俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その47

2011年04月27日 22時29分40秒 | 小説『ファルコとの出会い』

 背面のボックスを開き、回路を閉じると、アイカメラをしばたたかせて彼は目覚めた。
「オ久シブリデス、フォックス」
 目覚めて第一声がそれだった、フォックスは少なからず驚いて、電子頭脳に直結しているであろう細長い視覚器をまじまじと見つめた。その驚きをも予測のうちとでもいうように、ロボットの人工声帯から音声が流れ出た。
「11年ト2カ月前、私ハフォックス、アナタニオ会イシテイマス。マダグレートフォックスガ完成スル以前ノコトデス」
「11年前だって? オレがまだ、2歳かそこらのころにかい?」
「アナタハジェームズト一緒デシタ、建造中ノ母艦ノオペレーターヲ選別スルタメニジェームズハ我々ノ元ヲ訪レタノデス。勿論、選バレタノハ私デス。ソノ際二アナタノ個人データヲ記憶シテオキマシタ」
「しかし君は今、オレの姿を見ただけだろう。オレ個人を認識するのに、11年ぶりに見た顔だけで十分だったって言うのかい?」
「最初ノ対面後、私トアナタトハ直接二会ッタコトハアリマセン。シカシ映像データデアナタノ姿ヲ経年的二確認スル機会ハ数回アリマシタ。体毛ノ色ト瞳ノ色、ソノ他私ノ認証システム二アル17ノポイントヲ照合スルコトデ確信シマシタ、フォックス・マクラウドソノヒトダト」
 にわかには信じがたい話だった。人工知能と生体認証の歴史は100年をゆうに越えているが、スペースダイナミクス社に追随する技術を持ったものは他にはなかった。電子頭脳を有するロボットはすべてが政府、軍、官公庁の所有であるために一般の人々には馴染みがない。だがフォックス自身は、士官学校での訓練中、やはりスペースダイナミクス社製オペレーション・ロボットと回線越しに会話したことがあった。かれらの性能はそら恐ろしくなるほどに高かった。パイロットたちが高空を超音速で駆けているとき、ロボットたちは彼らに声援を送り、冗談を飛ばし、鼻歌まで歌った。それでいてヒトに対しての敬意を決して忘れなかった。ヒトに限りなく近く、ある面ではヒトを遥かに上回る能力を持ちながら、常に一歩下がったところにいて、ヒトの尊厳を侵そうとはしなかった。なぜ彼らがヒトと同等の権利を得ようと、声高に主張を始めないのか――彼らが当然のように備えているアニマノイドへの忠誠が、いかにして回路に組み込まれているのか。それを知っているものはフォックスの周囲には居なかった。SD社所有の小惑星に、ロボットだけの街が建設されていて、そこからヒトの社会に適合すると判断されたものだけが選ばれて卸し売られる――そんな話がもう何十年も前からまことしやかに語られていたが、その真偽を探ろうにも、コーネリア一の巨大企業は政府とほぼ一体となるほどに結合して、秘密の流出を防いでいた。