今回は、2019年度のローレルクラブ当歳馬募集にて当場から提供しているダンシングハートの2019について紹介したいと思います。
天候が良い日に撮影したかったのですが、しばらく好天が見込まれない予報なので、曇りの天候ながら撮影しました。
近日中にターファイトクラブ提供馬のラヴァーズレーンの2019についての紹介記事もアップ予定ですが、そちらも曇天のなかでの撮影でした。
あらかじめご了承ください。
9月下旬に、当場の繁殖分場にてローレルクラブのツアーで参加者の皆さんに視察していただいたダンシングハートの2019。
そのあと離乳を終えて、1か月後の10月下旬に繁殖分場から1歳分場へ移動しました。
当場のなかでも一番最後に離乳したグループということもあり、このグループに属する当歳馬たちは本馬も含めてまだ気性的な幼さを見せています。
本馬で言えば、環境に慣れ切っていないことから繊細な面を見せることがありますが、それも段々と少なくなっています。
1歳分場で冬期も含めた昼夜放牧をするなかで、気性的にも大きく成長してくれるでしょう。
馬体は平均的な馬格を備えていますし、飼い食いも牝馬にしては良好です。
しっかりと飼養管理しながら馬体の成長を促しますが、当場生産馬のオーパキャマラード(現2勝)がそうであったように、同じダンカーク産駒なので素軽さを残しながら張りのある馬体に成長しそうな気配です。
その父ダンカークについては、以前ターファイトクラブ提供馬として当ブログで紹介した
オーパキャマラードの記事で考察しています。
ダンカーク自身はMr.Prospector≒Alydarの相似クロスを持つ馬で、この血統パターンを活かして米国の新種牡馬チャンピオンサイアーになったと仮定すると、ダンカークと配合する際にはMr.ProspectorかAlydarを、とりわけ前者をクロスさせる配合が成功するだろうと予想していました。
Mr.ProspectorとAlydarはともに父がRaise a Nativeであることに加えて母父がNasrullah系であり、さらに互いの3代母であるMiss DogwoodとReal Delightが相似クロスを形成する関係で、血統的な親和性が非常に高いと言えます。
ダンカークがこのような血統パターンを持つためか、Mr.Prospectorクロスを持つダンカーク産駒は活躍傾向にあるようです。
実際、Mr,Prospector5×5を持つオーパキャマラードは現2勝ですし、11月10日時点でダンカーク産駒における獲得賞金上位20頭のうち半数の10頭がMr.Prospectorクロスを持っています。(netkeiba調べ)
本馬もMr.Prospector5×4を持つので、ダンカークの成功パターンを踏襲していると考えられます。
また、ダンカークはサンデーサイレンスの血を持たないことからサンデー系牝馬との配合が可能であり、この組み合わせからも活躍馬が出ています。
先ほどのダンカーク産駒における獲得賞金上位20頭を対象にした場合、実に15頭が母方にサンデーの血を持っていました。
ダンカーク導入はサンデー系牝馬と配合できる種牡馬という大きなメリットがあったからだと思いますし、当場も含めてそういう配合をする生産者の方々が多いからこそ、このような血統傾向が見受けられるのでしょう。
ダンカークの血統はNasrullahの血が強く日本適性の高さを窺わせますが、その父Unbridled's SongはNasrullahクロスに加えてその近親であるMahmoud7×6・6も持っています。
サンデーサイレンスはMahmoud4×5を持つので、ダンカークやUnbridled's Songの系統とは相性が良いと考えられます。
本馬は父がダンカークで母父がサンデーサイレンスという配合なので、血統的な相性は良いはずです。
本馬の母ダンシングハートの血統についても、ここで考察しておきましょう。
これまでもダンシングハートに関しては産駒がセールに上場するなどしているので、このブログでも何度か紹介してきましたが、今回はもう少し深く彼女の血統を紹介しようと思います。
彼女の母アイレスバリーヒルは、当場が米国にてプライベートで購買した繁殖牝馬です。
アイレスバリーヒルの血統はBuckpasser3×3が特徴的で、このクロスを持つことも購買理由の一つでしたが、彼女の場合はそれに加えてStriking=Mr.Busherの全きょうだいクロスも持っています。
そして、このStriking=Mr.Busherの全きょうだいとBuckpasserの母Busandaは血統的に相似関係にあります。
アイレスバリーヒルの購買を決めたときはこのBusanda≒Striking(Mr.Busher)の部分を活かす配合を試みたいと思い、Buckapasserを継続クロスさせる配合をしてビッグサクセス(牡、父スペシャルウィーク、中央3勝)が生まれたり、Busanda≒Striking(Mr.Busher)と相似関係にある血を持つ種牡馬との配合も試しました。
ダンシングハートは後者の血統パターンであり、具体的にはBusanda≒Striking(Mr.Busher)と相似関係にあるNothirdchanceの血を持つサンデーサイレンスを父に持ちます。
NothirdchanceはHail to Reasonの母ということもあり、Hail to Reason系であるサンデーやブライアンズタイムの系統はアイレスバリーヒルに合うのではないかと何度か配合しましたが、なかなか思うようには行きませんでした。
ダンシングハートも、名種牡馬サンデーサイレンスの直仔ながら中央1勝で現役を終えています。
それでもこの牝系はこの血統傾向を持続させたいと思い、アイレスバリーヒルの孫の代になっても継続してBusanda≒Striking(Mr.Busher)のラインを強化するような配合を続けました。
この牝系における代表馬は中央7勝のラインルーフですが、この馬は父フレンチデピュティがBusanda≒Striking(Mr.Busher)の近親や相似関係にあるBimelechやBlue Moonを持っています。
ダンシングハートの産駒で言えば、現2歳で1勝馬のセツメンノトビウオ(牡、父クロフネ)が父方にNothirdchanceの血を持っているので、彼の血統はダンシングハートの血統傾向を継続できる配合になっています。
では、本馬の父ダンカークとダンシングハートの配合ではどうかと言えば、ダンカークはBuckpasser6×5を持つので、Buckpasserの母であるBusandaのラインを強化したいダンシングハートには合う種牡馬だと判断しました。
ダンカークはそのほかにもStriking(Busher)の血も持つので、ダンシングハートとの配合でStriking=Mr.Busher=Busherの全きょうだいクロスが派生します。
さらにダンカークはNothirdchanceの血も持つので、これもまたダンシングハートの血統傾向に合致します。
一方で、ダンカークがMr.Prospector≒Alydarを通じてMiss Dogwood≒Real Delightの相似クロスもできることは既述しましたが、ここにNothirdchanceを加えることでこの相似クロスを強化します。
こうして見ると、本馬の血統には多くの米国血脈が流れていて、それらの多くが互いに相似クロスを形成していることがわかります。
このように米国血脈の濃い本馬はダート適性が高いと考えられますが、馬体的にはそこまでパワフルなタイプにならない印象もあります。
当場生産馬のオーパキャマラードは中央で芝・ダートどちらでも勝っていますが、馬体的に重たい見た目ではありませんし、本馬もそういう馬体に成長しそうです。
ダンカーク産駒は、芝・ダートともにこなしそうな馬体に出ることが多いのかもしれません。
ローレルクラブの会員の皆さまには、この記事が出資馬選定の一助になると幸いです。
今後とも本馬の成長ぶりに是非ご注目ください。