つづき
春の海石牟礼道子全詩集 ちせい
○(瞳人)この人、俳句もやっていて、かにのあわふく、ようなものだと言っていたかなあ。
〇(あき子)。石牟礼道子の存在が「全詩集」に込められている。「悉く全集にあり衣被 田中裕明」を思いださせる句。
〇(珠子)水俣の海は凪いでいるのでしょう。「私は社会運動家ではなく、詩人であり作家です。」とおっしゃっていたとウィキペディア情報。
◯(ルカ)季語が逆に切ない。
(選外)(アダー女)季語と固有名詞だけの大胆な句なのに雰囲気が伝わってきます。ただ、読んでみたいと思いつつ読んでいない「苦海浄土」などを思うと春の海はまったり穏やか過ぎるのでは?
(選外)(卯平)「石牟礼道子全詩集」だろう。この春の海と石牟礼の関係は不明。石牟礼詩集の絶対性が伝わらない。
夏の空駆ける無人の観光船 ルカ
海面を剥がしゆく船夏近し まきえっと
〇(楊子)「剥がしゆく」にドキッとしました。その気持ちが「夏近し」にふさわしい。
〇(春生)中七がうまいです。
〇(仙翁)海面を剥す、面白い表現ですね。
○(敏)上五中七の表現に目を瞠りました
○(アダー女)「剥がしゆく」の表現に力強い夏への期待が感じられます。
◯(道人)写真の二船の爽快な動きと波の飛沫や長い水脈は、正しく海を剥がしているような気分。もうすぐ夏だ!
◯(ルカ)ドラマがあります。
春の海景色の見えぬ高速船 泉
春荒や船霊祀る機関室 餡子
◎(アネモネ)「船霊祀る機関室」に得心です。
○(あちゃこ)大波に揺れる船内を想像させる。漁師の願いは無事帰港。
〇(珠子)命を懸ける海の仕事。気象情報と経験から来る勘、そしてやはり神様と仏様。
◯ (アゼリア) こういう何かを畏れる気持ちがあれば、知床の事故は防げたのではと残念に思います。
◎(ちせい)船長の亡霊だったのかもしれません。
夏潮の凪ぎて出庫を待つ湾処 敏
クルーズでくぐる大橋春の空 めたもん
○(敏)大きな風景が自然に描かれていますね。
波が死を数える漁港花蜜柑 宙虫
○(卯平)上五中七には詠み手のなりわいから来る実感を感じる。その深刻な景に対する花蜜柑の思い切った断絶で上五中七の措辞がより生きてこよう。この漁港を見下ろす島の蜜柑畑の景も見えてくる。安心して鑑賞出来る句。特選を迷った句。
〇(楊子)金子みすゞの詩を想い出しました。花蜜柑で救われました。
◎(めたもん)上五・中七が心模様と時の流れを表現して巧み。白く小さい「花蜜柑」もよく合う。
◯(道人)海には人知を超える怖さかある。人災も自然災害も寄せる波だけが真相を知っているような。「花蜜柑」が優しくて救われる。
黄昏の春岸壁の波の影 仙翁
沖うらら渚に今という時間 道人
◯(アネモネ)「渚に今という時間」。いいですねえ。
○(泉)私たちには「今」という時間しかありません。生きているのは「今」だけです。
〇(まきえっと)「今という時間」がいいですね。
(選外)(卯平)「今という時間」をどう鑑賞するか。わかるようなわからないような措辞。しかし、渚がその場所であるとするなら納得する。沖うららは安易ではあるが。「さざなみ・・・・」と競合して選を迷う。
恋はいま真夏の海になるところ 楊子
○(あちゃこ)意味深過ぎて、楽しくなっちゃいました。真夏の海とは無縁になりましたが。
○(餡子)夏に生まれた恋は長続きしません。お気を付け下さい。
〇(春生)こんな時代もありました。
◎(敏)ダイレクトに「恋」を出した「ところ」を色々考えて楽しみました。
〇(宙虫)真夏だからねー。ぼろぼろにならないことを願う。
さざなみは薄皮のごと島立夏 あき子
◯(アネモネ)比喩にびっくりです笑。
○(卯平)最後まで選を迷う。上五中七はなるほどと思うものの必ずしも発見した景まで断定出来てない。島が「嶼」であればさざなみは生きるかも知れない。しかし「島立夏」の景も捨てがたい。
○(ちせい)そう言われて見ればと思いました。
〇(宙虫)ちょっと剥がすだけで海の本性が見えるかも。
(選外)(道人)「薄皮のごと」の比喩が佳い。
遠霞空爆見たと潮ささめく 珠子
◎(アダー女)海は地球上くまなく繋がっているんですよね。北の戦を見た海の水が巡り巡って九州の海で「見たぞ!見たぞ!」と波仲間にひそひそとささやき合っている擬人化が見事です。
〇(宙虫)世界の悲劇が波となって届いている。
黄金週間昼をしづかに倉庫街 アネモネ
○(泉)黄金週間といっても、賑やかなのは観光地だけです。
〇(まきえっと)平日はにぎわっているのでしょう。「黄金週間」が生きています。
○(敏)倉庫街の静かなたたずまいがごく自然に捉えられていますね。
〇(あき子)簡素な風景を「昼をしづかに」が、豊かな時間に変えている。
大三角うるむを待てり春の浜 アダー女
◯(アネモネ)帰心横溢。そんな時間持ちたいと思いました。
◯ (アゼリア) 星に発想を飛ばして波音を聞きながら星を眺めたらー想像しただけで楽しくなります。
(選外)(卯平)普通に読めば大三角が潤んでくるのを待っている春の浜の景だろう。上五で一つ。中七で一つ。下五で一つとブツブツ感があるのでは。
青あらし凪と限らぬ遊覧船 藤三彩
○(瞳人)そんなこと十分、承知と思っていたけど、そうじゃないのもいるのが、こわいなあ
倉庫裏荷台に男三尺寝 アゼリア
◯(アネモネ)上手い。なかなかの「三尺寝」です。
○(あちゃこ)昭和の香りのする一句。倉庫裏に視点を置くとは。こんな男もいましたね。
○(餡子)長距離トラックで着いたのでしょう。荷を下ろし、少し仮眠してまた長距離を戻るのでしょう。映画の一齣。
〇(まきえっと)気持ちよさそうです。
〇(仙翁)三尺寝、疲れているのでしょうね。
○(アダー女)畳職人などが仕事の休憩に体を丸めて仮眠する姿が三尺寝というのが普通なのでしょうが、荷役の男たちも重労働。荷物を運び終え、倉庫裏の荷台で三尺寝していたっておかしくないですよね。これも特選にしたいところです。
〇(藤三彩)三尺寝でとりました
◯(道人)荷役作業者の泥臭さ。「三尺寝」がピッタリ。
(選外)(卯平)倉庫裏と荷台何方かに絞った方が詩になるのでは。このままでは報告の範囲を出ていないのでは。
知床の海はつらかろ夏来るも 瞳人
〇(あき子)「つらかろ夏来るも」と言うほかないです。
◎(珠子)乗客・乗員の最期の状況を想像すると本当に辛い。幸せな生活をしていた方々ばかりが乗っていたと思うのです。
〇(藤三彩)守銭奴らし社長さんは許せない 沈没船の引き上げに税金を投入すると論議に・・
うららかや富士の山見て海を見て 春生
○(ちせい)晴れ晴れとした気分が伝わって来ます。
◎(ルカ)富士市あたりの海岸線から見る風景は、まさしくこんな感じです。
今月の写真
広島市の元宇品の景色。目の前に江田島や宮島など瀬戸内の島々。すぐそばの広島港からは松山をはじめとしたフェリーが出ている。
では、次回告知までお待ちください。
今回の写真は元宇品でしたか。広島市も広いので、元宇品は私の家から、かなり遠い位置になります。
さて、広島も次第に梅雨が近い様子になって来ました。今のところ広島カープが善戦しているので、今年は期待しています。