九州北部(山口県を含む)を残して梅雨明け。待ち遠しいですね。
兼題:明
夕端居明日の段取り巡らせて 泉
○(アネモネ)心置きなく時間を楽しめますね。
○(幹夫)「夕端居」の季語が適っています。
〇(めたもん)明日に思いを巡らせながらの夕端居。「段取り」という言葉に詠み手の人物像が浮かびます。
腹蒸すや要るか明るい安村は 吾郎
○(幹夫)Don’t worry, I’m wearing!・・・「pants!」
◎(餡子)正直言って、あの方を見ても腹の底から笑えない私です。腹蒸す・要るかなど回文にして言い得て妙!
仰ぐものぼやけて紙魚の食う明治 宙虫
あじさいの白から路地は明け始め 楊子
◎(幹夫)素敵な朝の始まりがテンポよく詠まれています。
〇(珠子)アナベルという美しい白紫陽花を思い浮かべました。あの白から明けてゆく静かな路地がイメージできます。
○(吾郎)夏はこうあって欲しい定番の朝風景。綺麗
○(あちゃこ)爽やかな朝。風も感じます。
◯(道人)紫陽花の句として着眼点が新鮮な美しい句。
○(仙翁)明けていく様子がいいですね。
〇 (多実生) 白から朝は開け始まる、ご最もです。
◯ (アゼリア) 景のよく見える爽やかな句と思います。
〇(まきえっと)路地の夏の朝。あじさいの白から明けるがいいですね。
すててこやとにかく明るい安村 幹夫
亜星の樹鼻歌ルルル梅雨の明け 瞳人
○(幹夫)梅雨明けて青空!「この木なんの木気になる木♪」CMソング「日立の樹」は小林亜星の作詞ですね。とってもいい歌です。
明朝の器の真贋晩夏光 藤三彩
○(泉)明朝ですか。中国は歴史の国ですね。
○(卯平)明朝の器の絶対性は伺えないが、晩夏光と明朝が共振れしている。
○(ちせい)真贋論争は果てしもなく晩夏光がぎらついています。
諍いのあと引く予感明易し あき子
◎(アネモネ)明け方まであれこれ考えていたんでしょうか?「明易し」に臨場感ありです。
〇(楊子)一晩ねれば解決ではない夏の寝苦しさも思います。
○(卯平)ドラマの明確さ。明易しが少々緩いかも知れない。
〇(春生)諍いも後に引かないといいですね。季語「明易し」が謎。
短夜を更に短くする明かり 多実生
五月雨の音止みたるや明け烏 仙翁
○(吾郎)ぬしと朝寝がしてみたい
明滅の蛍火明滅の地球 餡子
〇(珠子)「明滅の地球」蛍火とのリフレインが静かで恐ろしさが募ります。
○(あちゃこ)明滅のリフレインが危機を伝えているよう。地球の脈動は弱々しいような。
○(仙翁)蛍と宇宙の中の地球、対比が面白いですね。
◯ (アゼリア) 興味深い取り合せと思いました。リフレインも効いていると思いました。
(選外)(道人)蛍火の儚さと戦争・環境など今にも滅びてしまいそうな地球との対比が対句的リフレインの妙味でクローズアップされている。選外選。
薄明のニュース速報出水村 道人
○(アネモネ)何が起こったんだろう!大変大変!
○(餡子)10年前には聞いたことも無かった「線状降水帯」。毎年凄い被害に胸が痛みます。大分や秋田と麦の方がお住まいのところも心配でした。
女子トイレに女装の男梅雨明けて カンナ
(選外)(幹夫)だから言ったことじゃない。LGBT法案断固反対!
「明烏」てふ名の落語明易し 卯平
〇(藤三彩)廓咄が遠くなっている。桂文楽や古今亭志ん朝の「明烏」でも何が面白いのかわからないという若い子の投稿(ユーチューブ)もいて可哀想
藍残る街はすっぴん明易し めたもん
○(あちゃこ)早起きな私には、リアルな景。すっぴんの朝の空は、時にだるそうです。
◯(道人)夏至前後の暁闇の街の雰囲気が「すっぴん」の俗語でうまく表出されている。街は夜明けとともに化粧してゆく。人間社会そのものが街。
○(宙虫)明け方の街の姿。こういう姿を見ることがなくなった。
天井に渦巻く木目明易し 珠子
○(アネモネ)木目数えていたらもう夜明け。いかにもです。
〇(めたもん)眠れない明け方でしょうか。天井に渦巻く木目は心模様のようでもあります。
〇(春生)しばらくは天井を眺めて、すっかり明けるのを待ちますね。
薄明の水と語らう未草 あちゃこ
○(ちせい)睡蓮の花が微笑んで居る様です。
キャンプの子明くるを待てず馬小屋に 春生
〇(カンナ)リアリティがあって良いと思います。
青草が明確にする風の道 ちせい
〇(楊子)確かに風に従うやわらかな青草で風の道を知ることができるのですね。
○(仙翁)青草と風の道、いいですね。
〇 (多実生) 青草のなびきが風の道を見せています。
ふはり来る友の旅信に梅雨明くる アゼリア
〇(楊子)「ふはり」がいいです。思いがけない友からの便りに空が明るくなったようです。
〇(カンナ)上手い句だと思います。
湖へまっすぐな道梅雨明ける まきえっと
七月の雨を明るくうさぎ小屋 アネモネ
〇(楊子)「うさぎ小屋」という日本の家を象徴的に言った時代がありましたね。これはほんとうのうさぎ小屋のような気がします。白いうさぎが見えます。
〇(まきえっと)「うさぎ小屋」がいいですね。最近の朝ドラでもよく見かけるのでより近い存在です。
テーマ:暑い
アメ横の嗄れ声や盛夏盛夏盛夏 めたもん
〇(あき子)アメ横の活気と暑さが伝わってきます。
発掘のショベルカー灼くる昼下がり アゼリア
蒸すや蒸す縞蚊喧し棲む休む 吾郎
〇(珠子)回文のリズムには鬱陶しさが倍増します。今年は特に地球は危ないと痛感しています。このスピードで地球が壊れてゆくのが恐ろしい。
○(あちゃこ)蚊のイヤァな感じが見事に描写されて、暑さが増します。
〇(まきえっと)蚊がぶ~んという音を立てて近寄ってくるのを思い出しました。
そらそうや「売切れ岡田」汗ふきタオル 瞳人
〇(カンナ)リズムが良いと思います。
はらからへ贈る佃煮小暑かな 道人
〇(楊子)特選と迷いました。はらから、佃煮、小暑がそれなりに意味あり気でじとっとしています。
○(卯平)「はらから」か「異邦人」か。若干のぶれは感じつつの選。
○(宙虫)佃煮が人間関係をみせてくれる。
湖に潜る夢見る熱帯夜 まきえっと
〇(瞳人)潜るより、浮かんでいたいですね
○(泉)ひと時でも涼しくなりたい。たとえ夢の中でも。
〇 (多実生) 熱帯夜からの逃避願望実現です。
○(ちせい)湖の中は別世界、竜宮城でもあったのかもしれません。
〇(春生)夢の中でも湖を泳いでいる感覚が欲しいですね、涼しさをいただきました。
炎昼の抜け殻乗せて夜のバス あちゃこ
〇(珠子)暑さに疲れ切った乗客。帰省の長距離バスかもしれません。目覚めたら青々とした田園風景・連山が癒してくれることでしょう。
○(吾郎)映画のエンドロールのような空気感、好きよバスの後部座席
〇(あき子)水分が蒸発して抜け殻で帰る、夜の脱力感。
○(宙虫)炎昼の抜け殻が面白い。
◎(めたもん)比較的空いている夜のバス。路線バスでしょうか、高速バスでしょうか。いずれにしても、暑かった昼の「抜け殻」を乗せて夜のバスは走ります。
◎ (アゼリア) お仕事されている皆さんご苦労様です。乗り過ごしませんように。
◎(まきえっと)夏の暑さの中を過ごした様子を「抜け殻」としているところ。夜行バスはどこに行くのだろう。目が覚めたら緑の山と青い空でしょうか。
火星人夙に退散地球(テラ)溽暑 幹夫
花合歓のあざやか堅い土を掘る 宙虫
格子戸に立ち上る影水を打つ 仙翁
サングリアゆらゆら炎暑のバルセロナ カンナ
炎天を来て水っぽい前頭葉 餡子
〇(カンナ)「水っぽい前頭葉」が面白い。
◎(吾郎)なんか直感的に納得、そうなんだよね、そうそう
◎(あちゃこ)水っぽい脳とは?なんていう理屈を超えて納得。独自な感性に脱帽です。
〇(あき子)干からびるような気がするけれど、水っぽくなるのかな。
金髪やハンディファンの社長補佐 卯平
◎(カンナ)季語でない言葉の後に「や」を置くのは難しいのによく詠まれたと思います。季語の後の「の」の使い方も上手い。省略の技術に感服。
厚化粧して夏場所を観覧す 春生
〇(瞳人)暑さには厚さで立ち向かおうということでしょうか
○(泉)ユーモラスな俳句だと思います。思わず笑ってしまいました。
○(餡子)なんで厚化粧?と思いましたが、「テレビに映されることが有り」を意識してかしら?砂被りで観戦の馴染みの女性が話題になることがおおいようです。
〇 (多実生) 暑い名古屋場所ですが、和服のご婦人の観戦が花を添えます。
〇(あき子)テレビに映る土俵近くの席にそんな方々を見かけます。テーマからの着眼点に感心しました。
(選外)(幹夫)桟敷席での観覧でしょう。デヴィ夫人etc.芸能人も時々見かけます。
三伏の鸚鵡飛び交ふ屋敷林 アネモネ
炎上のサイトかき混ぜソーダ水 楊子
〇(藤三彩)タレントのryuchell(りゅうちぇる)さん(27歳)が7月に亡くなった。SNSでの誹謗中傷が原因ではないかと言われる、本句も面白おかしくの一句であろう。
◎(道人)ネット社会は益々ややこしくなって来たようだ。現代の暗い相剋をストローでかき回してしまう発想がユニークで明るい。ソーダ水の句としても秀逸。
◎(宙虫)現代的視点がいい。ソーダ水が逆に怖い存在に見える。
〇(春生)現代的ですね。
(選外)(あき子)炎上しているところを更にかき混ぜると・・・。
暑き日々青春を汚す事なかれ ちせい
蒸暑し写楽の口がひん曲がる 珠子
○(幹夫)写楽の浮世絵はたしかにそうです。
◎(仙翁)あの浮世絵の様子と蒸し暑さ、似合っていますね。
〇(めたもん)写楽の口のように、顔が歪むほどの蒸暑さ。くすっと笑える形容が楽しくていいですね。
○(ちせい)暑さでだれてきたり、エラークラスの現象が。
新語かな警戒アラート熱中症 藤三彩
炎熱や朝のコーヒーワンコイン あき子
猛暑来る今年も米の当たり年 多実生
〇(瞳人)取り入れ迄を思いますと、これから、まだまだ、大変ですね
夜更かしと朝食ぬきで暑さ負け 泉
雑詠
うっかりとこぼれる言葉夕端居 まきえっと
○(餡子)そうなのです!うっかり、しまった、と言うことが多くなりました。心をほぐす端居ですからつい。
○(卯平)この句の眼目は「こぼれる言葉」。「こぼす言葉」ではない。だから夕端居が上手くついている。
◎(春生)つい、気持ちが緩んで、ぽろりと言ってしまうことも。
(選外)(幹夫)夕端居ってくつろぎますね。
ザリガニで埋め尽くされる水路かな ちせい
△(卯平)このままでは単なる報告。この奥の発見と詠み手の絡みが欲しい。
テキーラの微熱独りの星涼し 道人
○(あちゃこ)静かな独りの夜。生活感の薄さがいいですね。対比が効いています。
○(仙翁)テキーラ、微熱、なかなかかっこいいですね。
〇(めたもん)ゴッホの「星降る夜」の色彩が思い浮かびました。フランスなら「ワイン飲む」となるのでしょうが、微熱にはテキーラが合いますね。
○(ちせい)涼しさが伝わって来ます。微酔だったのかもしれません。
どの株も風が鍛える青田波 多実生
◎(楊子)「鍛える」という動詞にはっとさせられました。風に従うのではなく鍛えられるという見方が新しいです。
◎(泉)なるほど、自然によって鍛えられ、美味しい米が育つのですね。
◎(あき子)「風が鍛える」景色から滲み出る、生きることへの力強い肯定感。
ひまわりやキューブ型した家が建つ めたもん
○(アネモネ)なかなかモダンそうな家!
○(卯平)キューブとひまわりの関係が面白い。「建つ」か「建ち」か。
○(宙虫)まさしくキューブ型の家が増えてきて、日本の住宅の町並みは変わった。
一万六千歩コマクサに見送られ あき子
◎(藤三彩)高山植物の女王といわれるコマクサ。八ヶ岳の横岳~硫黄岳の群生花が見事。栂池自然園、五竜高山植物園も懐かしい
◎ (多実生) コマクサの咲く高山では快適で羨ましい。
炎天下争いなどどうでもいい カンナ
〇(瞳人)プチンとキンペイさんに聞かせていますか
○(吾郎)まずは自己防衛で生き残ること
○(泉)全くその通りです。しかし、戦場では?日本の平和がありがたい。
(選外)(幹夫)ウクライナ反転攻勢!ロシア侵略にはうんざりです。
愚直なる人生よろし道をしへ 幹夫
◯(道人)この道おしえは、柔道か剣道の達人若しくは相当な修行を積んだ老師のようだ。
◯ (アゼリア) 私も愚直に生きたいと思ってきましたが、後期高齢者となり、最近の世相をみて少し迷いが出て来ました。
迎え火や母妻出かけて吾一人 藤三彩
肛門の痕をあらはに蛇の衣 アネモネ
◎(珠子)あまりにも完璧な形だったのでと、母が畑から持ち帰った蛇の衣を貰って大事にしておりました。まさにこうだった気がします。
初蝉の微かな喘ぎ会者定離 あちゃこ
○(吾郎)数年の孤独と、数日の出会いと別れの端境
○(仙翁)微かな喘ぎですか。短い出会いでしょうか。
水を飲むただ水を飲む熱帯夜 餡子
〇 (多実生) 熱帯夜水を飲んで対抗するのみ。
石垣に修復番号蝉時雨 珠子
〇(藤三彩)熊本城の修復も復興に向けて進んでいると聞く。南阿蘇鉄道も運航再開されたとか、また大雨の線状降水帯による土砂崩れが心配
○(アネモネ)「蝉時雨」がいい味出しています。
〇(カンナ)災害の後の修復か?想像が膨らみます。
○(餡子)熊本城などはそうだったんでしょうね。あの見事な石垣の反りを作った昔の技にはため息がでます。その頃も聞えただろう蟬時雨の季語がピッタリです。
◎(卯平)城跡での景だろう。熊本城か。蝉時雨が上手い。
◯(道人)栄枯盛衰を含めた時空の推移をモノだけで的確に詠んでいる。
◯ (アゼリア) こういう細やかな努力で遺跡は守られているのですね。
〇(まきえっと)気が遠くなるほどの作業ですね。こうして守られているんでしょう。「蝉時雨」がいいですね。
〇(春生)お城の修復現場ですね。無駄のない佳句です。
息継ぎは空の青吸う自由形 楊子
○(幹夫)世界水泳福岡大会開催中です。掲句では、息継ぎ初心者の自由形の景が思い浮かびます。
〇(珠子)これは競技ではなく、ひとり悠々とゆったりと泳いでいます。
〇(あき子)水から顔を出した瞬間に吸い込む、空の青。動画を見ているようです。
〇(めたもん)中七「空の青吸う」の発想が素晴らしい。屋外プールや海での泳ぎの開放感が伝わります。
◎(ちせい)吸うものがすごいのですが、泳ぎの精悍さが伝わって来るようです。
(選外)(道人)「空の青吸う」が屋外の自由形泳にピッタリ。選外選。
灯を消して漁火を見る能登の夏 アゼリア
〇(藤三彩)日本海の水平線に並ぶ漁火は山陰からも見えます。大雨、燃料代など資材の高騰、漁業関係者の労苦に加えミサイル迄飛んできては堪らない。
◎(瞳人)消して見る、に少々、という気はしますが、涼しそう
白日傘風呂敷包胸に抱き 春生
浮き彫りの仏の御座す夏野かな 卯平
無限なほど水母を取ってノーベル賞 泉
〇(瞳人)そういう方がいらっしゃいましたね、たしかに
名つけ人奥床しゅうも竹夫人 瞳人
夕凪の母の思考にある木目 宙虫
(選外)(あき子)木目で現そうとしているのは、思考の途切れ途切れの状態か。自分にも覚えがあるような。
涼風やせせらぎ止まる山の湖 仙翁
蓮開きし纏うな疎ましき明日は 吾郎
〇(藤三彩)鎌倉鶴岡八幡宮の源氏池と平泉毛越寺の池の蓮の実を一緒の鉢に播いたら喧嘩したみたいで発芽しなかった疎ましき過去は。回文愉快
○(泉)見事な回文俳句だと思います。
○(餡子)蓮は浄土。高潔にして清廉。蓮のようにはなかなか生きられません。
◯(道人)夜明け頃蓮が開いた。昨日まで色々疎ましいことがあったが明日は一切を忘れよう。蓮の花を見た感慨。
○(宙虫)蓮の花は午後にはこわれる。いらぬものは持ち越さない。
◯ (アゼリア) 前向きでいいと思いました。
☆次回をお楽しみに。
最近の広島は、大変な暑さで、少々バテ気味です。しかし、七月もあと一週間になりました。八月、九月と早いでしょう。無理をしないで日々生活です。