……ッピー! スリッピー応答しろ! 体勢を立て直すんだ!
懸命にファルコ機を追撃しつつ、呼びかけるフォックスの声がスピーカーから流れ出るが、スリッピーの耳には入らなかった。自分の中から湧き出てくる後ろ向きな言葉だけがかれの中に何重にも響いて、レーダーも計器類も、涙でにじみ見えなくなった。ウッ、ウッ、という嗚咽さえ漏らしそうになった、その時。
「ぶわっかもぉん!!!」
ぺッピーの怒号が、スリッピーのアーウィン内に爆発した。脳天を殴られたような衝撃を受けて、スリッピーはとびあがり、機の天井でしたたか頭を打った。目の前を星が飛び、痛みで座席からずり落ちそうになる。コントロールを失ったアーウィンはあやうく墜落しかけ、スリッピーはあわてて操縦桿を握り締め、ようやく機体を制御した。スピーカーからは、まだぺッピーの怒鳴り声が聞こえている。
「べそをかいとる場合か!? オマエの作った武器が頼りなんだぞ! 翼を取られたから何だと言うんじゃ!? 予定どおりにキチンとこなせる作戦などありゃせんわい、パペトゥーンの定期便じゃあるまいし!」
「予定は狂いはしたが、プラズマ冷却弾の性能に問題はない! あとは、今この状況でわれわれがどれだけ踏ん張れるかにかかっておる! 敵も必死だ、こちらの思い通りに捕まってくれるはずがなかろう!? 必死になった相手に勝つには、こちらも必死になるしかない! スリッピー! おまえも必死になれ! ……やれるな!?」