お待たせしました。
高齢者の多いこの句会。
ワクチン接種予約は進んでいるでしょうか?
ワクチン接種でこの事態は改善されるかもしれないですが、完全収束するわけではないので、当面は気をつけて過ごすことが大事だろうと考えます。
若い人たちに接種が終わるまでは、「マスクなしで観光地に繰り出す高齢者」みたいな報道されたくないという気持ちもあります。
そうは言っても、気分的に開放してくれるものでしょう。
結果発表(今回も二回にわけて)
紫陽花や立入禁止のロープ張り 春生
薫風や滑り台から子が消えて 餡子
◯(ルカ)ドラマがあります。
○(幹夫)折角の薫風なのに・・・とは、コロナ禍の時事句ですね。
○(アダー女)あの長い滑り台からは確かにミステリアスな雰囲気が。
〇(瞳人)ほかもそうでしょうに、ね
〇(仙翁)ミステリーですか、やはりコロナでしょうか。
全山の紫陽花方位見失う 珠子
○(敏)紫陽花に取り囲まれているのは「山」ではなく作者自身のように思います。
○(多実生) 紫陽花の名所入るとこんな事も有りそう。
〇(まきえっと)「方位見失う」が何となく今の世の中を言っているようです。
〇(ちせい)妖しげな紫陽花だと思いました。
◯(アゼリア)紫陽花に噎せ返りそうですね。でも一度経験してみたいです。
○(宙虫)森の中にいるような感覚になる。
(選外)(道人)この感覚はよく分かる。
阿蘇望むコテージの朝初郭公 アゼリア
〇(藤三彩)JR豊肥線は昨年8月に復旧した。雄大な阿蘇の景色は遠くから見るもの、近くは阿蘇山噴火警戒がいまも続く。
紫陽花や「眺望」と言ふ詩を作る ちせい
どこまでも夏野 どこからが夏野 道人
〇(春生)言葉の遊びの要素を取り入れた俳諧味のある句です。
〇(楊子)予定調和な詠みに続けて、ふと湧いた疑問を自分に問っている。
〇(まきえっと)「どこまでも」「どこからが」を効果的に使っています。
〇(メイ)遠い夏野を眺めてから後ろを振り返ると、時空のスポットに落ち込んだような軽い不安に誘われる気分。
〇(珠子)そういうところに行ける日はいつ?今年は多分間に合わないでしょうから来年こそは出かけます。元気でいないと。
○(敏)夏野の中に佇みながら途方に暮れているのは作者でしょう。かつて私も似たような言い回しの句を作ったことがあり(「どこからが朧 どこまでが朧」)一句に共感しました。
〇(めたもん)夏野の茫漠とした様が、リフレインと破調により表現されています。区切りの空白(一呼吸)が字足らずを補っているのかのようで、斬新です。
(選外)(卯平)夏野を起点として過去と未来。このような技法は否定はしない。が、起点とする季語を絶対的な季語だと成功するだろう。季感的には「夏」と「冬」の絶対的な季語であれば共感を得るかも知れない。夏であれば「ハレ」、冬であれば「ケ」の景。類似類句感は否めないが。
青野ゆくあの日の父に会いたくて ルカ
○(幹夫)「親孝行したいときに親はなし」の心境だろうか。大海原のような青野だ。
◎(春生)「あの日の父」で父への親愛の情が出ました。もう、亡くなられているのでしょうか。季語「青野」が効いています。
◯(アネモネ)いい思いだと思います。
○(餡子)青野の向こうに、かつての優しいお父様が手を広げて待っておられるかも知れません。お父様と過ごした青野での思い出があるのでしょう。
○(敏)「あの日」を忘れられないのでしょうね。
○(卯平)おそらく幼き頃の父の思い出だろう。既に旅だった父への追悼句。
○(多実生)父には良く使われたので、会いたいのは母です。
◯(アゼリア)いくつになっても、歳とるごとに父母を思い出すことが増えました。
〇(めたもん)屈折しがちな父への思いをストレートに詠んでいるところに共感。季語ともよく合っていると思います。
万緑や赤き蛇らし滑つて来 メイ
○(多実生)蝮も赤いのがいますが、この句の蛇はやまかがし。
◎(仙翁)確かに、赤い蛇のような滑り台ですね。
棒読みに雨降る街よ七変化 めたもん
〇(楊子)しとどに降る雨は「棒読み」だという断定が気付き。季語をうまく置いていていて、すこし決まり過ぎの感もある。
○(卯平)上五中七の措辞は一言で言えば「梅雨」。この季語「七変化」が同じ季節であるからこの措辞が生きている。
○(宙虫)単調な梅雨時の雨がいい雰囲気。最近はこのような雨が減った。
紫陽花も毒もつ花とか目眩せり アダー女
○(泉)紫陽花に毒がある、とは知りませんでした。目眩が起きますね。
紫陽花や逆さ滑りの黄泉の坂 卯平
○(アダー女)後ろ向きに滑るなんて想像しただけで黄泉の国へ転がり落ちてしまいそう。スリル満点!
○(餡子)黄泉の国の坂・・・極楽への道ならばいいのですが。腹這いで滑るとスリルがあって楽しいです。黄泉の坂の思いつきに脱帽。
〇(ちせい)黄泉平坂のおどろおどろしさ。
野薊を起点の記憶遠山河 敏
◎(幹夫)野薊の花言葉は「独立」「素直になれない恋」。古里の山河を思い出す心情が詠まれる。
〇(楊子)古いかたちの詠みかもしれないが、野薊に象徴されるチクリとする記憶が想像される。
○(餡子)野薊にある記憶。どんな記憶なのか聞いて見たいですね。そこから広がっていくこの作者の人生。興味津々です。
◯(道人)野薊は郷愁の原点であろう。
◎(卯平)望郷句としての焦点化が明確。野薊が詠み手の中にあるからこそ望郷の念絶ちがたし。
〇(メイ)野薊に対して中七の硬さが心地よさを生んでいると感じます。
◎(アゼリア)起点の記憶ーなんかこういうことありますよね。原風景というか原点というか。
◎(めたもん)野薊は緑の中にぽつんと咲き、色も記憶の「起点」に相応しい。「遠山河」へとつながる記憶。いろいろなストーリーが浮かびます。
○(宙虫)起点の置き所がいい。薊の赤が印象的。
どくだみは罪あらざるに影に沿う 仙翁
〇(藤三彩)ドクダミの嫌われ処とその実はちがうという句意なのでしょう。その特有の臭気と繁殖の旺盛さの故、嫌われるが、実は毒を矯る。十薬は生薬として煎じて飲む健康薬。
(選外)(道人)どくだみは日陰の花。句意に共感。
山脈の見える幸せ半夏生 藤三彩
◎(泉)日本は山国だから、山が見えると何だか安心します。
〇(まきえっと)今の季節だと緑一色の山脈なんでしょう。ホッとしますね。
〇(珠子)山脈を見て育ち、日本は狭い国と繰り返し教わってきましたから、千葉に出て来て山が見えないことに大いなるショックを受けたのは半世紀以上前のこと…。山脈の見える生活は幸せです。
人間の背中に翼梅雨晴間 まきえっと
○(アダー女)子規の「六月を綺麗な風の吹くことよ」が今朝の新聞に出ていました。梅雨晴れ間には梅雨前のすがすがしい大気が戻ってくる「アンコール型」と盛夏の準備をするように大気が熱を帯びる「リハーサル型」があると気象の専門家は上手いことをいいますね。この句は間違いなく「アンコール型」でしょう。翼があったらそんな晴れ間の空を私も飛んでみたい!
〇(仙翁)背中に翼、欲しいですね。
〇(メイ)「翼」の解放感。季語を背景にいろんなストーリーを想像しました。
〇(珠子)翼の痕ではなく翼という断定が心地よい。コロナを避けて飛んでいきたい。
(選外)(卯平)梅雨晴間をバックとした人間が「ニンゲン」であればそれなりに選の基準になるだろう。
(選外)(道人)コロナ自粛・梅雨ごもりばかり。せめて僅かの梅雨晴間には鳥のように翼があればなぁ。
国境の光る山並夏若し アネモネ
◯(アゼリア)夏若しーありそうであまり聞かない素敵な措辞と思いました。
ABC殺人事件新樹光 あちゃこ
空洞のビル街梅雨がたむろする 宙虫
○(あちゃこ)鬱々とした都会を巧みに詠んでいる。下五のたむろするの擬人化については、迷うところである。
◯(道人)コロナ禍のビル街の梅雨の風情は「たむろする」がピッタリ。
〇(メイ)今の暮らしと気分が「たむろする」に表現されている。
◯(アゼリア)取り合わせが上手と思いました。
(選外)(卯平)「梅雨がたむろする」が陳腐。「空洞」も焦点化出来ないだろうか。
書を閉じて若葉の中へスニーカー 泉
◯ (ルカ)気持ちのいい句。
○(アダー女)読書も良いけど、若葉の季節は颯爽と外へ!同感!
◎(敏)「書を捨て」て町に出ようと言ったのは寺山修司。一句の主人公は「若葉の中」へ入って行きました。
〇(まきえっと)オンとオフの切り替えの難しい毎日。大事です。
ひとりずつ初夏へ窓辺のカウンター 楊子
◯(ルカ)よく写生されています。
〇(仙翁)ソーシアルディスタンスでしょうか
〇(まきえっと)「初夏へ窓辺のカウンター」がいいですね。
紫陽花や町会長は雨男 幹夫
○(泉)町会長も大変です。天気まで押し付けられる。
◎(アネモネ)紫陽花との取合せがなかなか。
〇(珠子)どこの地域にもこういう方がおられます。責任転嫁されても「いやあ、申し訳ない。」とにこにこ働く方が。
あぢさゐや夜半に中西龍のこゑ 瞳人
(選外)(藤三彩)中西龍が元NHKアナウンサーで鬼平犯科帳などのナレーターと知ればああそうだったと思います。
代休のひとりの昼やソーダ水 楊子
◯(アネモネ)所在なさ感横溢。
○(あちゃこ)ひとりで過ごす代休日。さてどうしましょ?3枚の写真の内からカフェを選んだ感覚に共感。すっきり感がいい。
◎(道人)今のITの世なら代休をテレワークと拡大解釈した。代休でも業務を休めない時代の閉塞感を「ソーダ水」の清涼感が救った。
○(多実生)猛烈に働いた時代は休むのも気がひけたものです。
◎(ちせい)ソーダ水に映る悲喜こもごもだと思いました。
〇(めたもん)代休の昼。多くの人は働き、通りも休日とは違って何か特別。そんな感じが季語「ソーダ水」とよく響き合っています。
◎(宙虫)代休がうまくはまって、まわりに会話する人のいない感覚。ソーダ水が絶妙。
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