小麦句会 on blog

俳句「麦の会」の句会のひとつです。 ネット句会を月二回行っています。 この句会は誰でも参加できます。

第492回小麦句会結果発表1

2023年01月08日 11時09分35秒 | 1日句会

2023年のスタートはいかがでしたか?

年末の寒波から一転、天気予報ではこれからしばらく春先のような気温になるようです。

成人の日も呼称を変えて成人式を行う自治体が増えているそう。

私たちが教わって覚えた一年は、どんどん姿を変えていっていることに唖然ともしています。

 

2023年の小麦句会もなんとかスタートしました。

一覧掲載の際、ごたごたごたしたことお詫びします。

また一年間、よろしくお付き合いください。

 

結果発表

 

缶コーヒー握り心地はホッカイロ    幹夫

○(卯平)誰でもが経験する事。若さ溢れる句

◎(ちせい)ちょっと上手い詠みぶりだと思いました。

○(泉)寒い日々が続きます。缶コーヒーは暖かいですね。

〇(瞳人)なるほど、そういうことですね

 

日本だけ自販機あふれ冬うらら   泉

○(幹夫)豊かなる日本の幸せ。冬うらら。

○(餡子)物質文明の日本。自販機は当たり前の暮らしに不安感を感じている作者。同感です。    

 

(選外)(卯平)確かにそうである。「だけ」で報告的ではないだろうか。

 

自販機の灯に影降りて夜の雪   めたもん

◎(楊子)「灯に影降りて」という詩的な言い回しにひかれました。

◎(幹夫)雪の降る夜の美しい景が素敵に詠まれる。

○(仙翁)公園の自販機、景色が浮かびますね。

○(アダー女)自販機のそばの外灯に雪の降る影が映って「あ〜雪が降ってきたんだあ!」と気づいたような細かい観察が見事です。

○(宙虫)自販機の灯の静かさが様々な心情を見せる。

 

冬日濃し無人のベンチ通り過ぐ   ルカ

〇(楊子)「通り過ぐ」が無感情なようですが意識が感じられます。季語もいいです。

○(あちゃこ)冬日濃しと捉えた感性に惹かれました。

 

冬うらら八十年も平和ボケ    カンナ

〇(藤三彩)自衛隊に若い人が行かなくなっているそうだ。SFの宇宙戦争のような近未来が怖い。

○(泉)長く続いた平和も、いよいよ危うくなりそうです。

 

公園に響いて蒲団叩く音   アネモネ

○(餡子)公園に隣接する団地でしょうか?冬温しの感じが良く出ています。  

◯ (アゼリア) 幸せな響きですね。お正月にお子さん達が帰省されるのでしょうか?

 

去年今年ちぎれし雲の寄り集う    敏 

〇(珠子)雲からすると、自在でも気ままでもなくなるべくしてなった形でしょうが、こちらから見る雲は自由で羨ましいほど。災害級の雲だけはご勘弁を。  

◎(あき子)空に雲の動きが見えてきて、音調も美しい。去年今年のひとの動きも重ねてみえてきます。

◯(ルカ)人も寄り添って生きている去年今年です。

○(卯平)下五と上五の共鳴を促す中七。ちぎれ雲が成功した。

○(あちゃこ)世界の危機や天変地異を過ぎゆく地球。寄り集う雲は、連携と共生を暗示しているよう。

〇(めたもん)「ちぎれし雲の寄り集う」は実景のようにも象徴的表現のようにも読めます。その広がりが魅力です。

○(ちせい)初空と言う季語も思い浮かびました。

○(宙虫)新しい年に向かう。新たな希望も新たな不安もちぎれた雲から生まれる。

 

立枯れの昭和の空を買い取ります    宙虫

○(泉)昭和は遠くなりました。今は新しい危機の時代ですね。

 

(選外)(道人)昭和の詠み方は幅広い。「買い取ります」には吃驚。

 

外階段の音冴え冴えと暮ひとり    楊子

○(仙翁)静かな中にコツコツと音が聞こえる感じ、いいですね。

○(餡子)テレビドラマの一場面。それにしても侘しいぞ! 

◯ (アゼリア) ひとりはひとりの良さがあるのでしょうが、暮、正月は少し寂しいですね。

〇(あき子)夜になると、外階段を歩く足音が響いて寒さがこたえます。

○(アダー女)外階段にコツコツと響く靴音。でも自分の住まいを訪れる人の足音はない。年の暮れのひとり暮らしは寂しいなあ。

 

缶コーヒーやや離れ座す尻の冷たさ    アダー女

〇(カンナ)気詰りな相手とベンチで缶コーヒーを飲んでいるのを、「やや離れ坐す」と「尻の冷たさ」で表現した。下五の七音も気にならずまとまっている。

 

冬晴やぐびりと胃の腑にビタミン剤    藤三彩

〇(珠子)眼前に勝負したいモノがあるのでしょう!ドリンク剤の効き目は時間限定、持っている体力気力をかき集めて頑張ってくれるので、そのあとどっと疲れるのだとか?

○(宙虫)もう一度、ぐんと背筋のばしてきてみたいものだ!

 

木霊する「助けて」冬の空遠く   あき子

 

走り根が支える樹幹年新た   珠子

○(幹夫)「走り根」に託して新年への強い意気込みが詠まれる。

◎(藤三彩)大木というわけではないがブドウの根も横に張る速度が速い。マメに剪定やら面倒を見なければ・・・

○(敏)地表には半分程しか姿を見せない走り根だが、それが支えている幹の太さは根の直径の何倍もあるのだろう。新しい年に私は走り根のように家庭や会社、社会を下から支えるものになりたい、といった願望も見えてくる。

◎(仙翁)走り根、時々見ますが、樹木は逞しいですね。

〇(まきえっと)走り根の様子がよく詠まれています。これからもしっかりと支えてください。

◎(めたもん)「走り根」がいいですね。しっかり根を張りながら新しい気持ちで迎える正月です。

○(ちせい)力強さがまた句作のこれからを支えるのかもしれません。

◎(泉)何事も見えないモノが、現実の世界を支えています。

 

買初の自販機コイン落つる音    ルカ

〇(珠子)コインの落ちる冷静な音。飲み物が落ちる無粋な音。去年と変わらない今年がスタートします。   

〇(楊子)音だけに絞ったところがうまいです。高く響く音が新年らしいです。

〇(あき子)買初とコインの音が響き合って、新しい年を寿ぐようです。

○(アダー女)今年初めての買い物が缶コーヒーか!百円玉、十円玉のチャリンと落ちる音が妙に新鮮に感じられます。

 

ボランティアに配るコーヒー冬日向    餡子

○(卯平)平明な上五中七の報告が下五の季語で生きている。

〇(カンナ)上五と中七に情景が浮かぶ。

◯(ルカ)季語が効いてます。

○(アネモネ)いい状況です。

 

空ツ風ボスの奢りの缶コーヒー   あき子

〇(珠子)ボスから熱い缶珈琲の「ボス」を一本。コマーシャルのよう。心もあったまります。 

◎(卯平)「ボス」に缶コーヒーの商標が重なる。建設現場の空気が伝わる。

〇(カンナ)寒風のなか、作業している職人さんに親方が缶コーヒーを奢っているのか。「空ツ風」、「ボス」、言葉の選び方がよいですね。

〇(まきえっと)コマーシャルを思いました。

○(餡子)あの誰も居ない公園は、いろいろに考えられて面白い切り取り方だと思います。コマーシャルのボス缶が浮かびました。作者には何のボス?

〇(めたもん)例のテレビCMを思い起こします。空っ風の中、温かいボスからの缶コーヒー。いいですね。

〇(瞳人)ほどよき燗がいいけれど

○(アネモネ)「ボス」がいいですねえ。

 

歳晩の温もり残る木のベンチ    まきえっと

〇(楊子)木のベンチをよく観察して詠まれていると思いました。

 

(選外)(卯平)「歳晩の温もり」が不明。この季語「歳晩」の季語を活かすとするなら「歳晩や」が読み手に強く印象に残る。そうであれば特選候補。

 

鳶悠々糺の森の冬ぬくし     瞳人    

◎(敏)糺の森はたしか京都下鴨神社の森。偽りや虚言があれば正されるといったところからきているのだろう。その呼び名からして、さぞ薄暗いだろうと思っていたが、実際にはあっけらかんとした印象しかない。

 

一木に小鳥集まる良寛忌      アゼリア

◎(珠子)雀がよく集まる木というのはあります。見通しがいいとか、逃げる時に障害がないとか、理由はあるのでしょう。良寛忌との取り合わせに惹かれました。   

〇(藤三彩)「柴垣に小鳥集まる雪の朝」良寛さんは動植物が好きだった。

〇(カンナ)良寛はよく知りませんがシンプルでよいと思う。

◎(まきえっと)季語の選定が合っています。優しさを感じますね。

○(敏)子供や動物たちにも愛されたという良寛様。その忌日を知ってか一本の木に鳥たちが集ってきているといった句意だろう。

◯(道人)もう春の兆しを感じるよう句に共感。

◎(アネモネ)良寛忌が効いていると思いました。

〇(めたもん)良寛の生き方には惹かれるものがあります。上五「一木」に共感します。

 

(選外)(卯平)良寛の「柴垣に小鳥あつまる雪の朝」がある。 

 

戦果て冬青空のみ残りしか    餡子

○(敏)今日戦さといったら即ウクライナ戦争を想起してしまう。日本の空を見上げながら、彼の地に思いをめぐらしているのだろう。

〇(瞳人)いつの世も戦というものはそういうものですね

 

裸木と緑樹の園地影と陰    仙翁

 

青空や凩鳥を黙らせる      ちせい

○(あちゃこ)鳥への展開が絶妙です。

○(ちせい)姦しい鳥の鳴き声も止み木枯らしが吹きすぎる。

 

三寒や明日待たるる人ごこち     瞳人

○(幹夫)四温の明日への期待が素直に詠まれる。

 

一本で足りるビタミン街師走    まきえっと

◯(ルカ)元気が出ます。

〇(藤三彩)ちょっと栄養付けて年末の買出しや大掃除などのひと仕事を終えよう。

○(卯平)「足りぬ」では下五が生きてこない。足りているから街の師走の雑踏が見える。  

○(餡子)忙しい師走。私も野菜ジュースを飲みます。  

 

重ね着の蛾次郎得意のカレーの香    藤三彩

○(卯平)追悼句。この句で「男はつらいよ」で彼が演じた場面が思い出される

◎(瞳人)暮れに往きし源公によく目を向けられた。寅と仲良く傾けていることでしょう

 

君の答待つ雲も凍て動かざる   アダー女

◎(カンナ)公園のベンチでのプロポーズの情景か?きみは返事をしない。空を見上げれば、雲も凍てついて動かない。「動かざる」の文語ならではの強い表現が良いと思います。

 

(選外)(卯平)句材は魅力的。これらの句材を焦点化できないだろうか。「凍雲」として整理するともっとすっきりしないだろうか。

 

自販機の滑舌の良く年迫る    楊子

〇(珠子)雪が降ろうが、嵐だろうが、明るく澄んだ声で挨拶する自販機。  

〇(まきえっと)夜だとびっくりしそうです。

◯(道人)よく売れる自販機上コインの音を擬人法で「滑舌の良く」と詠んだのだろう。俳諧味あり。

〇(めたもん)自販機の音に滑舌の良さを発見したところが素晴らしいと思います。

○(宙虫)喋る自販機。年々AIなどの喋りが上手になっている。

 

ベンチあり冬陽溜りの園庭に    敏

 

つづく



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