もうひとつの部屋

昔の記憶に、もう一度会える場所にしようと思っています。

つい、このあいだのことなんだよ

2024-09-28 15:30:44 | K市での記憶

晩年の父が言ったことば。

「つい、このあいだのことなんだよ」


どう言ったら伝わるか…と、考え考え

父はことばを続けた。

「きみたちからみたら

ぼくらはずーっと年上のひとだろ。

でも、そんなに遠い距離じゃないんだ」


「きみたちが今出合ってること

感じて、考えてるようなことって

ほんとに、ちょっと前まで

ぼくらも、悩んでたりしたことなんだよ」


「でも、わからんだろうなあ、この感じは」

父は、ちょっと口惜しそうだった。


前に居たわたしも姉も

なんだかポカンと聞いていた。


なぜそんなことを言われるのか

なぜそこまで、それを伝えたがるのか

父の気持ち、意図が

わからなかったんだと思う。

 

今のわたしには、当時の父が感じていたこと

「つい、このあいだのこと」という感覚は

よくわかる。

20年なんて、「ほんのちょっと前」だから。


でも、わたしはそれを若い友人たちに

わざわざ言いたいとは思わない。


でもそれは、父とわたしとの

単なる性格の違いに過ぎない。

 

父は「わかってほしい」人だったのだろう。

「人と、家族と、気持ちを共有したかった」人。

(だからあんなにオシャベリだったんだ)



辛うじて大正生まれ。

「男は無口が当たり前」の時代に

誰に対してもあれほどフレンドリーだった彼に

いちいち応えなきゃいけないのがメンドウで

わりと冷たかった末娘は

今頃、ちょっと後悔?している。


父は60過ぎで亡くなり

わたしは今70になった。


わたしの知っている父は

今のわたしより、ずっと若かったのに

「遠い」人だと思っていた自分が

ちょっとだけ悔しい。

 

 

 

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