小麦句会 on blog

俳句「麦の会」の句会のひとつです。 ネット句会を月二回行っています。 この句会は誰でも参加できます。

第476回小麦句会結果発表1

2022年05月09日 19時12分49秒 | 1日句会

ゴールデンウィークも終わり。

どことなく人が出かけている景色を見るとほっとする。

この反動がまた心配なのは心配だけれど。

ウクライナ、観光船沈没・・・・。

沖縄では早くも梅雨入り・・・・。

いままでの初夏の気分とは違う日常が過ぎていきますね。

★結果発表・・・・二回に分けて発表します。

 

閑古鳥去ってくれよとホテル街   泉

 

嘘ついて歩き疲るる卯月かな    卯平

 

海の向こうのどこかに戦春四番  楊子

 

晩春の浜に詩入りの小瓶埋め   ちせい

○(瞳人)どこにとどけと、おもうやら、そんな頼みしかできないのが、現実だなあ

○(餡子)埋めた小瓶はいつか波に攫われて、海を漂い、異国の誰かに拾われるのでしょうか。どんな詩でしょう。ロマンティック。   

◎(道人)昔昔、瓶に手紙を入れて川に流し、受け取るであろう海の向こうの見知らぬ人の姿を思い浮かべたものだ。この句の詩を浜に埋める発想はそんな軟なロマンではない。

 

洋館に海風強し紫羅欄花    春生

〇(めたもん)紫羅欄花が季語にあるんですね。エキゾチックな雰囲気がいい感じです。    

 

歩を合わす浜辺の二人夏の海   ルカ

○(餡子)写真では、決して若くないお二人のようです。お互いに労っての散歩でしょうか。これから船旅?ゆったりとした時間が流れている句。   

〇(楊子)ゆったりとした幸せな老後を詠んできれいです。

〇(春生)雰囲気があり、情景が良く見えます。      

○(敏)登場人物のふたりが輝いています。

◯ (アゼリア) 長い間連れ添ったご夫婦とも父と娘さんとも見えますが、二人の間に優しい時間が流れているように見えます。それを歩を合わすと表現されているところが上手だと思いました。

〇(宙虫)時間の流れがいろいろ二人の関係を想像させます。

 

風薫る定年したと夫婦旅   藤三彩

○(泉)定年した後が、また問題でしょうね。悠々自適といけば良いのですが。

 

水脈を曳く流浪の果ての春の海   仙翁

〇(めたもん)上五「水脈を曳く」と中七「流浪の果て」から人生を思い起こす姿が浮かびます。

◎(あちゃこ)中七が何を表しているかは判然としませんが、難民を乗せた船と解釈しました。春の海が救い。

○(アダー女)海にはあちこちの水脈から水が集まる。水が流浪して海に流れこんだのと自分が流浪の果てに春の海にたどり着いたのが上手くマッチ。

◎ (アゼリア) 若山牧水を思い浮かべました。故郷の近くの海に心が安らいたのかなと想像しました。

 

海へ向く倉庫の扉春の雲   まきえっと

◯(アネモネ)的確な把握だと思いました。

〇(楊子)積み荷のために海に向いているのは当然ですが、何が入っているのだろうという不思議さも感じます。ふんわりと春の雲ですくわれています。

〇(春生)いよいよ、世界に向かって出航ですね。     

〇(仙翁)見たままですが、いろいろ景色が見えます。

○(あちゃこ)景そのものだが、扉が新たなスタートを予感させる。

○(敏)穏やかな時間が流れています。

〇(珠子)貨物船と直結の扉。春の雲がのんびり浮いています。   

◯(ルカ)上五で景が広がりました。

〇(宙虫)扉に視点を持って行ったのが上手。

 

島たちがあわい薄暑のランニングシューズ   宙虫

〇(めたもん)「ランニング」ではなく「シューズ」としたところにリアリティーがありますね。

 

抱卵期島嶼巡りの船が発つ   アネモネ

○(卯平)「島嶼」と「抱卵期」の関係をどう読み解くか。少々緩いとは感じるが違和感はない。詠み手の技法が露呈している。

◎(あき子)「抱卵期」の命の営みと、大小の島々を巡る船の営みが、句の調べを伴って響き合っている。

〇(珠子)「島嶼」という言葉に初めて出会いました。荒れることの少ない海なのでしょうが、私たちは安全を信じて乗船するのです。抱卵期という季語が唐突でもあり意味深くもあり。 

〇(藤三彩)アホウドリとか産卵を助ける島があるのだろう

◎(宙虫)命のまつわる様々なことを大きな海の景で考えさせられる。

 

もう帰れ五月は林檎の花のころ    瞳人 

◎(卯平)父から吾子への呼びかけか。少なくとも南の地方ではない。林檎の花がここでは動かない。上五の呼びかけが詩へと導いている。今回の句会で一番好きな句。

〇(珠子)娘や息子の年齢、親の年齢によって「もう帰れ」の意味が違ってきますが、「林檎の花のころ」という言葉はしみじみ入ってきます。子を案じる(多分)親の気持ちが切ない。     

 

食い違う記憶あの日の春岬   餡子

○「岬巡り」の歌を思い出す。鑑賞者の青春。失恋はこうして段々と違和感なく思い出になる。

○(瞳人)岬のホテルぅーという、深夜便のよい唄を想い出しました。

〇(まきえっと)記憶は時に都合がよくなることってありますよね。

◎(楊子)あの日の春岬からずっといい関係だったはずなのに…という不満も感じますが、まあそれでも過去は過去という感じかな。

〇(仙翁)どんな記憶違いでしょうね。

〇(めたもん)誰と誰の記憶が食い違うのか。又は自分の中で違うのか。想像が広がります。

◯(道人)夫婦であろうか。大事な旅の記憶でも、人にはそれぞれ記憶の型があるように思う。大したトラブルにはならないだろうが、一生涯内在する二人の記憶違いが一寸したドラマ仕立てになっていて面白い。

○(ちせい)二人で答え合わせをしているのかもしれません。

 

行く春へ抛りし虚貝一つ   道

〇(めたもん)「抛」「虚」「一つ」からどこか投げやりで鬱積した晩春の気分が伝わってきます。   

○(アダー女)解釈が難しいけど惜春の思いの中、貝殻一つ虚ろな気分を海に投げたような・・・何となく気分や情景がわかるような・・・

 

(選外)(卯平)「抛る」は虚の世界。だから「虚貝」も「行く春」も同心円の世界。「抛る」は大切にしたい。

 

若葉光葉擦れの音の整わず  珠子

〇(まきえっと)季節の変わり目のぎくしゃくとした感じが「葉擦れ」から感じ取れます。

〇(仙翁)若葉光、葉擦れ、葉の重なりが面白い。

 

修道女と乗り合す船風薫る   アゼリア

○(卯平)長崎の景そのもの。先日も長崎を旅した時同じ風景に出くわした。長崎は島が多い。その島には教会が。世界遺産の景。

◎(瞳人)寅ならなんと挨拶するのかなあ、やつは話の糸口つけるの、うまいけど全50作? のなかに修道女は出てこなかったなあ。

◎(餡子)長崎とか函館辺りで見られる景でしょうか。さわやかな風がこの句を読んでいるこちらにも吹いてくるような気がします。   

〇(楊子)九州の西の海辺にはいくつか教会があります。その地では自然な光景としていい描写です。

◎(藤三彩)寅さんの映画にありそうな風景、神父役は櫻井センリだった。

○(ちせい)修道女と分かると言う事はあの独特の修道女服を着ていたのかもしれません。

 

花は葉に浜辺の歌に黄昏るる   あちゃこ

〇(あき子)調和のとれた美しい世界から、避けられない淋しさがただよう。

◯ (アゼリア) 浜辺の歌に黄昏るるという措辞に惹かれました。

 

みやげ売る家族一丸こどもの日    あき子

◎(泉)商魂たくましい。子供も手伝う「子供の日」ですね。

○(餡子)ありますあります。観光地は規制が取り払われて、どこも賑やかな様子。お土産屋さんの並ぶ通りの様子が目に浮かびます。 

◎(まきえっと)「家族一丸」がいいですね。

〇(春生)観光地の様子がうまく捉えられました。      

 

出港に振らぬ手の訳かすみ草    めたもん

○(泉)別れの場面でしょう。いろいろな感情が交錯します。

◎(仙翁)どんな訳があるのでしょうね。

〇(藤三彩)訳はなんでしょう

○(ちせい)秘密の共有は難しいのかもしれません。

 

遠景に源平の海青葉風    あちゃこ

◯(道人)写真の遠景は夏霞。壇ノ浦も近いのかも。近景は青葉風が心地よい長閑な平和な浜。今昔・栄枯盛衰・戦争と平和・等々の対比。

◯ (アゼリア) 鎌倉殿もまもなく佳境に入りますね。タイムリーで素敵な句ですね。

◯ (ルカ)瀬戸内海、又は関門海峡でしょうか。過ぎ去りし戦いの日を思い浮かべます。

 

春の海明るき未来語りたし   アダー女

○(泉)全くその通りです。暗い世の中でも、未来は明るいと信じたい。

◎(春生)戦争のことばかりでは、滅入ってしまいます。   

〇(藤三彩)可哀想な報道ばかり、未来志向でありたい

◯(ルカ)本当はそうありたい。

 

航跡を乱す僚船夏怒濤    敏

〇(あき子)写生でありつつ、僚船の「夏怒涛」の世界にまで作品化されている力作。

 

モールスは感度良好皐月波    卯平

○(あちゃこ)正しくは、モールス信号。モールスは人名?中七が効いた明るい一句。

○(瞳人)携帯は圏外、無線機は故障なんて、モールスでやれ、モールスで。むかしは、皆、真剣だったんだよ。

○(アダー女)どうしても知床の事故を想起してしまいます。モールス信号の感度も良し!この船長の船なら荒い五月波にも準備万端という感じ。

 

(選外)(道人)知床の観光船沈没人災事故に対する風刺句として読んだ。

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 



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