(その1からの続き)
満潮は二時と小春の潮見表 アネモネ
〇(珠子)私も潮の満ち引きが気になって調べましたが俳句にはなりませんでした。「小春の潮見表」がいい。
〇 (多実生) 海なし県に育ち、塩見表の存在を初めて知りました。
◎(メイ)リズムが軽快で、声に出して詠むと嬉しくなります。
○(幹夫)季語「小春」との取り合わせがいい塩梅ですね。
○(敏)私は釣りに行くときによく潮見表を気にしましたが、フェリーの運行に関しては安全操舵の点で必要なのでしょうね。あの窓口の写真に写っていたのでしょうか、気が付きませんでした。
○(餡子)潮見表・・・始めて知りました。毎日わかるんですね。
〇(宙虫)釣好きにはたまらない「潮見表」。案外夜中の二時かも。
(選外)(道人)干満差が大きい港なのでしょう。写真の時刻を「潮見表」に語らせて面白い。
冬雲はサヨナラの色島育ち あちゃこ
〇(珠子)中七の思い切った独断が魅力的。私には下五が少し落ち着きませんが。
○(メイ)映画のようですね。「サヨナラの色」に青春追慕の念が刺激されます。
○(餡子)ちょっと演歌っぽいけど良い雰囲気です。
寒雷や銀のオブジェの建つ埠頭 幹夫
○(まきえっと)落雷しないですよね?
○(あちゃこ)寒雷と銀のオブジェが響きあっています。
○(アネモネ)「銀のオブジェ」いいですね。
◯(道人)寒雷と銀のオブジェの取合せがいい。詩情豊か。
○(卯平)そのままの句。
◯(ルカ)うまくまとまってます。
(選外)(ちせい)埠頭の似合う人が傍らにいたのかもしれません。
冬麗ら桑港(シスコ)に遺るマーメイド 瞳人
〇(仙翁)サンフランシスコまで発想されるとは、面白い。
(選外)(卯平)サンフランシスコだけではなく日本にもマーメイドは遺る。
思うのは大陸の空牡蠣を割る 泉
○(メイ)何か思うところがありつつも、黙々と牡蠣を割っているのでしょうか。
天草の砥石身の透く河豚の盛り 藤三彩
○(泉)天然砥石・天草砥石は有名なんですね。初めて知りました。
(選外)(道人)天草砥石は中砥の中では日本一とか。さぞ河豚刺しも旨いことでしょう。
舟券を失したる淑女神の旅 卯平
フェリーの名はかもめ冬の桟橋に 敏
出稼ぎや揺られて帰る波の花 泉
◎ (多実生) 波の花は画面でしか知りませんが揺られて帰るに共感です。
○(メイ)淡々とした描写の中に、故郷へ帰る心情が伝わってきます。
◎(餡子)出稼ぎという言葉も、過去の物でしょうか?島へと帰るお父さん。家には、子供達が、いえ奥様が首を長くして待っていることでしょう。お土産をいっぱい担いで・・・。昭和の想い出の一コマ。
山眠る灰色の雲に機影あり ちせい
○(敏)山を被うようにどんよりと垂れ込めた雲の中を行く飛行機が見えるようです。
赤紙の船が横切る冬銀河 宙虫
◎(あちゃこ)桟橋の写真から、冬銀河へ。あの時代、島々へ赤紙を運ぶ船が確かに存在したのですね。
◎(敏)「赤紙の船」の像を、はっきりとは結べませんでした。赤紙からは召集令状しか思いつきませんので、それを使って折った紙舟が銀河を渡って行った、12月8日をひかえた夢の中の一句と読んでみました。
〇(めたもん)上五「赤紙の船」が様々な想像を誘います。召集令状→戦争→兵士→出征→見送り・・・。それにまつわる「赤い」思いを載せた船が冬銀河を横切っていきます。
○(卯平)戦争時船は水上棺桶だった。だから冬銀河。
マフラーを編みつ島へのフェリー待つ アネモネ
〇 (多実生) 身近に編み物好きがいますので良く判ります。
○(幹夫)過疎のフェリーターミナル、便数の少ない島行きのフェリーがまったり詠まれ共感です。
〇(めたもん)冬の港は演歌の雰囲気を感じます。都はるみワールド全開な情景が懐かしい。昭和は輝いていましたね。
○(餡子)良い景だなあ。映画の一場面を見ているようです。
◯(ルカ)待ち時間にマフラーを編む。懐かしい景。
〇(ちせい)恋人への贈答でしょうか。
〇(宙虫)島へのフェリーがいい。こういう待合は日常が見える。
冬凪やふいにかへり来家出の子 メイ
〇(楊子)玄関に黙って立っている子どもが見えます。やはりここがいいと。
○(まきえっと)冬凪がいいですね。賑わいが戻りますね。
〇(藤三彩)小学生がいなくなっているとの緊急防災放送あり。その後、保護されたとの報あり、家出したようだ。
◎(アネモネ)「家出の子」の着想に脱帽です。
〇(仙翁)ありそうな状況ですが、面白いですね。
◯(道人)家出の子の帰郷の心模様がよく分かる。季語がいい。
〇(ちせい)悪い子ほど可愛いと言う事でしょうか。
船を待つ当てどなき旅冬鴎 道人
○(あちゃこ)旅情がたっぷり。
○(餡子)これも映画の一場面を想像させられます。寅さんかな。
◯ (アゼリア) 若山牧水を連想しました。
木造のフェリー乗り場や冬あたたか 楊子
○(泉)木造の建物は、気持ちがいいものです。
◯(ルカ)木造がいいですね。
浜名湖の朝に一筋冬の舟 めたもん
◎(瞳人)浜名湖のへりにわが墓地あれど、ながいこと参ってないなあ
島々に眠る縁や冬の海 あちゃこ
〇(めたもん)瀬戸内などの地方で育った方が故郷に帰った場面。或いは、そこに住んでいる方が沖を見ている場面でしょうか。島影と人生が重なり合います。
街師走二時間半の待ち時間 まきえっと
◎(ルカ)せわしない街とゆったりした待ち時間の対比。
冬ひとり連絡船の時刻表 仙翁
〇(珠子)確かに、人っこ一人いない三枚の写真からまず感じるのは「冬ひとり」です。
冬の海灯台守の果てにけり 瞳人
○(あちゃこ)無人灯台の守る海。懐かしい映画の主題歌が浮かびます。
冬・コロナ虚しさつのる時刻表 多実生
沈黙読む船待つ冬の茶房にて アゼリア
◎(藤三彩)遠藤周作『沈黙』は隠れキリシタンのお話。
〇(仙翁)沈黙、読む、何か深読みしそうで、面白い。
フェリー最終雲を割る冬没日 珠子
○(敏)没り日に染まった雲を裂くようにして進む最終フェリー、絵になりそうですね。
寒怒濤フェリー航路を競ひ合ふ 幹夫
(選外)(ちせい)競い合いによって技が磨かれるのでしょう。
次の便待つ間小春のイルカショー 餡子
〇(瞳人)便を待っているのは、きっと寅だよ、暮れはどうしてもそこへ行ってしまうね
◎(泉)時間が足りませんね。次の便に遅れそうです。
◯(ルカ)のどかな小春の風景。
別れ来て乗り損ないし冬港 餡子
〇(楊子)船に乗り損なったそのおとぼけ感がむしろ好ましい。まだドラマがつづくかも。
〇(藤三彩)とほほな時もおおらかに
○(泉)後ろ髪を引かれる、思いでしょうか?
○(卯平)そのまま海に飛び込まないように。
旅人の目をしておりぬ冬の海 ルカ
〇(楊子)冬の海を旅人と表現したことは驚きでした。
〇(珠子)「旅人の目」とはどんな目なのでしょうか。遥か遠くを見つめているような目でしょうか。逃避の目でしょうか。冬の海が旅人の目をしているようなつながりですが、しっかりと切って読みたいと思います。
◎(まきえっと)「冬の海」を「旅人の目」をしているなんて。
○(あちゃこ)冬には冬の船の旅がありますね。海が呼んでいる。
〇(藤三彩)旅人の旅情は「遠くへ行きたい」。冬の海はどこに行きたいのだろう
○(幹夫)独特の感性が面白く共感です。
〇(仙翁)旅の目は、冬なのか、海なのか、それとも。
○(敏)旅人ではないのにそうありたくなるような冬の海の情景なのでしょう。
◎(めたもん)冬の海は静かで重々しく、色にも旅人の心情と通じるものがあります。上五「旅人の目」がそれを詩的に言い当てていると思います。
○(餡子)冬の海を、旅人の目と捉えた感性が凄いです。
◎(道人)この凪いだ満ち潮の海をじっと見つめていると時の旅情。
◯ (アゼリア) 本当は旅人ではないが、冬の海を眺めていると旅人になったような気分ということでしょうか?
〇(ちせい)芭蕉の旅人と我がな呼ばれんが思い出されます。
★★★では、次回今年最後の句会告知をお待ちください・・・・・。
広島はなかなか寒くなりません。しかし、新型コロナは感染拡大が著しく、下手をすれば旭川市の二の舞になるかも知れません。医療従事者たちの疲弊、これに対して全力で応援する時だろうと思います。