第337回小麦句会結果発表
主なき洋館の声梅雨潸潸 あちゃこ
◯(吾郎)季語と相まって凛とした風情が伝わってきます
〇(とっきー)空っぽな部屋、住む人の居ない気配の窓に梅雨の雨が潸々と降っている。侘しいとも、静寂とも。
○(餡子)廃屋になりかけているのでしょうか。3枚目がさんさんと降る雨の感じですね。
◯(アゼリア) 潸潸という言葉初めて知りました。
◎(幹夫)下句の「梅雨潸潸」という表現が佳く、情景が適確に詠まれていて共感です。
○(珠子)人気のない二枚の写真から何をイメージするか悩みましたが、「主なき洋館」は私のイメージと重なりました。
〇(まきえっと)主なき洋館の声が良いですね。主が居た時の賑やかな雰囲気が伝わってきます。
寄宿舎の昼はがらんと土用あい アネモネ
○(餡子)朝ドラの村岡花子さんのいたミッションスクールの感じです。
○(珠子)寄宿舎というイメージにはびっくり。かなり伝統のある学校の寄宿舎でしょう。
緑陰で語らふ過去の片思ひ 瓦すずめ
〇(まきえっと)緑陰だと過去も似合います。
○ (多実生) 既に、片思いを語れる年になりました。
○(幹夫)季語が自然体で詠まれており好感です。
鎮座して何を見ている雨蛙 多実生
○(ルカ)ちょこんと座す蛙が浮かびます。
◎(呆夢)同じ思いを共有しているようです。
○(瓦すずめ)何を見ているのでしょう。アマガエルのたたずまいが目に見えるようです
街へ出る水連棄てて庭すてて 宙虫
◯(道人)「街」には捨てたくないものを捨てさせる魅力があるのでしょうか?複雑かつ逆説的な心情表現に惹かれました。
◯(あちゃこ)写真からのこの発想。『すてて』のリフレインが哀愁をよびます。
○(泉)「街へ出る」という強い調子が印象的です。
幻のあなたを椅子に花はちす 敏
◯(吾郎)あなたに椅子を…も好み
◎(ちせい)季語は「花はちす」。幻想も、結構実感の濃そうな句だと思いました。
〇(とつきー)作者にしか描けないその人を座らせて蓮の花を見せる図式はロマンチックです。
○(呆夢)幻のあなたはどなたでしょうか。花はちすが面白いですね。
◯(道人)「幻のあなた」は色々想像が膨らみます。亡き夫?かつての片想いの人?
◎ (多実生) 夢が有ります幻のあなた。座らせて花を見せたいのはどなた?
○(珠子)ロマンチックな思い出がふつふつと。「花はちす」ですから、もう会えない方なのでしょうね。 座り手のいない椅子からの・なんと素敵なイメージ。
○(アネモネ)「幻のあなた」がなかなかです。
〇(宙虫)写真と相まって洋風の恋が・・・・。
万緑の中に深紅の傘開く 泉
〇(とつきー)緑と深紅の鮮やかな対比がくっきりとした景色をみせます。
◯ (アゼリア) 緑の中に深紅の傘が鮮やかです。
○(敏)緑と深紅の鮮やかな対比が魅力的です。
○(春生)緑と紅の鮮やかさに魅かれました。
○(幹夫)万緑と深紅との対比する色彩が素敵に詠まれており好感です。
涼風がモデルをやさしい顔にする 呆夢
○(藤三彩)和装の女性はやはりモデルであったか
○(瓦すずめ)納得できる句ですね。涼風のありがたさが伝わってきます。
洋館もジューンブライドも夢と消え 餡子
何時までも座る人待つ蓮かな 仙翁
〇(とつきー)蓮から見たドラマ仕立てはお見事。
籐椅子のひとつは海を見ておりぬ ルカ
◯(吾郎)そういう景色もあるか…なるほど
〇(まきえっと)海に繋がるところが見事です。
○(呆夢)ほかの椅子のことが気になりますね。
○(瓦すずめ)藤椅子が海に向いているのを、藤椅子が海を見ていると表現するのは面白いですね。
○(幹夫)想像が広がり好感です。
○(珠子)発想が二段階飛んだ形だと思いました。ひとつの発想をさらに次のステージへ飛ばすにはエネルギーが要ります。
◯(あちゃこ)かつては、海の見える高台に住んでいた椅子なのかもしれません。時空を超えてステキな句ですね。
〇(宙虫)海がいいですね。かすかに潮騒も聞こえそう。
コーヒーの味は極上梅雨晴れ間 泉
○(ちせい)季語は「梅雨晴間」。「極上」と言う断定に俳諧味が感じられました。
○(呆夢)自分でたてたのか、人様にたててもらったのか気になりますが、おいしさに変わりはありませんね。
○(春生)コーヒーの香りも味もさわやかですね。季語「梅雨晴間」も生きています。
蓮の風話す形に卓と椅子 とっきー
○(敏)静かな佇まいに、一陣の「蓮の風」が通り抜けたのでしょう。
◎(仙翁)誰もいないテーブルとイス、そこに人が浮かびあがるようで、面白い。
◎(アネモネ)「話す形に卓と椅子」がいいですね。
◎(あちゃこ)季語と卓と椅子の取り合わせが絶妙。余計なものをそぎ落として、これぞ俳句‼︎うまいなぁ〜
山水の音曲がり来る睡蓮花 春生
◯(吾郎)音曲がり来るの捉え方が素敵
◎ (アゼリア) 山水の音曲がり来るー初心者の私には思いつかない巧みな措辞と思いました。
○(仙翁)山水の音とは、何か。曲がり来て、とは面白い。
睡蓮やモネの心となる夕べ 道人
○(呆夢)無駄な言葉がなくて、すっきりしていていいですね。
○(珠子)睡蓮といえばモネ。「モネのこころとなる」がいですね。
○(アネモネ)詩情のゆたかさに脱帽。
◯(あちゃこ)付きすぎ感はありますが、モネの絵の前に立った時間を思い出しました。夕べは、チョット甘いかな?
(選外)(瓦すずめ)モネの心となるのは、どんな心象なのでしょうか。興味があります。
傘の蔭半襟乱れる梅雨目線 藤三彩
◯(吾郎)あら、なんてこと❤
放埓な野池を蓮の色香かな 瞳人
〇(まきえっと)この池は確かに放埒が合っています。
○ (多実生) 何の変哲もない池が俄然蓮の花は気品を漂わします。
○(仙翁)放埓な野池に、蓮の色香の対比、面白いです。
洋館の栄枯偲べば青時雨 アゼリア
○(ちせい)季語は「青時雨」。洋館の栄枯を偲んだ。青時雨と言う季語の機能を考えさせられました。
○(餡子)どなたが住んでいらしたのでしょうか。どんな人生を送られたのかと、想像をかきたてられました。
○(藤三彩)百年建物を子孫が維持するのは難しい
○(泉)確かに寂れた洋館、という感じがします。今でも住人は居るのでしょうが。
いつ降るかわからない空濃紫陽花 まきえっと
○ (多実生) 梅雨と紫陽花、雨粒が似合うのは紫陽花です。
格子窓夏の日差しを受け入れる ちせい
○(泉)この格子窓は目立ちますね。夏の日差しだけが入って来ます。
庭滝のひかり花嫁声濡らす 珠子
水草の花黄昏は銀の雨 幹夫
◎(とつきー)黄昏に銀の雨を降らせるなん詩情満点。こう言うの大好き。
〇(まきえっと)銀の雨って素敵です。
○(ルカ)きれいな雨模様。
◎(道人)こんなに詩情豊かな梅雨の夕べは初めてです。
○(アネモネ)「黄昏は銀の雨」が上手い。
〇(宙虫)銀の雨。なつかしい響き。
ささやきはマダム・チャタレイ濃紫陽花 宙虫
○(餡子)チャタレイ夫人のラグビー邸なんですね。森番の男が出てきそうでです。
◎(敏)チャタレイ夫人と濃紫陽花、この取り合わせにはぞくぞくさせられます。「濃紫陽花娼婦夜来の雨を聞く」を思い出しました。
○(仙翁)色っぽいですね。チャタレイ夫人が椅子に座る姿、思い出しました。
◎(藤三彩)庭師は意外とモテ男なんだろうな
睡蓮の池になにかが跳ねただけ アネモネ
○ (多実生) 跳ねたのは蛙か魚、曇りの日上を飛ぶ虫を狙うのか鯉など良く跳ねます。
○(藤三彩)静けさの中、ふと音がする、余韻は何だろう
〇(宙虫)静けさに気づかせてくれる音ですね。
六月の光を集めティータイム 道人
○(ルカ)中七が魅力的。
○(春生)柔らかい光の中のティータイム、雰囲気があります。
◎(瓦すずめ)外でするお茶会なのですね。おそらくは梅雨と梅雨の合間の晴れの光が、カップや紅茶には反射しているのでしょう。風を浴び、反射する光ごとお茶を飲むのは、きっと格別なのでしょう
◎(珠子) 私にとっての写真俳句は、どうしても「説明もりだくさん」になりがちで、イメージのシンプル化が課題です。これはとてもすっきりしていて惹かれました。
○(アネモネ)「六月の光」がいいですね。
○(泉)いかにも「ティータイム」という光景だと思います。誰も居ませんが。
〇(宙虫)明るさも手伝って六月だということ忘れそう。
梅雨曇窓に映りし他人の顔 仙翁
○(ルカ)自分自身が他人に見えた瞬間。
◯(道人)梅雨時の鬱陶しくもぼんやりとした気持ちが「他人の顔」によく出ている。
○(幹夫)季語が上手に詠まれています。
○(泉)この格子窓は目立ちますね。「他人の顔」はやや不気味です。
紫陽花に立つ和日傘の乙女たち 春生
○(ちせい)季語は「紫陽花」。和日傘の乙女たちが絵に成って居ますね。季語「紫陽花」の働きでしょうか。
黒椅子や睡蓮間隔開けにけり ちせい
氷屋を見ている赤い夏帽子 呆夢
紫陽花や父いたころの父の椅子 餡子
〇(まきえっと)こういう景ってつい頂いてしまいたくなります。くすぐられます。
◯(道人)この籐椅子には「父」が合いますね。
○(敏)構図から、今は亡き人の面影が揺曳するようです。
◎(春生)「父いたころの父の椅子」の想像力に脱帽です。
○(仙翁)父親の座っていた椅子、今は主を失っている、いいですね。
○(幹夫)好感の句です。
○(アネモネ)「父」のリフレインがいいリズムです。
傾けて此の世の色の日傘かな ルカ
◎(吾郎)この世の色とはよくぞ!生きるとはこういう色か
◎(まきえっと)日傘をこういうふうに詠めるのはすごいです。
◯(道人)人生色々、洋館の主も写真家も俳優も夫々違う色の日傘を傾けて差していることでしょう。
○(敏)「此の世の色」を現実世界そのものとして一句を享受しました。
○(瓦すずめ)太陽の光を白い日傘が反射しているのでしょうか。それが傾けたために、詠み手の目に留まった、と読みました。
◯(あちゃこ)日傘の色に時代を映すとは。傾けてを持ってきた所が見事。
◎(泉)「此の世の色」という表現は、不思議でもあり、また印象的でもあります。
女梅雨思い出淡き硝子窓 敏
○(藤三彩)ロミオとジュリエットの禁じられた逢瀬のよう
◯(あちゃこ)季感の捉えかたがいいですね。硝子窓だからこそできた句ですね。
写真家の行き着く所緑濃し アゼリア
○(ちせい)季語は「緑(濃し)」。写真家の本能でしょうか。写真家の直感が緑を求めて居る。木々の音楽が聞こえる。
◎(餡子)写真家がカメラを肩に洋館やら、蓮庭やら、廻ったのですか。3枚がつながりました。 見事です。
◎(宙虫)緑のなかでカメラを構えるカメラマン。たくさんいます。
藻の茂る池に雫の落ちにけり 瓦すずめ
○(藤三彩)写真の中に微かな音を聞いたのでしょう
恐竜の貌をちらりと家守消ゆ 瞳人
◎(ルカ)恐竜が新鮮。
◯ (アゼリア) 子供達に大人気の恐竜に家守少し似てますね。そう思うと少し家守好きになれそうです。
○ (多実生) 家の中で家守なるものを見た記憶はないが家守が鰐位の大きさだったら恐ろしい。
○(春生)「恐竜の貌」と捉えた感覚の鋭さがこの句の手柄。
○(仙翁)確かに、ヤモリの顔は、恐竜に似ていますね。同じ爬虫類。
○(瓦すずめ)ヤモリが消える直前に恐竜の顔をしたというのが凄く面白いですね。
絵日傘を容れて豪商屋敷跡 珠子
◯ (アゼリア) 豪商屋敷跡と言い切って、奥行きのある素敵な句と思いました。
○(敏)過去と現在との交錯が、鮮やかに描かれているように思いました。
○(春生)「豪商屋敷跡」ときっぱり言い切ったところが良い。
紫陽花に着付直してさあ写真 多実生
◯ (アゼリア) 明るい良い写真が撮れそうです。
蓮池か軒打つ雨期の掛け椅子は 吾郎
〇(とつきー)ふふ~ん。参った!としか言えない。
アモーレの座らぬ蓮池ルノアール 藤三彩
結ぶ縁庭の浮草漫ろなり あちゃこ
緑蔭の亦其の影もゆらめけり 幹夫
○(ちせい)季語は「緑陰」。中7座5の詠みぶりが的確だと思いました。こうとしか詠めまいと思わせる迫力があります。
○(ルカ)影のゆらめきがよかったです。
お待たせしました。
今年も半分が終わり、もう後半。
まずは、梅雨明けが待ち遠しいところです。
大雨や洪水・台風も・・・。
これからです。
気を付けて、夏本番を迎えましょう。
今後とも、よろしくお願いいたします。
広島は雨は降る、蒸し暑い、という状況で夏に備える準備中です。夏には夏の楽しみもあります。九月までは続きますね。