小麦句会 on blog

俳句「麦の会」の句会のひとつです。 ネット句会を月二回行っています。 この句会は誰でも参加できます。

第539回小麦句会結果発表

2024年12月25日 19時48分16秒 | 小麦句会への参加方法
去年はちょっと余裕がなくて、床のワックスがけなどの大掃除は省いてしまいました。
今年はもう少し暑さが遠のいたら頑張ろうと思っていたのに、急な寒さでまた来年に持ち越し?
冬休みが少し長いので考えてみることにします。
一年、ご参加いただきありがとうございました。


兼題:走
狐火消え密偵おまさ闇走る  瞳人
◎ (アゼリア)時代劇のクライマックスのシーンのようです。
△(卯平)狐火とおまさ、それも密偵とは。時代劇の一場面か。劇場型俳句の一つであろう。面白いと言えば面白い。

ガリバーの靴セールスの街師走  幹夫
〇(楊子)ガリバーが固有名詞なのかどうかは問題ではない。暮の街の様子が想像できます。
〇(ちせい)リズミカルな句だと思いました。「セールス」に力点があるような。
△(卯平)「ガリバーの靴」なのか、「ガリバーの」か。後者の読みは面白くない。「ガリバー」と言う店かと解釈してしまう。しかし、「ガリバー」は中古車販売だから、靴屋の屋号が「ガリバー」なのか等々思いを巡らす。「ガリバーの靴」であれば景が明確。ガリバー旅行記思い出す。あの大きな靴を安売りしているとなると、面白い。下五「街師走」の象徴かも知れない。が、少々作りすぎでは。

あれこれそれここそこあそこ師走かな  楊子
〇(珠子)そのような現実の中にも師走が来て新年が来ます。感謝。
○(吾郎)せわしないでんな、ホンマ
◯ (アゼリア) 言い訳のようですが、忙しいと余計こうなるんですよね。
〇(ちせい)ユーモラスですね。混乱の中にも、活気があるような。
○(まきえっと)舌を噛んでしまいそうです。大掃除しなくても死なないと割り切りました。
△(卯平)下五の師走以外を定型を無視して述べる事の冒険心はなるほどとは思うが、そこまでして述べる「師走」にシンパシーを感じるか否かであろう。
師走の忙しさは読み取れないでもない。

ドジャースで打って走って天狼星  泉
〇(瞳人)なあるほど、そう来ましたか。

家系図の最終走者冬木の実  宙虫
○(幹夫)作者をもって家系図も途絶えるのかあ。ちょっと切ない。
○(卯平)いただくかどうかは迷った句。それは季語「冬木の実」。例えば「実千両」であれば家系図の色まで見えてきて「最終走者」と言う措辞も詠み手の位置(後の代まで続かないだろうと言う意味で)もリアルである。他の△句との競合で六句と言う事なので選択した句。絶対ではない。
〇(春生)発想がユニーク。「家系図の最終走者」の発想がユニーク。  
○(藤三彩)老老介護の最終ラウンド。相方のいない部屋は増えてゆく
◎(珠子)最終走者となるも良かろう。精一杯生きるのみ。
○(アダー女)我が家にも兄が面白がってまとめた家系図があります。その時は、我々兄弟姉妹が家系図の最終走者だったけど、今はその子供達、そしてその又子供達に繋がっています。つまり、我々の孫、近い将来は曾孫が最終走者となる予定。なんとも面白い事。最終走者という表現に家系という繋がりの暖かさを感じます。
◎(あき子)最終走者の自覚を持ち凛として生きる姿は、冬木の実のよう。
◎(あちゃこ)客観的な憂いと季語との取り合わせに共感です。
◎(まきえっと)最終走者になっちゃうんだという辛さがあるのですが「冬木の実」で救われています。新しい未来がみえています。

後ろから大波が来る師走かな  カンナ
〇(楊子)急かされる感じが出ています。
○(アダー女)おっしゃるとおりです。なんで師走とはこんなに気忙しいのでしょうね。

奔放な竹の走り根冬ぬくし  アネモネ
○(めたもん)「奔放」という「竹の走り根」のとらえ方が的確で斬新だと思います。

病む友を支えて歩む街師走  あき子
〇(カンナ)情景が浮かびます。

荒れ庭の落葉道走る野良猫  仙翁

雪国向け走る車や逃避行  アダー女

鷹狩の犬と雑兵突つ走る  春生

○(餡子)安土桃山時代か?徳川時代か?雑兵はいつの世も辛いものであります。

街師走マスクのままの顔認証  珠子
○(泉)「顔認証」には、いろいろと問題が多いようです。
○(卯平)詠み手の動作か、それとも詠み手が観察した景か。詠み手自身の景と鑑賞する方が面白い。今では「マスク付顔認証」も出来るスマートフォンもあるようだが、鑑賞者である私のiPhoneはそこまでの機能はない。だからマスクをずらして「私だよ」と言わないとならない。街師走の季語からこのスマートフォンはどうやらマスク付顔認証は出来ないようだ。だから急いで外している師走の景。もしかするとATMかも知れない。師走の街を切り取った景として共感。
○(宙虫)いつの間にかマスクが正装のように・・・
◎(道人)マスク(疫禍)顔認証(詐欺被害対策)と現代社会のキーワードを並べて独特の師走の雰囲気を醸し出している。

小春日を刻む伴走の赤き紐  餡子
○(卯平)先ずこのような句作りは鑑賞者である私には中々出来ない。それだけ「頭が硬い」。だからこのような句にはつい惹かれる。この句以外に選外でも同じような句立ては注目したが、その中で揚句が一番共感した。「刻む」と「赤き紐」のインパクトがこのような句立てで読み手に迫ってくる。視覚障害者のマラソンランナーへのエール。もしかするとこのような句立てが評価される結社では揚句少々凡なのかも知れない。
〇(春生) これは視覚障碍者のマラソン走者の伴走の練習風景でしょう。「赤き紐」に焦点を持ってきたのも手柄。 

信号機唄う師走の通りゃんせ  めたもん
○(アネモネ)「通りゃんせ」の曲が聞こえてきます。
○(仙翁)楽しそうな信号ですね。
〇(あき子)いつも聞いている通りゃんせ、師走には心に響くのかもしれません。
○(あちゃこ)郷愁を誘う冬の夕暮を想像しました。
○(まきえっと)なんか口ずさんでしまいますね。

直走る橇の音下手な嘘をつく  あちゃこ
○(めたもん)「直走る橇の音」と「下手な嘘をつく」の構成。「嘘」が深く表現される。詠み方を勉強したいと思う句です。
△(卯平)好事が別れるだろう。しかし面白い。二句一章の断絶が面白い。が、表面的には面白いがその全体まで没入は出来ない。おそらくこのような句作りばかりであれば限界を何れ感じるのではないか。

乗れ各位走れ彼氏は行く枯野  吾郎
○(泉)勢いの良い回文俳句だと思います。
〇(カンナ)面白い回文
○(宙虫)力強く枯野を行く。走れメロスか・・・
○(あちゃこ)走れ走れと急かす感覚が正にピッタリきました。
△(卯平)もし揚句の構想を鑑賞者である私が得るなら「乗れ各位走れ彼氏や逝く枯野」とするだろう。その定型臭さが嫌で揚句だったかも知れない。「乗れ各位走れ」「彼氏は行く枯野」も面白いと言えば面白いが、揚句のまま膾炙して今後残る句かどうかは疑問。

貼り紙に猫の愛称街師走  まきえっと
〇(瞳人)猫の手も借りたい師走、迷い猫を探してくれる、奇特な人よ
〇(楊子)こんな暮の忙しいときに「ミーちゃん」とか「エリザベス」とか書いてある張り紙にすこしホッとします。
○(藤三彩)迷い猫のご案内か?二三日したら家に戻ってきたりして
○(仙翁)新聞にそんな投稿が載っていました。見つかったそうです。
◎(宙虫)何気ない景だがいい雰囲気。猫かふぇとか迷い猫とか。

賃走のメーター倒す街師走  卯平
○(幹夫)捉えどころが面白い。
○(宙虫)最近、タクシーに乗らないから妙になつかしい。

辻立ちのアコーディオンの音師走  道人
〇(あき子)師走の風情が、アコーディオンの音に集約されて聞こえます。
△(卯平)二つを思い浮かべた。一つは例えば欧州の某街での景。仏蘭西かも知れない。しかし、それでは「絵葉書俳句」だろう。もう一つは戦後の闇市の景。鑑賞者は微かにその景は記憶にある。しかし、印象深いのは病院の白衣を着て、例えば義足とか松葉杖をついてのアコーデオン演奏だ。数十年前か、熊本城でこの景を観た。「まだこのような事、あるんだ」と驚いた事がある。その時句帳を持っていたので句にしていたら通り過ぎる人が私を「なにしてんだ」と覘き込んだので印象深い。しかし、後者の景を実感するのに「辻立ち」ではどうであろうか。臨場感はない。もしかすると朝ドラの再放送の影響かも知れない。

走り根をじつと見つめて冬ざるる  ちせい

走り根に躓き出逢う冬蒲公英  アゼリア

〇(楊子)意外なところでホッとするものに出会います。
○(アダー女)眼に見えるような情景です。とんでもないところにまで伸びた走り根が土から出っ張っているのに気づかず、蹴躓いて「あっ!」と思った途端、目の前に冬蒲公英と出逢った作者。蹴躓かなければ、蒲公英に出逢わなかったのだから「良し!」としましょう。なんか微笑ましい句で好きです。
〇(ちせい)セイヨウタンポポが増えたせいか冬でも咲いて居るタンポポ。


テーマ:日の出をみるとしたらどんな場所?
アトリエの埃の密度初日影  めたもん
◎(楊子)この絵を描いてから随分と年がたったなあと振り返っています。それも初日影とは意外な取り合わせです。
○(吾郎)主人はもういないのか、時間経過の密度
△(卯平)最後の選と競合した句。やはり下五「初日影」で上五中七の緊張感が一挙に弛んでないか。勿体ないとは思う。

北風を背に受け父の肩車  まきえっと
○(泉)子供のころの、懐かしい思い出です。
○(アネモネ)それでも父の肩車の安心感が伝わってきます。
〇(春生)北風を背にしていることは、向いているのは太陽の光でしょう。明るく力強い句です。
○(餡子)懐かしい。土手で汽車の通るのを父の背中で見た記憶があります。 
〇(珠子)テーマ「日の出」の枠で読むと何て素敵な景でしょう。肩車の子はこの景を忘れるでしょうが、あたたかさは心に刻まれるでしょう。 
◎(仙翁)景色が浮かびます。テーマと合わせ朝日も。
◎(めたもん)北風を背にお父さんに肩車してもらっている景が浮かびます。何気ない詠みかたですが、温かい気持ちになる句です。
○(あちゃこ)幸せな子どもだったのですね。父親の温もりと北風の対比もいい。
◯(道人)父の肩車は子供にとって希望の象徴のような気がする。
◯ (アゼリア)景色が良く見渡せますね。

クリスマス港人並み済ます陸  吾郎

初日の出待つ半島の被災の地  春生

◎(幹夫)北能登の地震から1年が来ようとしているが、復旧復興も遅々としている。「初日の出」の季語に願いが表れている。
◯ (アゼリア)来年は災害のなく良い年になることを祈ってます。

ナース室の窓いっぱいに初日差す  楊子
◎(瞳人)ああ、お疲れでした、入院3日、ナースのやさしさが身に沁みました。
〇(カンナ)情景が浮かびます。
○(卯平)大晦日から元旦にかけての当直ナースの実感だ。シンプルであるが故に詠み手の解放感に共感出来る。
◎(春生)夜間勤務のナースに差す初日の光、希望のある句です。
〇(珠子)仮眠をとったナースの元旦。引継ぎをして退勤、近くの神社に初詣をして帰宅するのでしょうか。  
○(アダー女)優しく明るいナースさん達の笑顔が見えてくるようです。
〇(あき子)ナース室の初日は、病院中を明るく照らしてくれる。
〇(ちせい)看護師の聖域。医療器具は遍く照らされて。
○(まきえっと)きっと良い一年になると思います。

跨線橋日の出と共に声増えて  ちせい
〇(瞳人)こういうところも、見る場所か、なるほど。
○(アネモネ)跨線橋に鈴なりの人たちが見えてきます。

歳旦祭済めば日の出の産土神社  アゼリア
△(卯平)上五中七の景は事実のようだ。この句から調べると皇居での歳旦祭は午前五時半くらいから六時にかけて始まるらしい。元旦の東京の日出は午前六時五十分位らしいので、なるほどと納得。しかし下五の「産土神社」で何処のことだと思ってしまう。少々ずるいかも知れないが下五で叙すれば上五中七が生きて面白いのでは。

砕け散る犬吠埼の冬の音  道人
◎(泉)雄大な光景を詠んだ俳句だと思います。
〇(あき子)冬の犬吠埼に立っている気になりました。

柵のなき貴賓の墓や初日の出  卯平

三寒の山は日の出の旅湯かな  幹夫

〇(カンナ)よくできた句だと思います。
○(仙翁)今年の冬は、もっと寒さが続きますね。
○(吾郎)いいですね~、日の出見るならあったかい温泉に限る

四方山の頂き光る冬の朝  仙翁

朱鷺色の夜明け砂丘に冴る影  あちゃこ

○(幹夫)共感の景だ。
◯(道人)あかときから日の出に至る時間経過が「朱鷺色の夜明け」にうまく表現されている。「砂丘に冴る影」も詩情豊か。

初日の出高層ビルの隙間から  カンナ

想い出の東京タワー初日の出  アダー女
    
○(アネモネ)上五の「想い出の」にやられました。
○(藤三彩)そうです。暫らく芝には行ってないなあ
○(めたもん)「想い出の」どこか懐かしい感じがする東京タワー。季語により、懐かしさと共に「さあこれから」という気持ちも伝わってきます。

鶴の鳴く沼に三途の朝が来る  宙虫

冬はつとめて屋根裏の狐窓  珠子

○(吾郎)狐格子の厳かなれどやや禍々しくもある風情

初日の出世界を回る豪華船  泉
〇(瞳人)羨ましい、日の出ですね。

灯台のその天辺に初日待つ  アネモネ
〇(瞳人)ここも、素晴らしい、けど寒そうですね。

頭だけ浮かぶ湯の花冬の波  あき子
◎(藤三彩)しばらく日本海は見ていないなあ。温かい露天風呂に入りたいなあ

呑み鉄の窓は日の出やさめ心地  瞳人
○(餡子)あの番組好きでよく見ます。羨ましいナと思いながら・・・。 
 
白息や常の屋根より常の暾  餡子
〇(珠子)昨日と変わらない場所から変わらない朝日が。しかし初日と思えば常とは違う何かを感じるのがヒト。   
△(卯平)詠み手は「暾」を使いたかったかも知れない。が「日の出のまるい太陽の意」である「暾(トン)」が生きているかどうか。「常」まで必要かどうか。詠み手の中でこの措辞を十分消化していないと鑑賞した。


雑詠
落ちまいと枝にしがみつ吾は枯葉  アダー女

空気抜け冬満月の定位置に  まきえっと

◎(卯平)景が明確。冬満月の景が真っ正面に浮かんでくる。その景の緊張感も伺える。もう一つの句と競合し少し迷ったが、やはり揚句の詩情が魅力的。最終的に特選とさせていただいた。

しんしんと浸る寒さや閨の酒  幹夫
△(卯平)北国の女郎屋の景なのか。時代劇の一シーンを彷彿させる。「寒さ」と説明されても鑑賞者は閨の酒に赤面するだけ。「雪」の景があれば揚句より詩情を得るだろう。

スケジュール表に○×師走かな  カンナ

デモ隊は凍て夜も予定歯痛も出  吾郎

〇(春生)意志表示とは過酷ですが、やらなければなりませんね。敬服します。   
○(藤三彩)年末のワッセに出かけるのも面倒なのに歯痛とはまた難渋なことよ
○(餡子)学生の頃を思い出しました。 
○(仙翁)韓国のデモの人、寒いでしょうね。面白い句ですね。
○(宙虫)なんだか体全体に寒さが・・・・
○(めたもん)雑踏、喧騒の夜。突然の「歯痛」、妙にリアリティーがあって不思議です。
◯(道人)徹夜も辞さぬデモ隊の心意気と末尾の歯痛の諧謔味の落差が面白い。回文句ならではのリズムも佳い。
○(まきえっと)何もこんな寒い時に、しかも歯痛なんですよね。

とくほどに万両赤くする誤解  宙虫
△(卯平)それなりに面白い。が「誤解」で揚句をこねくり廻していないか。上五中七は素直に鑑賞出来る。

井戸端に隠れ居たるや冬小菊  仙翁

国境のスタバの人魚山眠る  あき子

○(餡子)今や日本全国にあると言うスタバ。ギリシャ神話の人魚とか。何処の国境でしょうか。 
△(卯平)上五中七の景を実感しないと中々鑑賞には行きつかない。国境のスタバはわかるが。。。。もしかしてスタバの看板の「人魚」の事か。だとすると「だから何なんだ」と思ってしまう。眼目は国境だろうか、外国の景だろうか。山の中にあるスタバか。そんなところもあるんのだろう。

十二月八日バチッと静電気  珠子
○(アネモネ)これはもう「十二月八日」の勝利です。
◎(カンナ)8音9音の構成、取り合わせが良いと思います。
◎(アダー女)太平洋戦争開戦日。日本軍による真珠湾攻撃!「バチッと静電気」に日本国民のシャキッと背筋が伸びる思いを言い得て妙。それから長い第二次世界大戦へと突入していったのですね。
○(あちゃこ)静電気をここに持ってきたところが見事。
◎(吾郎)知らぬ間に溜め込んでいるエネルギーが弾ける感覚。128によく似合う
◯ (アゼリア) 忘れてはいけない日ですよね。
○(まきえっと)「静電気」がいいですね。喜びもバチッという一瞬のものだったのかも。
△(卯平)開戦日だろう。だから静電気なのか。なるほどとは思うが、それ以上は進めない。例えば同じ十二月八日の「レノン忌」であれば揚句より詩情は深く鑑賞出来るのでは。 
 
小春日や私と動く影を追ひ  卯平
〇(珠子)私も時々こういう気持ちになります。追おうとしてしまいます。
◯(道人)小春日の散歩の気分がよく出ている。
○(吾郎)おいおい腰が曲がってる、俯くんじゃない、ほら胸張って

水鳥のついいと予定ドタキャンす  楊子

雪虫や津波の海の見える丘  めたもん

◎(アネモネ)私の心象風景。文句なしに特選です。
○(卯平)揚句、中七下五は一瞬平凡な報告かと思いきや「雪虫(北海道や東北地方では、初雪の降る少し前に出現すると感じられることが多いため、冬の訪れを告げる風物詩ともなっている)」で臨場感が増してくる。揚句は詠み手が3.11の津波を見たあの丘に実際佇んだ景だ。この季語で当時の景が見事に立ち上がってきた。特選も迷ったが、やはり「丘」だけでは少々弱い景ではと並選とさせていただいた。
〇(春生)もしかしたら、津波で亡くなっていった人たちの化身かもしれませんね。佳い句です。
○(あちゃこ)津波の被災地は日本各地に。故郷が浮かびます。

デパ地下に買ふ下北の寒しじみ  アネモネ
○(アダー女)しじみと言えば宍道湖が有名ですが青森県の十三湖などの物も大粒で美味しいそうですね。「デパ地下と下北」が妙にマッチング。私もシジミ汁好きで良く冷凍庫に入っています。身は食べず汁だけ飲みます。たまにジャリッとすることがあり、あの不快感がどうにもダメです。浅蜊も同じくです。亡き夫に「こんなに旨いのにもったいない。」とよく言われましたが。

全国に届くおせちの宅配便  泉

頂上へ冬青草の密林へ  ちせい

年送るネシーワルツ目を閉じて  瞳人

△(卯平)揚句から江利チエミの余り幸福ではなかった生涯を思い起こす人がいれば、それは鑑賞者と同じ年代か。「目を閉じ(ぢ)て」が少々甘いのでは。

白息をかけられ目覚むる眼鏡かな  餡子

反戦のストリートギター枯葉降る  あちゃこ

〇(楊子)いつの世も絶えない戦は人間の業なのでしょうか。
○(餡子)今どうしているのでしょうね。何かに絶望し何かに燃えていました。  
◯(道人)ストリートギターと枯葉で反戦闘士の哀愁が漂う。
〇(ちせい)絵になる風景。超絶技巧の弾きぶりだったのかもしれません。
△(卯平)句意としてはストリートミュジシャンがギターで反戦歌を奏でている路上に枯葉が散っている景を詠ったのだろう。敢えて「路上ライブ」を揚句で外したのは何故だろうか。先行句はあるとは思うが「黄落や路上ライブの反戦歌」などであれば私は景が立ち上げるが如何であろうか。詠み手にとってはこれであれば平凡な句なんだろう。かと言って揚句が成功しているかどうかは不問だ。

不等辺三角形を銀杏散る  道人

防犯カメラの死角蠢く寒ガラス  アゼリア

○(幹夫)寒ガラスの特性が捉えられている。
○(泉)最近は日本の治安が非常に悪くなりました。
〇(カンナ)上五の八音が気にならないよくできた句だと思います。
○(宙虫)物騒な事件がこの一年続いた。防犯カメラの威力も感じた。そしてその死角も。

眠る子の五体を包む聖夜の灯  春生
○(泉)宗教的な雰囲気に満ちた俳句だと思います。
○(仙翁)五体を包む、光っているようで。
○(めたもん)神聖な気分に満ちた句。温度感のある中七「五体」がリアルで印象に残ります。
〇(あき子)眠る子を見守る眼差しに、感謝と祈りを感じました。
◯ (アゼリア) 世界中の子供たちが穏やかに休める日が早く来ると良いですね。
△(卯平) 「眠る子の五体」に共感するかどうかであろう。悪くはないとは思うがやはり「予定調和の世界」ではないか。「聖夜の灯」と「眠る子」の関係も緩いのでは。


☆☆次回をお楽しみ。
  よいお年をお迎えください。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿