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【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ③キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ローレルゲレイロ編~

2017年05月05日 | 血統・配合
キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合として、ここではローレルゲレイロを扱いたいと思います。

このローレルゲレイロこそが、キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合から誕生した第1号でした。

なお、ローレルゲレイロの全きょうだいには、リキサンマックス(G3きさらぎ賞2着)やキタサンラブコール(現4勝、中京日経賞、ハッピーエンドC)などがいます。

【ローレルゲレイロ】


ローレルゲレイロは、母ビッグテンビーの初仔として生まれました。

初仔ということもあり、同期のなかでもやや小柄に属する馬でしたが、とにかく獣医いらずの丈夫な馬だったことを覚えています。

放牧地で自分より大きな馬相手に対して威嚇行動を取るなど、この牝系特有の負けん気の強さを持つ馬でした。

育成場に行ってからも順調そのもので、それほど馬格があるほうでもなかったので、2歳戦から使えそうな仕上がりの早さを見せていました。

その予想通り、函館の新馬戦でデビューして同世代の勝ち馬第1号になりました。

その後は重賞路線で2着が続き、一時は「最強の1勝馬」などと呼ばれることもありましたが、古馬になった4歳時には重賞を連勝。

5歳になってからはG1高松宮記念とG1スプリンターズSを制して、最優秀スプリンターに選出されました。

現在は、優駿SSにて種牡馬として繋養されています。

ローレルゲレイロもまた、キングヘイロー×モガミヒメの組み合わせを持つ馬です。

この配合が血統的に相性が良いのは、キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ゼフィランサス編~で書いたので、ここではまず母ビッグテンビーの血統に焦点を当てます。



血統を見てすぐ目に付くのは、ビッグテンビーが持つNijinskyの3×4のインブリードです。

Nijinskyの血が、モガミヒメの持つAlydarと好相性なのは、『キングヘイロー×モガミヒメ牝系②』でも指摘しました。

もう一つ、ビッグテンビーの配合でポイントになるのが、父テンビー内のMill Reefとモガミヒメの2代母の父ボールドラッドによる相似クロスです。



いずれもNasrullahとPrincequilloのニックスを持っていて、しかもそれぞれの母が名牝であるという点も共通しています。

互いの母が優秀であるということは、共通の父であるPrincequilloがそれぞれの娘たちに対して遺伝的に好ましい影響を与えたと想像できます。

また、ビッグテンビーの父テンビーはPrincequilloを4×5で持ちます。

モガミヒメも自身の世代ではプールしているものの、2代母モガミポイントがPrincequillo4×4を持っています。

結果として、その両親から生まれたビッグテンビーは、Princequillo5*6×6*6のラインブリードを持つことになり、彼女にとって非常に重要なクロスになったと推察します。

一方のNasrullahにしても、テンビー内KalamounがNasrullah=Rivazの全きょうだいクロスを有していて、モガミヒメの母父カコイーシーズはNasrullahを息子と娘を経たクロスとして持ちます。

つまり、ビッグテンビーはNasrullah6*7*×5*6*6のラインブリードを持っていることになり、このクロスも大きな遺伝効果が期待できます。

そして、PrincequilloとNasrullahのラインをより確実に発現させるためにも、Mill Reefとボールドラッドによる相似クロスがビッグテンビーにとって非常に重要なポイントになったと考えます。


このような母に対して、息子のローレルゲレイロはどのような血統パターンを持つのか。

キングヘイロー×モガミヒメ牝系①』でも指摘しましたが、キングヘイロー産駒の中央勝ち馬には、以下の血統的特徴があります。

①産駒自身がNorthern Dancerクロスを持つ。

②産駒の母がNasrullahの血脈を持つ。

③産駒の母がNearco/Prince Roseのニックスから成る血脈を持つ。

以上の3つのうちのいずれか、もしくは複数に該当する血統パターンに属することが多いです。

母ビッグテンビーは、自身の持つNijinsky3×4を経てNorthern Dancerクロスを持ちます。

また、Nasrullahの血脈を豊富に持っている点はすでに指摘しました。

さらに彼女は、Nearco/Prince Roseのニックスから成る血脈としてMill Reefやボールドラッドを持ち、さらにはForeseerやKalamounもこれに該当します。

つまり、モガミヒメ同様、ビッグテンビーもキングヘイローと血統的相性が良い繁殖牝馬だと思われます。

この配合で生まれたローレルゲレイロは、『キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ゼフィランサス編~』で指摘した相性のほかに、ダンシングブレーヴ≒Caerleon≒モガミポイントという見方もできると思います。

これら3つの血脈は、Northern Dancer系の父×Nearco/Prince Roseのニックスから成る血脈を持つ母という組み合わせです。

また、Tom Fool≒Flaming Pageを持つモガミヒメや娘のビッグテンビーにとって、Tom Fool5×5を持つキングヘイローはクロスの継続という観点からも好ましい種牡馬だと言えます。

最後に、ローレルゲレイロが持つDrone≒Halo≒Nijinsky≒Careless Notionの組み合わせについて指摘おきます。





2つの血統表に跨いで色分けしてみましたが、上記のように4つの血脈はNearoやPharamond、さらにはBull Dog=Sir GallahadやMahmoudを持つ点で共通しています。

このように、ローレルゲレイロの配合を考える際には、父母それぞれの血統傾向や多くの相似クロスを用いて配合しました。

馬体面ではそれほど大柄に出ない配合ではありますが、競走能力の遺伝という点では期待できる配合だと思っています。


次回の『キングヘイロー×モガミヒメ牝系』は、キングヘイロー×ラヴァーズレーンの配合として、現役馬のスルターナを取り上げる予定です。


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【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ③キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合~ゼフィランサス編~

2017年05月02日 | 血統・配合
『キングヘイロー×モガミヒメ牝系』の最終テーマは、この組み合わせから生まれた馬たちを紹介したいと思います。

ただ、一度に全馬を扱うと長くなる(前回のモガミヒメについても相当の長文で失礼しました)ので、数回に分けて書きます。


まずは、キングヘイロー×モガミヒメそのものの配合から生まれた馬たちにスポットを当てます。

現時点では、キタサンイナズマ(3勝、タケホープC)とゼフィランサス(3勝)の全きょうだいが勝ち上がっていますが、ここでは現在当場で繁殖牝馬として繋養しているゼフィランサスを取り上げます。



ゼフィランサスは、やや小柄の馬体でありながら、幼少時より健康で骨格のしっかりした馬でした。

その体質を活かして2歳函館で早々にデビューし、新馬戦から2着が4回続くも、札幌の2歳未勝利戦(芝1200)で初勝利を挙げています。

500万下クラスでも2着するなど堅実な成績を残しながら、3歳時には芝1600の500万下を快勝。

ただ、1000万下クラスでは能力的な限界を見せ始め、500万下クラスに降級してからは再び善戦するも、勝ち切るには至りませんでした。

そこで、ダートでの走りを試した(500万下、ダ1800)ところ、終始先頭でレースを進めて最後は3馬身差をつけて快勝。

それでも1000万下クラスではダートでも限界が垣間見えたため、その後に引退しました。

ゼフィランサスの場合、彼女の配合段階ですでにローレルゲレイロ(当時3歳)が重賞路線で活躍していたこともあり、自然とキングヘイローにモガミヒメという配合に至っています。

キングヘイロー×モガミヒメ牝系という配合は、中央においても高い確率で勝ち上がってくれますが、個人的にはしっかりとした血統的根拠が存在すると考えています。

まず、キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合では、キングヘイローの父ダンシングブレーヴと、モガミヒメの母モガミポイントによる相似クロスができます。



いずれの血脈も父がNorthern Dancer系であり、母方にNearco/Prince Roseのニックスから成る血(Sir Gaylordとボールドラッド)を持ち、さらにはTom Foolを持つ点でも共通しています。

また、ゼフィランサスの2代母モガミポイントが持っていたMahmoudとPrincequilloのクロスは、母モガミヒメの代で一度プールされたものの、キングヘイローと配合したことでゼフィランサスの代では再びクロス強化される形になりました。

これは、キングヘイロー自身がMahmoud6*6×5*6とPrincequillo6×5*6を持っていることに起因します。

この2つのラインをクロスで持っているだけでモガミヒメと血統的相性が良いと見なせるところに、ダンシングブレーヴ≒モガミポイントのような相似クロスもできるわけです。

ただ、キングヘイロー×モガミヒメの血統的特長はこれだけではありません。

ゼフィランサスの代では、父キングヘイローが持っていたDrone≒Halo≒Sir Ivorの相似クロスが、母モガミヒメが持つCareless Notionやマルゼンスキーと組み合わせることで継続強化されました。

具体的には、Careless Notionとマルゼンスキーが持つNearcoやPharamond、あるいはBull Dog=Sir Gallahadといった血脈を、Drone≒Halo≒Sir Ivorたちも持っているという関係です。

元来は、キングヘイローの母グッバイヘイローが持っていたHalo≒Sir Ivorに端を発するパワフルな中距離スピードが、息子キングヘイローを経てゼフィランサスに受け継がれたと推察します。

さらに、ゼフィランサスの代で新たにできたクロスとして特長的なのが、キングヘイローの4代母Squanderとマルゼンスキーの母シルによる3/4同血クロスです。



いずれの血脈も父がBuckpasserで母父がPrincequilloですが、一般に父と母父が同じ血脈は「3/4同血」と呼ばれます。

このような血脈を利用したクロスは、単純にそれ自体をクロス(例. Squander3×4など)よりも遺伝効果が大きいとする考え方があります。

配合手法の一つとして、単純なクロスよりも3/4同血クロスや相似クロスなど血統的近親クロスを活かした配合は、優れた競走馬を生産する有効な手法だと私も思います。

さて、『キングヘイロー×モガミヒメ牝系①』で触れたように、キングヘイロー産駒の中央勝ち馬には以下のような血統的特徴があります。

①産駒自身がNorthern Dancerクロスを持つ。

②産駒の母がNasrullahの血脈を持つ。

③産駒の母がNearco/Prince Roseのニックスから成る血脈を持つ。

以上の3つのうちのいずれか、もしくは複数に該当する血統パターンの産駒が多いのです。

ゼフィランサスの場合は、①についてはNorthern Dancerクロスを4×5で持っています。

②については、母モガミヒメがNasrullahを4*5×5で持ちます。

さらに③に当てはまる血脈として、母モガミヒメ内にはボールドラッドの存在があります。

つまり、モガミヒメはキングヘイロー産駒の3つの成功パターンすべてに当てはまる血統の持ち主なのです。

このように、キングヘイローとモガミヒメは血統的相性が非常に良い配合であり、その結果としてキタサンイナズマやゼフィランサスを送り出すことができました。

また、この配合の延長線上として、モガミヒメの娘であるビッグテンビー(父テンビー)にキングヘイローを配合して、G1馬ローレルゲレイロを生産しました。

正確には、このローレルゲレイロこそが、キングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合の第1号ということになります。

次回は、そのローレルゲレイロについて書こうと思います。


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【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ②モガミヒメ

2017年04月30日 | 血統・配合


『キングヘイロー×モガミヒメ牝系』の第2回は、モガミヒメの血統について考察したいと思います。


まずは、モガミヒメの父カコイーシーズについて。

カコイーシーズは、英国にて2歳時にマイル戦でデビューし3着した後、明けて3歳になってからは10Fの未勝利戦と12FのG3ダービートライアルSを連勝。

その後は芝12F中心のG1路線を歩みますが、2着や3着など、G1のタイトルにはあと1歩及ばずというレースが続きました。

G1勝ちが欲しい陣営は、明けて4歳になったカコイーシーズを米国へ遠征させて芝12FのG1ターフクラシックに挑戦し、見事念願のG1タイトルを勝ち取ります。

その後、米G1のBCターフを9着してからG1ジャパンCに参戦するも、結果は3着。

このレースを最後に引退しましたが、走ったレースのほとんどが芝12Fという馬でした。

彼の血統で注目すべきはNasrullahの4×3のインブリードですが、父内のNasrullahは息子のOn-and-Onを経て、そして母内では娘のMiss Uppityを経てクロスしているのがわかります。

このように、息子と娘を経たインブリードやラインブリードは遺伝効果が高いという考え方があり、私自身も好んで用いる配合手法です。

ちなみに、このNasrullahの血脈に関しては、カコイーシーズの血統内ではNasrullahの母Mumtaz Begumと2代母Mumtaz Mahalがクロスされていません。

そのためか、本来この血脈が伝える素軽く爆発的なスピードは、カコイーシーズのレース振りには見られませんでした。

Nasrullahの血脈はそれ自体が爆発的なスピードを伝えるというよりも、母Mumtaz Begamと2代母Mumtaz Mahalがもたらす影響により、結果的に瞬発力に富んだ爆発的なスピードを子孫に伝えると考えられます。

因って、カコイーシーズのようにMumtaz BegumとMumtaz Mahalのクロスが派生しないNasrullahのみをクロスさせる血統パターンでは、Nasrullahクロスによく見られる爆発的なスピードは遺伝され辛いのではないか、というのが私の見解です。

ただし、馬体のシルエットという観点からすると、カコイーシーズはNasrullahの影響を受けたのかもしれません。

首が太くて重心が低く、胴回りもあってパワフルな馬体に見せるAlydarの仔が多い一方で、カコイーシーズはAlydar産駒にしては素軽く、体高が170cm越えのスラッと伸びた馬体の持ち主でした。

この体型はAlydarより、むしろNasrullahに近く、結果としてAlydar産駒ながらダートではなく芝路線を得意としたのかもしれません。

さて、カコイーシーズにはSickle=Pharamondの全きょうだいクロス6×5もありますが、この全きょうだいはPhalaris×Chaucer牝馬の組み合わせを持つという点で、Nasrullahの2代父Pharosと共通します。



一般に、3/4同血と呼ばれる関係です。

私は、これらSickle=Pharamond≒Pharosによる遺伝的近親のクロスが、カコイーシーズに対して中距離スピードを与えたのではないかと考えています。

ちなみに、Sickle=Pharamond に見られる「全きょうだいクロス」という配合もまた、強い遺伝効果を期待できる手法だとする考え方があります。

カコイーシーズの血統においては、父Alydarの母であるSweet Toothと、カコイーシーズの2代母Miss Uppityとの間にも血統的な相性の良さが窺えます。



Sweet Toothの父は、Nasrullah産駒のOn-and-Onですが、Miss UppityはNasrullahの直仔という関係にあります。

また、Sweet Toothの母Plum Cakeは、Sir Gallahad=Bull Dogの全きょうだいのインブリードを3×4で持っています。

そして、Sweet Tooth自身の代でも、Bull Leaの3×3のインブリードを経てSir Gallahad=Bull Dogの全きょうだいクロスを継続しました。

一方のMiss Uppityは、その母Nursery SchoolがSir Gallahadを2×3のインブリードで持ちます。

それらを踏まえてSweet ToothとMiss Uppityという関係で見てみると、その血統的な親和性がよくわかります。

カコイーシーズが持つこのSir Gallahad=Bull Dogのクロスは、詳しくは後述しますが、マルゼンスキー牝馬に対するニックスの理由の一つになったと考えています。

カコイーシーズ産駒は中央で68頭が勝ち上がっていますが、そのうち実に12頭がマルゼンスキー牝馬との間に生まれた産駒であり、また獲得賞金の比較からみても上位の馬が多いのは注目すべき点です。


さて、ここからはモガミヒメの母モガミポイントの血に注目してみましょう。

モガミポイントは、2歳時の新潟芝1000Mでデビューして、見事に新馬戦を勝ちました。

次戦のG3新潟3歳Sで5着して以降、しばらく勝ち鞍から遠ざかりましたが、3歳になってからダ1400Mで2勝目を挙げて、同年の弥彦特別(900万下、芝1600)でも勝ちました。

その後も特別レースで入着などしましたが、結局この3勝で引退しています。



彼女の母系を見てみると、まず2代母クリヒデの血統に注目できます。

クリヒデはアウトブリード配合ではあるものの、英3冠馬のRock Sandを6×4、英チャンピオンサイアーのDesmondを5*6×6のクロスを持っています。

この2つの血脈は、大種牡馬St. Simonでつながります。

すなわち、Rock Sandの母の父がSt. Simonであり、DesmondはSt. Simonの直仔という関係です。

クリヒデは、牝馬ながら天皇賞・秋を制して最優秀古牝馬に輝いていますが、その勝負根性と底力には、St. Simonの血脈が少なからず影響したのかもしれません。

そのクリヒデにボールドラッドが交配されて生まれたのが、モガミポイントの母ポイントメーカーです。

ボールドラッドは2歳戦の成績が傑出していて、ホープフルSやフューチュリティS、シャンペンSといった米国2歳戦の重要レースで勝っています。

その血統は、英ダービー馬のMahmoudとMumtaz Begumの近親クロスを3×3で持っていて、ボールドラッドの早熟で爆発的なスピードはまさにこの近親クロスにあると考えられます。

ただ、娘のポイントメーカーの世代では、この近親クロスはプールされました。

このように、クロスを1世代(ポイントメーカー)離れて次の世代(モガミポイント)でまた強化するという配合手法は、往々にして良い結果を生みます。

ポイントメーカーの代でプールされたボールドラッド内のMahmoud≒Mumtaz Begumの血脈が、Mahmoudを含むNorthern Dancer系のマルゼンスキーと配合されたことで、モガミポイントの代で再び早熟性を与える爆発的なスピードが強化されたのではないしょうか。

モガミポイントが2歳の新馬戦で勝ち上がった理由は、このダイナミックなスピード血脈の強化に起因しているのかもしれません。

Northern Dancerとボールドラッドは、それぞれの血統を注意深く見てみると、多くの血脈を共有しているのがわかります。



まず、互いにMahmoudを持ち、そこにMahmoud≒Mumtaz Begumの関係が加わります。

さらに、直父系にNearcoも持つ点も共通しています。

そして、最も重要なことは、このなかにNative DancerとBold Rulerのニックスが存在することです。

Native Dancerの3代父Sickleが、Bold Rulerの3代父Pharosと同じくPhalaris×Chaucer牝馬の組み合わせであることは前述しました。

さらに、Native DancerとBold Rulerは、母父がともにDiscoveryである点で共通しています。

このNative Dancer/Bold Rulerのニックスをはじめとして、ほかにも類似する血脈を互いに持ち合うことにより、Northern Dancerとボールドラッドの組み合わせは産駒に質の高いスピードを伝えました。

実際、ボールドラッド牝馬から生まれた活躍馬は、Northern Dancerを内包する種牡馬を父に持っていることが多いのです。

ちなみに、ボールドラッド同様にBold RulerとPrincequillo牝馬の組み合わせで生まれたSecretariatもまた、Northern Dancerの血を受け継ぐ馬とニックスの関係にありました。

この組み合わせからはハイクラスのステークス勝ち馬が出ていて、Chief’s CrownやStorm Cat、英ダービー馬のセクレトなどが良い例です。


さて、最後にモガミヒメ自身について考察します。

彼女は当場生産馬ではありませんが、縁があって当場で繫養することになり、多くの勝ち馬を生産してくれました。

現在は繁殖活動を引退していますが、25歳になった現在でも、元気な状態をキープしています。

モガミヒメの血統で注目すべきは、彼女の世代で初めてクロスされたTom Foolです。

Tom Fool自身は2歳時から多くのレースを制した快速馬で、3・4歳になってからも一線級で活躍したように成長力と底力も持ち合わせていました。



Tom Foolの父Menowも2歳での成績が卓越していて米2歳牡馬チャンピオンになりましたが、モガミヒメの母父マルゼンスキーはこのMenowを4×4で持っていて、マルゼンスキーの圧倒的なスピードはこのMenowクロスが影響しているかもしれません。

また、Tom Foolの母父はBull Dogですが、これはカコイーシーズの血統内において強い影響を与えている血脈でもあります。

これらのことから、モガミヒメの血統におけるTom Foolの血脈は、非常に重要なポジションを占めているのではないかと推測します。

次に、モガミヒメの持つAlydarとNijinskyのニックスについても触れておきましょう。



Nijinskyの父Northern DancerとAlydarは、Native DancerとNearcoをいわば“逆配合”の形で持っていて、特にNative Dancerが息子と娘を経てクロスされていることは重要だと考えます。

また、AlydarとNijinskyの母系にはどちらもBull Leaのラインが入っていて、このBull LeaもAlydarとNijinskyの組み合わせでは息子と娘を経てクロスされます。

このように、血統的相性の良さが窺えるAlydarとNijinskyの組み合わせですが、実はチャンピオン級の馬がほとんど出ていないのが現状です。

馬体面か、もしくはAlydar系にしばしば見られる激しい気性が関係しているのかもしれません。

ただ、この組み合わせから多くの勝ち馬が出ているのも確かで、このAlydar/Nijinskyのニックスの延長として、それぞれの息子であるカコイーシーズ×マルゼンスキーという成功パターンが生まれたのです。

モガミヒメの血統では、父カコイーシーズの代でインブリードされていたNasrullahの血が4*5×5というラインブリードの形で継続されました。

そして、カコイーシーズ内ではなかったNasrullahの母系のMumtaz BegumやMumtaz Mahalが、モガミヒメの代ではしっかりクロスされています。

これにより、本来Nasrullahが伝えるスピードが少なからずモガミヒメに遺伝されたと考えています。

Tom Foolが伝えるパワフルなスピードとは異なり、Nasrullahのクロスは早熟性と素軽いスピードを与えてくれます。

この血脈はカコイーシーズの代で息子と娘を経てクロスされていて、その遺伝効果はモガミヒメの世代でもかなり大きいと考えます。

Tom Foolクロスを持ちながら、どちらかといえば素軽いタイプに見せるモガミヒメの馬体は、このNasrullahクロスに起因するかもしれません。

実際、モガミヒメは父カコイーシーズの馬体に似たところがあります。

前述したように、カコイーシーズはAlydar産駒の割りには素軽く、スラッと伸びた馬体の持ち主でしたが、それはNasrullah4×3のインブリードが影響したとも考えれらます。

そして、そのクロスを継続したモガミヒメもまた、父似の馬体に出たという考え方は可能だと思います。

そのNasrullahと近親関係のあるMahmoudは、モガミヒメの代ではクロスされずにプールされました(モガミヒメの母モガミポイントはMahmoudクロスを持ちます)が、それが逆にモガミヒメに対してNasrullahの影響をストレートに伝えたようにも思えます。

そのため、モガミヒメが繁殖牝馬になった際には、今度はMahmoudを強化しNasrullahを抑えるという配合手法も有効だと考えていました。

このように、ある血脈をクロスさせたりプールさせたりという配合パターンは、配合における緊張と緩和という点から好ましい手法だと思っています。

Princequilloの血脈についても、彼女の母モガミポイントの代では4×4でクロスしていましたが、モガミヒメの代ではプールされました。

このラインも、モガミヒメの配合相手を探す際には強化すると面白いと考えていました。

もう一つ、モガミヒメの血統で特長的なのが、彼女がクロスで持つTom FoolとNijinskyの母Flaming Pageの関係です。



このTom Fool≒Flaming Pageは、モガミヒメの母父マルゼンスキーが持っていた相似クロスでもあります。

Tom Foolの父MenowはFlaming Pageの母父でもあり、またTom Foolの母の父Bull Dogは、Flaming Pageの3代父にあたります。

このMenowとBul Dogのクロスが、互いに息子と娘を経てクロスされるのも個人的には興味深い点です。

Tom Fool≒Flaming Pageは、カコイーシーズ×マルゼンスキー牝馬の配合では必ずできる相似クロスであり、この組み合わせがニックスになる要因の一つになったと考えます。

Tom Fool≒Flaming Pageの相似クロスを形成する血脈の一つであるBull Dogが、カコイーシーズの血統でも重要な存在であることは既述の通りです。

NasrullahクロスやTom Fool≒FlamingPageなど、モガミヒメの血統を総合的に判断すると、彼女の血統はスピード優位の血統パターンなのだろうと結論付けて、その後の配合に活かすことにしました。

このような血統背景を持つことで、モガミヒメは地方競馬ながら2歳戦から活躍して、現代日本のスピード競馬においても繁殖牝馬としてコンスタントに勝ち馬を送り出せたのだと思います。

次回の『キングヘイロー×モガミヒメ牝系』は、最終回としてキングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合から生まれた馬たちを取り上げます。


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【血統・配合】キングヘイロー×モガミヒメ牝系 ①キングヘイロー

2017年04月29日 | 血統・配合


当場では、血統面なども考慮に入れながら配合に努めていますが、当場を代表する配合パターンにキングヘイロー×モガミヒメ牝系があります。

ご承知の方もいらっしゃるかもしれませんが、最たる例はG1馬で現在は種牡馬になっているローレルゲレイロです。

このブログでは計3回に分けて、血統的見地からキングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合をご紹介したいと思います。


まず最初に取り上げるのは、種牡馬キングヘイローです。

今年で22歳になり、繋養されている優駿スタリオンステーションでは最古老のベテラン種牡馬です。

キングヘイローは通算27戦6勝、主な勝ち鞍にG1高松宮記念、G2中山記念など重賞4勝という競走成績でした。

彼の血統的特徴は父が80年代の欧州最強馬と謳われたダンシングブレーヴ、母がCCAオークスなど米G1を7勝したグッバイヘイローという抜群の血統背景でしょう。

しかし、名種牡馬に名牝を交配したからと言って、いつも良い結果が生まれるとは限りません。

どんな名馬であっても、名種牡馬・名繁殖牝馬になるためには自身の能力を産駒にうまく伝えられる配合が求められますが、キングヘイローはその条件を満たした配合の結果だと言えます。

キングヘイローの血統パターンで注目すべきは、Drone≒Halo≒Sir Ivorによる相似な血の関係でしょう。

この相似クロスは、まずキングヘイローの母グッバイヘイローが持つHalo≒Sir Ivorに端を発します。



HaloとSir Ivorはいずれも2代父がTurn-toであり、それぞれの母はPharamond系×Mahmoud系の組み合わせです。

また、いずれ血脈もSir Gallahadを持つ点で共通しています。

グッバイヘイローは、牝馬の米国ダート中距離路線で2~3歳時に活躍した名牝でしたが、その優れた中距離スピードはこのHalo≒Sir Ivorに起因するかもしれません。

息子キングヘイローの代では、そこにDroneを加えることで、母の持つHalo≒Sir Ivorによる相似クロスを継続する形になりました。



Droneも2代父がTurn-toであり、母がPharamond系×Mahmoud系の配合という、HaloやSir Ivorとまったく同じ血統パターンです。

また、Droneは母父Tom Foolを通じてBull Dogの血を持ちますが、これはHaloやSir Ivorが持つSir Gallahadと全きょうだいにあたる血脈であり、この点も含めてDrone≒Halo≒Sir Ivorという相似クロスが成り立つわけです。

ちなみにダンシングブレーヴがHaloと相性の良いDroneを持っている関係で、ダンシングブレーヴを父に持つ繁殖牝馬は、Halo系であるサンデーサイレンス系種牡馬と相性が良い傾向にあります。

これは、サンデーサイレンスが4×5で持つMahmoudクロスをダンシングブレーヴも5×5で持つという点以外にも、Halo≒Droneという相似クロスができることが要因の一つだと考えられます。

中央では200頭以上の勝ち馬を送り出しているキングヘイローですが、頻繁に配合する種牡馬なので、以前彼らの血統パターンを調べたことがあります。

中央勝ち馬となったキングヘイロー産駒の血統的特徴として、①Northern Dancerクロスを持つ、②母がNasrullahの血脈を持つ、③母がNasrullah/Princequillo(あるいはそれぞれの父であるNearco/Prince Rose)のニックスから成る血脈を持つ、のいずれかの血統パターンに属することが多いとわかりました。

①のNorthern Dancerクロスに関しては、キングヘイローがAlmahmoudの牝馬クロスを持つことに関係があると思います。

キングヘイローは父がNorthern Dancer系、母父がHaloなので、Almahmoudクロスを持つことになりました。



Northern Dancerクロスを持つキングヘイロー産駒は、父の持つAlmahmoudクロスを継続強化することができます。

この牝馬クロスは非常に優れた瞬発力を伝える傾向にあるので、競走能力の強化という点でも好ましい配合手法だと言えるでしょう。

②のNasrullahクロスの場合、Nasrullahがキングヘイローの血統内に複数存在するMahmoudと牝系が同じという近親関係にあります。



このNasrullahとMahmoudが出会うことで、爆発的な短距離スピードが伝わります。

Mahmoudに関しては、①で指摘したAlmahmoudの父であるという点にも意味があるように思えます。

③のNearco/Prince Roseのニックスを持つ繁殖牝馬とキングヘイローとの相性については、キングヘイローがSir Gaylord4×4を持っていることが最大の理由でしょう。

このSir GaylordこそがNearco/Prince Roseのニックスから成る血脈であり、繁殖牝馬側が同様のニックスから成る血脈を有することで、そこに相似クロスが継続されることになります。

モガミヒメの血統においては、彼女の2代母の父がボールドラッドなので、Sir Gaylordの血を活かすことができます。



キングヘイローがこのような血統傾向を持つ一方で、モガミヒメはどのような血統パターンを持つのか。

次回はそのモガミヒメの血統を考察して、その後の最終回としてキングヘイロー×モガミヒメ牝系の配合に焦点を当てたいと思います。


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