いまのスリッピーには酷な話だが、プラズマ冷却弾の性格を考えると、この任務は、まさにこの兵器を使うにうってつけと言うしかない。
3機のアーウィンが、1発でも冷却弾を命中させることができれば、敵機のスピードは落ちる。そうなればさらに冷却弾を当てることはた易くなる。
コーネリア軍部にはまるで相手にされなかった自身の発明品が、新生スターフォックスの作戦第一号の要となる。そう考えたときスリッピーの胸はおどった。冷却弾を使うことを提案し、それが受け入れられたとき、かれは有頂天になった。チョーシに乗っていた……のかもしれない。
きっと相手はすぐに飛べなくなっちゃうよ。楽勝、楽勝! 苦労せずに捕まえられるさ! ……作戦会議中、スリッピー自身が大威張りで、そう断言したのだった。
だが。今の事態は、そんな想像とはかけ離れた悪い方向へと進もうとしている。『重ねがけ』するはずだった冷却弾は、最初の2発を最後にまるで当てることができない。ぐずぐずしていれば冷却弾の効果は消えてしまう。おまけに、グラビティ・ブレードをもがれたことで自分のアーウィンの機動力は半減し、これではもう、速度の落ちた敵機にも追いつけはしない……
スリッピーは、じぶんの体が空洞のようになってゆくのを感じた。鍾乳洞のように暗く冷えきった体内で、鍾乳石に結露したしずくが漆黒の水面に落ちるように、言葉が滴りこだました。
オイラのせい、だよな。
一度その言葉が体ぜんたいに広がってしまうと、もう、あとからあとからあふれてくる涙をとどめることができなかった。
もう、ダメだよ。あいつを捕まえることなんかできっこない。それもこれも、オイラが調子に乗って……油断して……アーウィンを壊されるような、役立たずだったからなんだ……。