「ワシは……ワシが、ジェームズを見殺しにしたんだ。もうワシには、飛ぶ資格なぞないんだ。この上、お前さんまで失うようなことがあったら……ワシはジェームズに、何と言って詫びればいいのかわからない」
「ペッピー。俺は死なないよ」
「死ぬ前には、みなそう言うんじゃ」
「そうかもしれないな。けれど死ぬことくらいは覚悟しているのが、軍人としても、遊撃隊員としても当たり前、じゃないのか?」
「よせ。死を覚悟しているのと、死に急ぐこととは違う。命を粗末にするな」
「命を粗末に、か……」
乗り出していた身を引くと、思案するように言葉を選びながら、フォックスは言った。
「命を粗末にするなと、ペッピーは言う……けれどどんな命にも、いつかは終わりが訪れるんだ……なんのために生きているのか、なんのために生まれてきたのか。一体なんのために? 俺にだって、わからない。自分の命を活かす道を、俺はまだ見つけていない……死に急ぐことが俺の道だとは思わない。けれど、どうせ限りのある命なら、闘いたい。この世界のなかで意義ある何かを見つけて、それに俺の命を捧げたいんだ。……ペッピー」
フォックスは再びペッピーの横顔を見据えた。
「ペッピー……命を粗末にするなと君は俺に言うが……君は、どうなんだ? せっかく助かった命をどう使っていいかもわからず、ベッドの上でただ残された時を過ごす……これは、命を粗末にしていることにはならないのか?」
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