運んでいったのは
子育て中の親鳥だったのかなあ… とか
「狩り」も、そうそう
上手くいく訳じゃないんだなあ… とか
猛禽類の「実生活」を見せてもらった気がして
同じ生きもの同士… ということを
「生で」感じた、貴重な瞬間だったと思う。
もう一度会いたいなあ。
遇えたらいいのになあ。