(つづき)
雑草も結ぶ実の有り麦の秋 多実生
○(泉)全く、雑草もいい加減に扱ってはダメですね。
〇(瞳人)そういう草、たしかに
○(あちゃこ)当たり前な事実に意味づけするのは、作者の胸中に詩が生まれたから。人生だろうか。見えないものを見ている。
◯(道人)この雑草は暗喩ととる。我も雑草。人界でのささやかな実り。
高きより国見をすれば風薫る アダー女
◎(藤三彩)「国見」を思い起こしたのがお手柄。広く見渡す景色、山脈が心地いい。
◎(餡子)あの写真を見て、この句のようなことを思ったのですが、作れませんでした。国見・・成程です。季語がいいですね。
(選外)(多実生) 景色は見下ろすのが最高です。
丘に建つ久女の句碑やほととぎす アゼリア
〇(春生)久女の「谺して山ほととぎすほしいまゝ」の句ですね。
〇(藤三彩)「谺して山ほととぎすほしいまゝ 杉田久女」
○(餡子)俳句を始めた頃、久女に感銘を受けました。この句碑は「こだまして・・・」の句でしょうか。
〇(珠子)「ほととぎす」は季語だけでなく「ホトトギス」でもあり。久女の数奇な運命と複雑に絡んで切なくなります。
風になれローラーコースターの夏 ルカ
○(餡子)爽やかな句です。カタカナ語が生きています。
偉大なる四股名背負ひぬ花茨 瞳人
◯(ルカ)思わず何の四股名か考えてしまいました。
冷房室ワクチン接種の危うさよ 藤三彩
○(泉)新型コロナのワクチンは、今ひとつ信用できませんね。
スマホ捨て書を捨て夏野へと駆けよ 餡子
○(幹夫)「よく遊べ」との心情が詠まれる。
〇(春生)元気が出てきました。思いっきり夏野で遊びたいですね。
〇(藤三彩)『書を捨てよ、町へ出よう』寺山 修司 のパクリが面白し
◎(アダー女)今の我が心境にピタリ!白内障の手術をして落ち着くまでまだ老眼鏡が作れません。スマホも読書も今まで普通に嗜んできたことが疲れるのです。あ〜何もかもしばらくお休みして自然の中で心も体も解放したい。でもコロナのこともあるしねえ。
○(あちゃこ)そうしたいのは、山々なれど…コロナが難み一歩が出ない。願望の塊り。後少ししたら⁈
◯(道人)寺山修司の現代版。
○(卯平)寺山修司が現代を詠めばこうなるか。「夏野」が若さのトキメキを示している。
〇(ちせい)雄渾な句ですね。寺山修司やワーズワースを思い出しました。
○(宙虫)しがらみからの逃走。永遠のテーマ。
しんがりが一番元気夏あざみ めたもん
◯(ルカ)そんなものです。
○(敏)「しんがり」の逞しさは夏薊に通じているのかも知れません。
○(卯平)しんがりと夏あざみ(漢字でない「あざみ」がここでは位置が明確)の対比が詩となる。「一番元気」は少々浮いてはいるが。
額縁のような窓枠七変化 敏
○(幹夫)紫陽花の見事な色彩が詠まれる。
◯(アネモネ)素敵な切り取りです。
〇(メイ)写真の大きな窓を描きたくて悩みましたが、ひとつの答えが見つかりました。
山々は彼方の塔だ草茂る ちせい
新緑やくねりて長き滑り台 アネモネ
〇(春生)新緑の山に懸った長い滑り台ですね。私のところの里山にもあります。
麦秋の遠き鐘の音白い地図 あちゃこ
〇(楊子)これは茫洋となってしまった記憶だろう。もうすっかり許してしまった遠きふるさとの記憶。
〇(仙翁)何となく、鐘が聞こえてきそうな景色ですね。
◯(アゼリア)白い地図ーはじめて知りました。
〇(ちせい)映画のような感じがしました。白い地図が比喩的な意味を持って居るような。
「バスストップ」のB面ひらけゆく夏野 宙虫
○(幹夫)思わず平弘二!
〇(藤三彩)「バス・ストップ」(Bus Stop)ホリーズ(1966年)LP版シングルにB
面があったかの有無はともかく、エレキの拓ける時代はありました。
◎(楊子)共感には世代が限られるかもしれないが、所詮個人的な経験から文芸ははじまる。一般論ではつまらない。
梅雨に入る孤独楽しむタブレット まきえっと
○(多実生)梅雨とコロナこんな時はタブレットのその一つ。
名峰を一望したり若葉風 泉
◎ (多実生)私の田舎は筑波、男体、富士の遠景でした。
アイスティー資料は未完ミーティング メイ
○(泉)「資料は未完」でも、アイスティーは美味しい。リズムの良い俳句です。
ふるさとは立ち寄るところ夏薊 珠子
◎(ルカ)その距離感に共感。
〇(春生)ふるさとを「帰るところ」ではなく、「 立ち寄るところ 」としたところに作者と故郷の関係が出ました。
◯(アネモネ)年々そうなって来ますね。
〇(瞳人)長居は無用とは、少し、かなしいけど
◯(道人)心はともかく現実の故郷は立ち寄るところだけ。
○(敏)望郷の思いが「夏薊」によって喚起されたようです。
○(卯平)このように斜に構えた望郷感も詠み手の心には産土は消えがたし。
◎(まきえっと)ふるさとの表記がやさしさを感じます。ふるさとってそういうものなのでしょうか。ちょっと憧れます。
〇(めたもん)上五、中七の定義のような断定には、「ふるさと」とのもはや埋められない距離感が。季語「夏薊」が時の流れを見つめているようです。
○(宙虫)いつのころからかこういうところになっていた。夏薊がいい。
紫陽花や解体中のとしまえん 幹夫
紫陽花やぽとりと虫の滑り落つ 春生
◯(アネモネ)あるあるなリアル景です。
◎(あちゃこ)自然体でありながら、哲学的なものが感じられる。若冲が描くようなワンシーン。
〇(仙翁)何となく、面白いです。
(選外)(アダー女)カタツムリのようにしっかり葉にへばりついている虫はいざ知らず、小さい虫、もしかしたら赤ちゃんかたつむりも紫陽花の葉をたたくように降る雨にはポトリと落とされるのかも。
紫陽花はこんな世なれど花は蜜 多実生
紫陽花の仮面を打つや雨の音 仙翁
○(アダー女)紫陽花には、なんとなく魔性の美しさがあるといつも思っていたのですが、それは紫陽花には毒性があるからでしょうか。特に葉にはあるようですね。そんな紫陽花の魔性を激しい雨が仮面を剥がすように降る。そんな強い解釈は美しい紫陽花には可哀想ですかね。
○(あちゃこ)紫陽花の色を見せかけと見たのか?仮面に少しの闇を感じる。自己投影?
〇(ちせい)仮面がマスクに通じるような。
〇(めたもん)「紫陽花の仮面」は何を表しているのでしょうか。自分自身、異性、友人、…。心象の句として味わい深いと思います。
紫陽花を日の移りゆくブックカフェ 道人
〇(楊子)「日の移りゆく」に尽きる。日常はこんな短いことばで詩的に表されると知った。
◎(メイ)本を読んでいて、気がつくと外は薄暗くなっているような光景。「紫陽花を」として、時間経過を中心においたところがいいと思いました。
◎(珠子)静か。シンプルで美しい。
終はざるや充電作業男梅雨 卯平
※今回使用した写真について。
1枚目。熊本市南区のショッピングセンター内のイートインスペース。
2枚目。熊本県阿蘇市にある荻岳山頂(843.4m)。九重連山、阿蘇五岳、祖母山系(写真の方向)360度ぐるりと大パノラマ。
3枚目。熊本県八代市「竜北公園」。ローラ滑り台の周辺に紫陽花。コロナの影響で滑り台使用できなくしてある。
今回から、句会結果発表とあわせて簡単な写真の説明(できるものについて)をすることにしました。(熊本県内が中心になることお許しを)
★★★
関東以東まだ梅雨入りしていないようですね。
梅雨の終盤の大雨が心配されます。
次回の小麦句会告知をお待ちください。
広島はあまり雨も降らずに、薄暑の日々が続いています。新型コロナの感染は、やっと一段落してきました。東京オリンピックの開催について、いろいろな議論がありますが、この様な暗い時代だからこそ、オリンピックを開催するべきだ、と思います。
今回のように写真の説明があると
大変身近に感じました。
これからもお願いします。