昔から、私はカラーで夢を見る。
亡くなった父親は
モノクロのタイプだったらしい。
「一度だけ、青々としたネギが出てきて
それが、あんまり綺麗な緑だったんで
今でも忘れられない」と
目を輝かせて話してくれたりした。
私が若い頃からよく見るのは
なぜか「家に帰ろうとする」夢。
色んなバージョンで、何度も見ている。
なので、ラストもわかっている。
当然のように「家には辿り着けない」
鉄道の駅で、出発ホームが見当たらない。
切符を買いたいのに、売り場が大混雑。
広大な?バス・ターミナルで
どうしても乗り場がワカラナイ…
な~んてのはザラ。
大きな客船にやっと乗れたのに
どこに向ってるのかわからない。
そもそもどこに帰るのか思い出せない…
どの夢にも、雑踏のような人の群れが。
でも、誰にも声が掛けられない。
みんな忙しそうだったり、はたまた
仲間と楽しそう?だったり
気ばかり焦る自分とは
無縁の人たち…と感じてしまう。
ところがある時(珍しく)
街中を一人で歩いていたら
若い男の子と知り合って
「一緒に行く」ことになった。
彼は、近くの街の友人宅へ
私は(どこかにあるらしい)「家」に帰る
…という、ささやかな旅。
男の子はちょっと内気で
でもいかにも気のいい感じ。
私は私で、彼と同年配らしいのに
若かった頃の私と違って
男の子と気楽に(平気で)喋っている。
いつもなら、割りと早くから
「これは夢だ」とわかるのに
このときはすぐにはわからなかった。
でも現実じゃないのはわかってた。
「これは私だけど、私じゃない」
若い頃の私はもっと「不自由な」娘だった。
「この女の子(自分)は、今の私に似すぎてる…」
男の子は、友人宅に着く前に
別の知り合い?に出会って
「それじゃあ」
ニコッとして……行っちゃった。
「そうかあ、ここまでか…」
その瞬間、「夢」の中にいたのに気づいた。
どこへ行くつもりだったかも
もう思い出せなくなっていた。
「私、今まで何してたんだっけ…」
ずいぶん昔に見た夢だけど
今も覚えているのが不思議。
男の子の顔はオボロ気にしか… でも
あの優し気で、気の置けない雰囲気。
誰にも似てない。
モデルも思い当たらない。
そのとき限りの旅の道連れ。
だからこそ、今も忘れないのかな…