こんばんは。
1年参加いただきありがとうございました。来る年が皆さんに公平に幸せだなと思える年になりますように。
兼題:冬
残像はパエリア冬の旧市街 宙虫
◎(吾郎)あったかい食事を思い出しながらの帰路か、心の中のパエリアの極彩色がモノトーンの街と対比された秀句。
やり過ごす冬将軍に抗わず 藤三彩
一刀に冬至南瓜を両断す 幹夫
冬麗ら七千萬票それでよか 瞳人
○(泉)ともかくも、トランプ氏は七千萬票を獲得しました。これは重い現実です。
冬夕焼今日は夫が料理番 泉
○(幹夫)季語「冬夕焼」が適っていると思いました。
(選外)(藤三彩)「きょうの料理」どおりには妻はつくらない
おひとりさま限定メニュー冬ざるる 楊子
○(餡子)何とも侘しいですけれど、コロナ禍の中では、却って安心!
へび笛の小さく冬日を巻き戻る アネモネ
〇(珠子)あれは「へび笛」というのですか。「冬日を巻き戻る」が素敵。
◎(メイ)時間を逆行するような、不安な感覚がいいなと思いました。
〇(宙虫)懐かしい。こんな冬日を誰しも持っていた。
◎(まきえっと)冬日を巻き戻るがいいですね。
月光の突き刺さりたる冬の湖 仙翁
〇(珠子)凍てつく月光には凄みがあります。「突き刺さる」に納得です。
◎(泉)いかにも寒い、という感じです。光景が目に浮かびますね。
◎ (アゼリア) 草田男の冬の水一枝の影も欺かずを思わせるような張りつめた緊張感を感じさせる句と思いました。
○(敏)「突き刺さりたる」の措辞から、寒々とした湖面が浮かんできました。
◎ (多実生) 湖面に映る月、波に壊れる月光を見事に描写。
冬蝶のおのれの影に来てとまる 敏
〇(楊子)自省のようなものを感じました。仕方なさのようなものも。
◎(珠子)このシンプルさの揺るぎない安定感。観察眼が鋭い。
〇(仙翁)自分自身の影に止まるとは、面白い表現ですね。
〇(ちせい)神秘的な感じがしました。
苦しいよ抱く冬服だ良いシルク 吾郎
◎(餡子)そんなに強く抱きしめないで。抱かれて息のつまりしこと・・と詠んだのは、橋本多佳子だったかしら?
第三の人生めきぬ玄き冬 卯平
性別に男女と「その他」冬牡丹 メイ
〇(楊子)ここでは冬牡丹という季語の斡旋がどうかが問われるでしょう。是としていただきました。
○(卯平)ジェンダーは徐々に浸透している。冬牡丹の鮮やかさで詠み手のメッセージ。
○(あちゃこ)その他をどう理解したらよいか迷いましたが、妖しさに惹かれました。
(選外)(道人)LGBTQ+を句材に取り上げたチャレンジ精神がいいですね。
積み上げし漫画崩れて冬籠 ルカ
◯(アネモネ)いやあ、ご同輩!
○(幹夫)季語「冬夕焼」が適っていると思いました。
△(卯平)今流行の漫画ではなく、以前からの漫画本を何回も読んで冬を籠もっている詠み手。若人だから出来る事。少々理が先行するかも。
脈のごと泡が一粒池の冬 めたもん
冬と言う手強い敵とわが齢 多実生
〇(藤三彩)積雪のある地方は本当に冬に身構える。早く春が来て欲しいと思う
星磨く冬木の梢わらべ唄 珠子
◯ (アゼリア) メルヘンチックで楽しい句と思いました 。
◎(敏)冬木の揺れに見え隠れしている星々にリズミカルなわらべ唄を感じ取ったのでしょう。「星磨く」が秀逸。
〇(めたもん)梢が星空を背に揺れている景でしょうか。下五により句に温かみも。助詞を省いた「星磨く」は調べがよく下五と響き合うので選ばれたのだ思います。
○(あちゃこ)わらべ唄への転換は私には無い感性。絵本の世界のよう。
〇(まきえっと)「星磨く」という表現がいいですね。
冬桜空に響けるホイッスル 道人
〇 (多実生) ラグビーでしょうか?若い人の試合を支配するホイッスルの響きです。
この川を渡れば寡黙な冬の村 餡子
◎(めたもん)冬の村は寡黙で他を寄せ付けないものの象徴か。「川」に隔てられ寡黙さは一層際立ちます。中七の字余りに川を渡るか否かのためらいを感ます。
◎(ちせい)静寂が包む村の雰囲気に句心を感じました。
〇(まきえっと)雪に覆われた村が目に浮かびます。
冬の夜にアルバム二冊の心理かな ちせい
冬日差す父の遺品の家族写真 アゼリア
喝采の海に波立つ冬の指 あちゃこ
◯ (アゼリア) 音楽会のアンコールの高揚感思い出しました。早く安心して音楽会に行けるようになるといいですね。
口笛を吸い込んでゆく冬北斗 まきえっと
○(吾郎)寒さを一際感じる一句
〇(仙翁)口笛が吸い込まれるような感覚、ありそうですね。
◯(道人)坂本九の「上を向いて歩こう」には冬の場面がない。この句で補完できそう。「悲しみは口笛を星座に向かって」
○(メイ)口笛を吹いている人も吸い込まれそう。
〇(宙虫)澄み切った夜に包まれる。
テーマ:楽しみ
サンタクロース小児病棟へと駆ける メイ
〇(珠子)クリスマスと小児病棟の句は多いですが、この「駆ける」にはやられました。
○(泉)病気の子供たちは寂しいですね。サンタクロースの来訪に大喜びです。
◯(道人)入院中の子供たちの朝起きた時の顏が見えるようです。
「はやぶさ2」の次の行く先冬銀河 餡子
◯ (アゼリア) 私もはやぶさ2で作りたいと思いましたが出来ませんでした。
〇 (多実生) 新型コロナのこんな年でも朗報でした。更に夢を広げて呉れます。
イブの国今牛旨い肉の部位 吾郎
○(幹夫)回文上手い!
○(泉)見事な回文だと思います。
〇(藤三彩)クリスマスには七面鳥ではあるがサーロインステーキも素敵
双六のようやく江戸をでたところ まきえっと
◯(アネモネ)あらあら、なに道草食ってんですか?
〇(楊子)おもしろい詠みです。東海道五十三次の双六、いいなあ。
◎(ルカ)何ともユーモラスでほっこりします。
○(幹夫)一寸先取り季語ですが、お正月の楽しい双六がリズム佳く詠まれている。
〇(珠子)この飄々と肩の力を抜いた雰囲気はとても魅力的です。ひらがなが効いています。
○(餡子)五十三次双六ですね。お江戸日本橋がスタート。これから京都まで、先は長いですね。何があるやら・・・。
○(吾郎)始めたばかりか、進んだり戻ったりの珍道中か
○(敏)東海道五十三次双六で、日本橋を振り出し、品川宿を過ぎようとしているところなのでしょうね。上がりまであと五十一宿?。
〇(めたもん)双六遊びの楽しい景。「江戸」という地名により、双六ゲームを超えて現実世界や時の流れとリンクしているところが巧で、魅力だと思いす。
〇(宙虫)あがりはどこになるんだろうか?東海道五十三次すごろくか?
〇(ちせい)箱根や伊豆はいまだしといったところでしょうか。
△(卯平)他の人はとっくに東海道を下っているのに詠み手だけはまだ江戸を抜けた処。これから追いつくぞと言う詠み手の気持ち。気になるのは「双六の」。「の」がキレとして弱いのでは。「双六や」と強いキレで中七下五の措辞を明確にしたらどうだろうか。
フラメンコを踊ってあげる冬林檎 宙虫
○(吾郎)リンゴの赤と相まっていい感じ。
〇(仙翁)フラメンコを踊ってあげる、どんな状況でしょうね。
○(敏)季節ハズレの林檎ちゃんに、「(私も)冬に似合わないフラメンコを踊ってあげましょう」といった優しい作品。
〇(めたもん)下五の「冬林檎」が効いて、ゾクッとするような色気が。口語的で挑発的な中七の表現もゾクッを盛り上げていますね。
△(卯平)踊るのはボサノバではなくフラメンコ。誰に見せるのか。どことなく艶っぽい。冬林檎では上五中七を膨らますには弱いような気がする。
楽しみは風呂に蜜柑を浮かべつつ ちせい
(選外)(藤三彩)ユズ湯ではなくて蜜柑そのもの。乾かした蜜柑の皮を布に入れて使っていた昔日
寒波来る蒸籠に並ぶ中華饅 アゼリア
◯(アネモネ)美味しそう!
○(メイ)寒波には中華饅。子どもの頃、中華街で買う中華饅が楽しみでした。
極月の扉の固きミニシアター ルカ
〇(楊子)何となく理由なく納得の扉の固さです。有名ではないが個性的な映画が放映されています。
○(卯平)ミニシアターだから成り立つ。
極月や卒寿祝いのらくらくホン 道人
〇(瞳人)これとて、使いこなせそうになさそうな
枯葉舞ふ夫と腕組み夢のなか 瞳人
幸せは冬の湯槽に浸かるとき 幹夫
(選外)(藤三彩)十二月は冬至、冬至湯(柚子湯)は「一陽来復」にならって風流なのかな
指折れば増える楽しみポインセチア めたもん
◯(ルカ)数えれば、増える。なるほどです。
◯(道人)「もういくつ寝るとお正月♪」は古いのでしょうが、ウィズコロナの世、七並べ・猪鹿蝶・双六・百人一首等々復活してもいいですね。
小道具の鬘かぶりて年忘れ アネモネ
聖夜の灯一期一会をマスクして 珠子
◯(アネモネ)それは切ない!
双六やお手つき二回続きをり 卯平
待春をこころに酒を交わしけり 敏
〇(瞳人)寒い時の温みもいいけど、やはり春恋しですね
〇(藤三彩)リモート乾杯をやらないんですか?と、やる相手も技能もないからね
〇 (多実生) 変な年はご破算にして、希望を繋ぎましょう。
〇(ちせい)ふと芭蕉の句も思い浮かびましたが、あまり気にならずシンプルないい句かと。
(選外)(道人)かくありたいものです。昨今のコロナ状況では叶いそうもありません。
沢庵とむすびの昼餉海の釣 泉
◯ (アゼリア) 沢庵とむすびで充分。幸せな気持ちが伝わってきます。
○(メイ)海を見ながらの昼餉、釣れなくても楽しそう。
着膨れてテレビ観戦する至福 多実生
年酒汲む句会の皆に会いたいな 藤三彩
◯(ルカ)本音です。共感。
白昼夢ピタゴラスイッチから雪 あちゃこ
百均をひとめぐりして年用意 楊子
◯(アネモネ)そろそろわたしも。
○(泉)質素でも正月は楽しいものです。
○(餡子)ダイソーが百均の元祖でしょうか?始めて行ったときの感動を覚えています。今は更に進化して本当に、一巡りで 何もかも揃いそうです。
○(卯平)百均は今や生活の同心円。此処がなくては生活が成り立たない。百均とコンビ二は地域のインフラ。
〇(ちせい)年の瀬の慌ただしさが伝わって来ます。
野の鳥の屈託なきや寒椿 仙翁
雑詠
数へ日のメモの余白に書く予定 まきえっと
マスクして帽子・ジーパン若返る 多実生
〇(瞳人)ジーパンはける人は、羨ましいなあ
寒波来る締切り迫る雨が降る 道人
○(泉)何だか圧倒された俳句でした。
軽く嘘スキーヤーキスそう来るか 吾郎
〇(仙翁)ありそうな情景で、きれいな回文ですね。
〇(めたもん)こんな場面に出くわしたら「軽く嘘」がいいのでしょうね。
◯(道人)少しヤンキーなスキーヤーですね。頭が柔らかくなり死語まで思い出しました。
〇(宙虫)広瀬香美が出てきそうだ!ぜっこーちょー⤴♪ふたりの恋♪
〇(まきえっと)原田知世さんの「私をスキーに連れてって」を思い出しました。
狐火や都会の人は墓を捨て 泉
◎(アネモネ)心にずしんと来ました。耳が痛いです。
◯ (アゼリア) 私も最近都会の葬式に行って、時節柄もあるかと思いますがあまり簡略化され驚きました。地方の寺では次々に都会の永代墓に移る檀徒が出困っているようです。
◎(道人)身につまされる思いでいただきました。まだ捨てきれていませんが。
◎(宙虫)行き場をなくした魂だろうか?リアルな一句。
荒れし手を祈る形に冬北斗 アゼリア
○(仙翁)荒れし手、しみじみとしたものを感じます。
行く人の歌聴きくれて年の夜 瞳人
○(あちゃこ)今年も多くの人との別れがありました。除夜も近づくとやはり寂しさを感じます。
〇(宙虫)紅白?ジャニーズカウントダウン?いまやネットでも、年の夜は音楽があふれている。
黒皮の三年日記を買ひにけり 幹夫
〇(藤三彩)松本清張『黒革の手帳』三年先は何が起こるかミステリー
冴ゆる夜のささやくやうなくちげんか メイ
○(吾郎)平仮名表記のやはらかさ。
〇 (多実生) ささやく様なで救われます
マッチの火覗くひとりは雪女 珠子
〇(楊子)何となく理由なく納得の扉の固さです。有名ではないが個性的な映画が放映されています。
◎(瞳人)マッチ売りの少女、じゃあなくて、もっと戦後の下世話な話をおもってしまうけど、さてな
○(吾郎)いや、溶けるってあなた。
◎(仙翁)どんな状況でしょうかね、雪女とは。面白い。
〇(めたもん)雪山での遭難。最後の一本のマッチ。誰も雪女に気づいていない。でも句にはどこか余裕がありユーモラス。やはり遭難の場面ではないかもです。
◯(道人)雪女の存在感が中々です。
○(あちゃこ)無さそうで有りそう⁈凍てつく夜の怪談。
〇(まきえっと)ちょっと怖いけれど、発想が面白いです。
子規庵を出て歳晩のホテル街 アネモネ
◯(ルカ)子規庵は、まさしくそうですね。
○(餡子)ふふふふ・・・・。初めは、面食らいましたね。あそこ・・・!
〇(藤三彩)連れ込み宿などの淫靡な下町の景観。今年も多くのものを失い暮れてゆく
スパニッシュオムレツ取り分け滝が凍る夜 宙虫
初霜やココアを含み潔癖性 あちゃこ
想定の範囲拡ぐる師走かな 卯平
〇(瞳人)高齢者には想定どころか、未知なる恐怖でしょう
〇 (多実生) 想定外の新型コロナ、ワクチンに起死回生を託すのみです。
〇(ちせい)忙しさだけではない側面が極月にはあるのかもしれません。
大嚏入れ歯飛び出すバンクシー 藤三彩
○(卯平)バンクシーが日本にこっそり来てこの絵残して欲しい。飛び出した入れ歯が宙に浮いているのは傑作だ。
フェリーニの映画見にゆく冬青空 ルカ
◎(卯平)映画「道」。何回も観た。冬青空の季語にこの映画丸ごとへの思い。強い共感を覚える。
◎(藤三彩)フェデリコ・フェリーニ監督生誕百年祭の情報。「甘い生活」や「道」を明日観に行こう。
天上のロックの響き冬の雷 仙翁
◯(ルカ)季語冬の雷が新しい響き。
〇(珠子)虎の皮のパンツ一枚の裸の天上ロック。雷太鼓を叩きまくる。
○(敏)雷神を擬人化してみたのでしょうね。
電車ドアぷしゅと息する師走かな めたもん
◎(楊子)年の暮れの電車の溜息のようでもあります。
○(幹夫)季語「師走」が案外適っていると思いました。
○(あちゃこ)ドアの開閉音に心を寄せた感性に惹かれます。中七がいい。
○(メイ)ぷしゅの音は電車の息なんですね。
〇(まきえっと)実感
肉団子鍋の豆腐のすくひ網 ちせい
○(幹夫)行き届く観察に感心しました。
日めくりは昨日の日付年の暮 楊子
◯(ルカ)年の暮の忙しさが上手く表現されてます。
○(餡子)余りに、忙しい人なのか。余りに無頓着な人なのか。余りに日付も分からなくなってきている人なのか。
○(卯平)忙しかったのか。それだけではないだろう。この年の終焉への詠み手の思い。
落書の路面電車に乗る落葉 敏
力石転がる村社冬ざるる 餡子
○(敏)私の近所の古い神社でも、「二貫」「三貫」と刻まれて奉納された丸形の力石をよく見かけたものです。持ち上げようとしても、全く手に負えませんでした。冬ざれの古社の景が浮かんできました。
◎(あちゃこ)ちっぽけな社に転がる力石。心まで荒れ果てていくような光景が浮かびます。
○(メイ)無造作に力石を転がしている村社、見過ごしそうな地味な冬の光景に惹かれます。
次回をお楽しみに。
広島もいよいよ冬らしくなって来ました。しかし、雪国とは違いますから、寒いとは言えません。広島は新型コロナの感染拡大が顕著です。理由は不明ですが、経済も大切ですからね。人生いろいろあるものだ、と改めて思います。
皆さんへ ご自愛の上佳い年をお迎えください。
「力石転がる村社冬ざるる(餡子)」を拝見しました。この作品の拙著への掲載許可および吟詠地を御教示いただきたいのですが餡子様の連絡先を御教示頂けるようお願い致します。takashim@za.ztv.ne.jp