小麦句会 on blog

俳句「麦の会」の句会のひとつです。 ネット句会を月二回行っています。 この句会は誰でも参加できます。

第431回小麦句会結果発表

2020年06月23日 21時59分27秒 | 15日句会

こんばんは。お待たせいたしました。プロ野球も開幕しましたね。

兼題:水
そんな味慶応元年水ようかん  瞳人       
◎(吾郎)江戸最後の時期、動乱の中ひとときのさわやかさは美味。
〇(楊子)長い歴史の老舗の味かもしれませんが、水ようかんは水ようかん。軽味がおもしろいです。

水面にて夏日浴び綱手にも波  吾郎
〇(宙虫)夏の大きな景につながっていく展開がおもしろい。
○(餡子)都県をまたぎ解放された海辺の混雑は予想以上でした。海の好きな人には、この句の感覚はたまらなく、待ちわびていたことでしょう。
◯(道人)臨場感ある回文句。舟を係留する手と川波の動きに涼しささえ感じてきます。
○(まきえっと)水の中に漂いたいです。

コレラ禍や水道のないスラム街  泉
◯ (アゼリア) 本当に問題はコロナばかりではないのですね。

朝顔に水やりする子守備ライト  楊子
◎(瞳人)蔓が屋根に届くころには、守備もうまくなっているよ
○(泉)ユーモラスな俳句だと思います。
◎(メイ)子を慈しむ作者の眼差しが伝わってきます。朝顔とライトが響きあっていて、清々しい。
〇(ちせい)季語は「朝顔」。昔は九番ライトと言うと野球が下手な子のイメージ。今はイチローの出現で大分イメージが変わったのでは。

水を得て蛙鳴くなり夜もすがら  仙翁
○(敏)わが家近くでも、雨の後の夕べには、蛙の鳴声がよく聞かれます。もっとも、「夜もすがら」それを聞いたことはありませんので、一句の全てが見たわけではありませんが。

コへレト空し行雲流水雲の峰  藤三彩
(選外)(吾郎)ま。諸行無常ってことで。

願ひまで半歩とどかぬ水すまし  メイ
○(あちゃこ)同じ歩幅で水輪を刻むという感覚でしか捉えていなかったのですが、上五中七の表現に、はっとさせられました。
〇 (多実生) 軽快で飛ぶことも出来る水すましですが、半歩ならもう少しです。 
○(餡子)後半歩が一番苦しいところ。頑張れ頑張れ!
○(仙翁)みずすましの願いとは何でしょうね。少しもどかしい感じでしょうか。
○(ルカ)水すましの感じがよく出ています。
○(まきえっと)こんな風に見たことがなかったです。

水打ってあなたの影を消しました  敏
〇(春生)「あなたの影を消しました」という口語調がうまい。
◎(楊子)ジュワッという音と一緒に消しました。さっぱり。
〇(珠子)こういう潔い句が作れるのもエネルギーのある証拠。
◯(道人)未練は水に流すわけですね。面白い。
○(まきえっと)きれいさっぱりですね。

田水張る迷い込んだる魚泳ぐ  多実生
〇(藤三彩)小魚が入り込んでくる。それを目当てに鳥も来るのであろう
○(敏)水張田では、どこから迷い込んだかわからない小魚をよく見かけます。観察の効いた作品ですね。

水槽の水の断面目高散る  珠子
〇(藤三彩)卵から孵化した針子。表面に浮いたメダカ餌を突くとまた散ってゆく

びっくり水差して素麺黙らせる  餡子
◯(アネモネ)あのたちまちの沈黙。いかにもです。
◯(吾郎)含蓄のある手際。
◎ (多実生) 沸騰で踊っている素麺、びっくり水に一旦落ちつきますが、黙らせるの表現が上手い。
〇(珠子)「びっくり水」今は火の調節自在ですから「火を弱める」なそうです。確かにあれは「黙らせる」です。

梅雨寒の鞄に探す今治水  アネモネ
◎(餡子)今治水・・、懐かしいです。丹平製薬。ずっと、こんちすいと言っていたのですが、こんじすいなんですね。虫歯のお薬。富山かと思っていましたが、大阪でしたし、いろいろと幼い頃の記憶というのは曖昧。作者は今でも愛用していらっしゃるんですね。
〇(ちせい)季語は「梅雨寒」。具体名の座5の安定感がいいと思いました。

水分を補給しながら月涼し  ちせい

誰だって嘘つき窓の水中花  あちゃこ
〇(春生)機智に富んだ句。リズミカル。
〇(宙虫)水中花ってそういうものかなと思わせる。
〇(珠子)はい・私も嘘をつきます。保身の無言の嘘が多いかも。
○(泉)「嘘も方便」という言葉もありますね。
◯ (アゼリア) ホワイトライなんて心の中で言い訳しながら結構嘘ついてます。

漂うための水母の系譜ヘッセ読む  宙虫
○(あちゃこ)漂うという行動は、命あるものを繋いでいるようです。実は、もがき苦しんでいるのかもしれない。
(選外)本句の重さは前か後のどちらにあるのか、前ならクラゲは「クラネタリウム」観る、胡瓜と塩クラゲの酢のもの和えを食す。読書なら『少年の日の思い出』か
(選外)(道人)やや理が勝っているが、「漂う」と「水母」と「ヘッセ」がよく合っている。

水鉄砲打つ透明な檻の中  ルカ
◎(あちゃこ)透明な檻は、現在の人々が感じている感覚。水鉄砲打つが閉塞感を打ち破りたい思いを上手く表していますね。
〇(メイ)透明な檻は苦しい。水鉄砲打っても、水は自分に跳ね返るだけ。

徒花と知りつつ咲きぬ水中花  道人

青葉寺水子地蔵に人の影  アゼリア

初めての水着のフリル女の童  春生

水無月の硝子の靴にイヤリング  まきえっと
○(仙翁)おとぎ話のようで、面白いですね。

テーマ:植物
柿の花体温計の電子音  まきえっと
〇(春生)取り合わせに新鮮さがある。今年はよく体温計の音を聞きました。 
〇(楊子)柿の花の素朴さと電子音の新しさがいい取り合わせです。夫婦で計り合うご時世かも。
○(ルカ)日常になった検温。

こだまに耳ふさぎ赤紫蘇揉んでいる  宙虫
〇 (多実生) 青梅を漬け込むための赤紫蘇でしょうか?作業に熱中する姿が見えます。
◯(道人)この「こだま」は「谺」ではなく心の中で心中何回も繰り返し叫んでいる心配事であろう。「赤紫蘇揉んでいる」が効いている。
(選外)梅紫蘇を漬けている作業中なのに、ヤッホーの谺ではなさそうな耳鳴りが・・どうしたのでしょう

バイエルに挫折したころ青胡桃  珠子
〇(宙虫)思い出すことはやはりある。あの時、続けていればと。
○(ルカ)共感。私はバッハで挫折しました。

炎天や光合成は最盛期  泉

刈草の腰に燻らす蚊遣の火  アネモネ
○(敏)近頃は少なくなったとはいえ、草刈場ではよく蚊に食われます。今ではスプレータイプの虫除けを愛用していますが、少し前までは渦巻き型の蚊取り線香をよく腰にぶら下げたものです。
〇(ちせい)季語は「蚊遣の火」。刈草も季語かも知れませんが、主季語は蚊遣の火かと。
◯ (アゼリア) 今ではあまり見かけなくなった懐かしい光景です。
(選外)(道人)草刈りの後の心地よい疲れがよく伝わってきます。

含羞草男は道を説くばかり  道人
○(あちゃこ)実は、わずかな毒をもつオジギソウ。道を説く男への複雑な思いが交差します。
〇(楊子)つまらない男にはあいづちを打つに限ります。道は倫かな。
(選外)(吾郎)これはこれで情けない、ま、それが男ってもんです。

孤高とは孤独なること濃紫陽花  餡子

山水に沸かす珈琲水芭蕉  アゼリア
〇 (多実生) 汗の後、こんな時のコーヒー最高に美味い。
○(敏)山行した際、湧き水を使って珈琲を湧かしたのでしょう。美味しかったでしょうね。
〇(ちせい)季語は「水芭蕉」。山の味が珈琲に。キャンプ気分が含意され、他季語の含意が句を豊かにしていると思いました。

生け垣の丈ととのえり梅雨晴れ間  敏
〇(藤三彩)雨の日の剪定は避けたい。無理しない。
〇(仙翁)夏の風景がさりげなくとらえられています。

青葡萄ゆれる無口のまま三日  楊子
〇(春生)自粛生活にも疲れました。人と人との対話がないまま。    
◯(吾郎)72時間の私と葡萄の共生、そして突然の分かれ──とか。
○(餡子)おやおや、これはこれは。どうしたのでしょか?ご夫婦?親子?恋人?今のコロナ状態だと、自粛のために全く接触のなくなった人とも。自然は、いつものごとくおいしいブドウを提供してくれます。
◎(道人)梅雨時の、少し緩和されたとは云えコロナ禍の巣ごもり生活感と青葡萄の揺れの距離感がいいですね。
〇(メイ)四日目には口を開いたのでしょうか。青葡萄はゆれながら全て観ているのでしょうか。

蝉時雨葉に力ある我も行く  ちせい

仙人掌に名前つけたる女の子  ルカ

想い出をはるか辿れば桑苺  多実生
◯(アネモネ)ほんと、口を紫に染めました。
〇(瞳人)あまーい思い出も、とおい昔になってしまったなあ
◎(藤三彩)唇や手指の色を見れば何をしていたのかわかる。けんかや殴り合いではないのだ。

泰山木下から笹やのお熊哉  瞳人

地にありて揺れて光りぬ夏野こそ  メイ
〇(仙翁)夏の野には、光が似合いでしょうか。

中止か延期さぎ草の品評会  藤三彩

朝視るトマト未だし鳶の声  仙翁

奴は偉大だな花橙は艶  吾郎
◎(珠子)「奴は偉大だな」とつぶやいた素直な感性は眩しいほど。橙の花の清楚で凛とした姿にも通じます。後ろから読んでも「奴は偉大だな」なんてなて素敵な。

白薔薇やナチスドイツを生き延びて  春生
◎(泉)「ナチスドイツ」という表現が、リアルに迫って来ます。
〇(メイ)白薔薇をかかげて抵抗運動に身を投じた若者たち。白薔薇の「白」に象徴的意味を思います。

薔薇ならば黄色オトナという定義  あちゃこ
〇(藤三彩)黄花のマルコポーロ。賭けに出るオトナ。
〇(宙虫)黄色の薔薇を大人と結び付けたところがいい。

雑詠
くちびるよ夏鬱々な夜備蓄  吾郎
○(あちゃこ)寝つけない夏の夜にも明日への力を蓄えているのですね。

雲の峰酸素溢れる水族館  まきえっと
○(泉)活気に満ちた俳句です。
◯(道人)正に夏の季感が一杯。
○(ルカ)対比が面白いです。

遠山の夕立に煙るはぐれ道  仙翁
〇 (多実生) 遠山に見える夕立、下山を急ぐ焦りが見えます。

夏燕過疎地の歯科医に三代目  アゼリア
◯(吾郎)それはそれは、よござんした。
〇(瞳人)それも人生、いいじゃあないの、いいことあるよ
〇(宙虫)俳句によく登場する単語並べて、この世界観。
○(餡子)ほっとしますね。ありがたいですね。   
◯(道人)欲のない三代目ですが、ホッとします。この句のように、大きな意味で超高齢化・過疎化の日本に警鐘を鳴らし続けるのも俳句の役割の一つかと。

青梅雨続く溺れそうなる自重かな  藤三彩

花菖蒲光源氏の愛し方  あちゃこ
〇(楊子)あんなに浮名を流した光源氏ですが、なぜか退廃感をもたないのは不思議です。すくっと立つ紫の花菖蒲のイメージと重なります。
◎(ちせい)季語は「花菖蒲」。誰かを光源氏に擬えているのだと思いました。

古傷といふは脛にも簾にも  アネモネ
〇(瞳人)その痛み、ずーっとついて回る、それもよし、とおもえば 
〇(楊子)ポイントは簾でしょう。この喩をどう読むかですね。内と外を隔てる簾の傷は自らの心の古傷なのでしょうか。
◎(宙虫)簾の古傷と並べたのがいい。ちょっとした家庭内のいざこざの歴史もうつしてみせる。
◎(敏)夏になり物置きにしまっておいた簾を取りだした時に見つけた破損から、同じような位置にあった自分の傷を連想したものと思われます。「脛」と「簾」の取り合わせに感心。
◎(まきえっと)脛と簾がいいですね。時間の長さを感じます。

水なすと残りカレーの朝餉かな  瞳人

清張を閉じる樹陰の蟻地獄  宙虫
○(泉)「清張」と「蟻地獄」が、良くマッチしています。
○(餡子)松本清張と蟻地獄はフィット。樹陰も良い感じ。清張の世界。
〇(メイ)「閉じる樹陰の」この緊張感が魅力的です。清張の昭和を、令和の今を思いました。
◎ (アゼリア)ミステリーでは何と言っても清張ですよね。蟻地獄の季語が効いています。

青葉潮国境線は地図の上  敏
◯(アネモネ)青葉潮がなかなか。
〇(珠子)普段は海に囲まれていることを意識していませんが、日本の国境はぐるっと海の上。このコロナは海と空を渡って日本に入ってきたということす。文明の歪。
○(ルカ)季語がいいですね。
○(まきえっと)青葉潮がいいです。
(選外)(道人)当たり前のことだが、こう詠まれると「国境」にこだわり続ける人間の小ささが改めて浮かび上がってくる。

短夜を過去探すか徘徊す  餡子
〇(仙翁)過去の何を探しているのでしょうね。
(選外)(メイ)過去に生きる「老い」をリアルに捉えていると感じました。

男梅雨日々書き替える農事暦  道人
〇(藤三彩)生育に合わせて肥料や防虫、わき芽を採ったり忙しい男の愉快
◎(ルカ)今、気候変動、異常気象が普通になってる状況なので、農事の時期を考えるのがいっそう大変だと思います。季語もいいですね。
◯ (アゼリア) この努力頭が下がります。お陰様で毎日美味しいお米や野菜頂いています。呆けなど無縁ですね。

豆ごはん母の小言も炊き込めり  春生
〇(瞳人)さぞかし、味わいのふかいことでしょう、あとでしみてくる
○(あちゃこ)季語と小言の取り合せがいいですね。リズムもいい。
〇(ちせい)季語は「豆ごはん」。小言まで炊き込まれるとはユーモラスな。主観の勝った句だと思いました。
選外 (多実生) 有難い母でしたが、私は母の小言は無視でした。

青葉闇タイムマシンの中にいる  楊子
〇(珠子)唐突にそう言われてもと一瞬困惑。しかし作者の断定に乗ってみようではないか! 

白靴は遊び仕事は黒い靴  泉
◎(アネモネ)笑いました。
〇(春生)この対句、見事ですね。  
◯(吾郎)ヤクザなホストか、ヤクザのホスト。

薄暑光貼り紙多き商店街  ルカ
◯(アネモネ)ジャストナウです!
○(敏)緊急事態宣言発出以後、どこの商店街でも見られた「3密」除け「おことわり」のコロナ時事句。
(選外)(吾郎)これはもう、今の光景。プリントアウトで文字が細かく近寄らないと読めない貼り紙、何を言いたいのかわからない滑舌の悪い首相想起。

病葉が半分程を占めにけり  ちせい
〇 (多実生) 病葉か虫喰いか? 春早く芽吹く桜などを想像します。 

父の日のそらは茜かゴジラ岩  メイ

風が撞く音が鳴りそう釣鐘草  多実生
◯(アネモネ)ほんとそんな感じです。
○(泉)童話の様な俳句だと思います。

夕茜蜘蛛逆さまに時を待つ  珠子
〇(春生)早く獲物がかからないかなあー。蜘蛛の気持ちがわかります。  
◯(吾郎)いいことが起きて欲しい。
◎(仙翁)たしかに、蜘蛛が逆さまになっていることがありますね。時を待つ、良い表現ですね。
〇(メイ)逆さまに宙づりになって解放の時を待っている私たち。そんな時にも、夕茜は美しい。
○(まきえっと)時を待つがいいですね。

 

次回をお楽しみに。



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1 コメント

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ご苦労様でした ()
2020-06-24 13:59:30
まきえっとさん、句会当番のお役目ご苦労様でした。今後とも、よろしくお願いいたします。

広島はさすがに暑くなってきました。新型コロナ対策は、気のゆるみが出ている気がします。人間の緊張感など、長続きはしません。それにしても、今年も巨人は強いですね。広島は何とか頑張って欲しいものです。
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