こんばんは。控えめな紅葉祭りが各地で開催されていますね。
青空の下の紅葉・黄葉は和みます。
兼題:冬
母からの小包届く冬隣 泉
〇(春生)故郷の母からの小包の中には、母の愛情がいっぱい詰まっていることでしょう。季語が効いています。
赤チンの金の輝き冬ぬくし アネモネ
○(卯平)赤チンを塗った経験がある人でなければ「金の輝き」の発見はない。「冬ぬくし」でその色に輝きが増す。特選候補。
〇(珠子)懐かしい。そうでしたね。こんな素材もステキな句になるのだと嬉しくなりました。何十年も使ってないうちに静かに製造中止になっていたようです。
〇(あき子)幼い日のひざ小僧には、たしかに金の輝きがありました。
〇(まきえっと)膝には必ずといっていいほど、塗ってあったな。
福翁が一(ひ)イと二(ふ)冬の財布かな 瞳人
〇(藤三彩)福沢諭吉翁の一万円札が渋沢栄一の肖像に代わる。昭和も遠くなりけり。
冬めくや土偶の足の短くて 幹夫
○(卯平)土偶の足は確かに短い。漠然とした報告に詩情を与えるのは「冬めく」。若干の予定調和は感じるが。
○(敏)全くその通りですね。何度も見ていたはずなのに、「土偶の足」の短かさをはっきりそうとは認識していませんでした。
○(仙翁)確かに、土偶の足は、面白く短いですね。
◯ (アゼリア) 激しく生きて安らかに逝かれたのでしょうね。
レプリカの夫婦が笑う冬銀河 宙虫
◎(卯平)仮面夫婦の世界だろう。お互い本音を隠して笑い合っている夫婦は今時珍しくない。冬銀河で思い切った展開が。このような夫婦関係でも何処か艶があり、一方では冷え冷えした感覚がこの季語に託された。
もしあれか冬眠鼠の寝間や枯葦も 吾郎
○(餡子)鼠の冬眠・・気になり調べましたら、家ネズミはしないそうです。野ネズミは冬眠というかもぐって休むそうです。 この句のお陰で面白い勉強をしました。
ひらがなで記すゼッケン冬あたたか 楊子
○(敏)ひらがなは女文字といわれるようにやわらかで「あたたか」味がありますね。
◯(道人)「ひらがな」が「あたたか」し。
◯(ルカ) 小さいこどものゼッケンだろうか、母の一針一針が温かい。
寂聴死ス九十九回目の冬に 敏
〇(珠子)とうとう逝かれました。数え年なら100歳なのではないでしょうか。「99回目の冬に」という措辞がシンプルであたたかい。
(選外)(卯平) 寂聴関係の句の一つ。そのままでしかない・
島の宿遠き熱海の冬花火 アダー女
(選外)(卯平)演歌の世界。
玄冬や行列長き診療所 卯平
○(宙虫)コロナワクチン接種、3回目がまた始まる。おだやかな田舎の診療所を想像。
◯ (アゼリア) 風邪の流行? でも赤髭のような良い医師と考えたいです。
(選外)(藤三彩)コロナの感染者数が減少して一般診療が込み始めたのには同感します。玄冬が付きすぎなのかもしれない。
冬眠のかなわず街に迷い込む 藤三彩
◯(道人)冬眠動物に託した現代人の11月のアンニュイがよく出ている。
◎(のそう)ユーモラスですね。爬虫類にとってはきつい冬。
選外(吾郎)そうやって迷い込んだアライグマが天井裏に住み込んで毎夜運動会をやってます、困った。
宿木を仮の塒に冬の鳥 道人
〇 (多実生) 神社の大木の宿木は常緑。仮の塒も成り得ます。
◯ (アゼリア) 仮の世の宿木に仮の塒、ふと寂しくなります。
冬紅葉小さき墓の並びたる 春生
◯(アネモネ)化野あたりでようか。「冬紅葉」が素敵です。
〇(楊子)西南戦争の墓地をかってに想像しました。こちらにはあちこちにあります。守るかたも代々います。冬紅葉の赤が悲しい。
夕暮れの山の鉄塔ぴかり冬 仙翁
空堀の奈落へ墜とす冬日の斑 珠子
(選外)(道人)「奈落」の飛躍を空堀の歴史ととるか、作者の心象ととるか難しい。「冬日の斑」は中々。
美しき出前疾走冬の雷 あき子
○(卯平)美しい出前とはどういうことか。それは颯爽と自転車で街中を走っている「Uber EATS」の配達員。今のご時世で利用している人もまたこの配達員も最近多いとか。冬の雷で自転車用の先の尖ったヘルメットへ景を拡げる事が出来る。
○(吾郎)美しく──見える…黒ずくめが電動アシストのチャリで走り回ってます。時代は変わる。
短調に変わる耳鳴り冬の夜 餡子
〇(楊子)耳鳴りも長調短調と聞き分けると気分がまぎれますね。寒くなると短調に変わるという気もします。
○(アダー女)静かになるとジ~ンと聞こえる耳鳴り。それに短調と長調があるとは!でも言われてみれば確かに。
〇 (多実生) 耳鳴りを抱えていまが、意識するのは夜です。
○(宙虫)神経に触るのだろう。気分も重くなる。
○(幹夫)「冬の夜」がよくあてはまる。
したたかに試練に堪えて冬もみじ 多実生
冬麗やミレーの小さきリトグラフ ルカ
〇(楊子)農民の生活を描いたミレーの絵と冬麗がつかず離れずで、韻もいいかんじです。
◎ (アゼリア) 晩鐘かしら?小さきリトグラフが素敵です。
3分をじっと待ってる冬の蝿 めたもん
〇(仙翁)3分間、弱っている冬の蠅はじっとしていたのですね。
(選外)(あき子)蠅をみながら、作者もじっと待っている光景が見えてくる面白さ。
選外(吾郎)ウルトラマンとカップヌードルと冬の蝿の関係性を17字で総括
眼裏に踊るひかりや冬の朝 あちゃこ
豚汁と御飯が二杯冬浅し のそう
○(泉)ユーモラスな俳句だと思います。
〇(珠子)根菜たっぷりの豚汁。新米のご飯だったのでしょう。
冬灯いつも満席ラーメン屋 アゼリア
〇(のそう)ラーメン屋に灯る燈。汁を啜る音がする。
けん玉のひびく木の音冬ぬくし まきえっと
◯(アネモネ)乾いた「木の音」が聞こえて来ます。
◎(餡子)今、プラスチック製のけん玉も有りますが、どうも軽すぎてやりにくいです。やはり、木のものが一番。音といい、重さといい手に馴染んでやりやすいです。冬になると学校で休み時間並んでやりました。あの、陽だまりのぬくさが懐かしい。
〇(春生)冬の室内遊びのにぎやかさが伝わってきます。
〇(めたもん)冬はけん玉の季節。けん玉の軽やかな音と季語「冬ぬくし」がいい感じです。
◯(ルカ)けん玉の音に想いを馳せたところがよい。
○(幹夫)素敵な取り合わせ。
(選外)(アダー女)今はもう大学生になってしまった孫が「バアバは僕の親友だ!」と毎週日曜日に来てはけん玉をして競った頃が懐かしく思い出されました。
テーマ:踏む
どうしても踏めぬ結界雪女 ルカ
◎(仙翁)雪女は、結界を越えられないですか。面白い。
(選外)(卯平)全て言い切っているのでは。
落葉踏む音に追われて逃げる足 多実生
○(アダー女)なるほどねえ。人から逃げるのをその人が立てる落葉を踏む音から逃げるという鋭敏な聴覚。逃げるのは私ではなく私の足という運動機能。上手い表現がより状況を逼迫感のあるものにしたてて脱帽。
バスマット踏んで人魚が柚子を蹴る 藤三彩
また越える踏切板や冬夕焼 道人
落葉踏む陽だまりの路里ごころ あちゃこ
ミシン踏む母の背中や冬温し 餡子
○(泉)懐かしい昭和の感覚ですね。
〇(楊子)仕事や家事をする母の背中もいいものです。
◯ (アゼリア) 私の郷は以前は家内工業が多く、働き者のお母さん達は手早く家事を済ませてミシンを踏んでいました。
◯(ルカ)足踏みミシンの母の背中を思い出す。
○(幹夫)心があたたまる。
影踏んで小春日和の胸騒ぎ あき子
◎(めたもん)小春日和の中へ忍び込んでくる不安。現代人はいつも不安感の中で生きていることを思います。
○(あちゃこ)下五で何?と心が騒めきました。
散歩道足裏に秋の音を聞く 楊子
○(吾郎)落ち葉の音を足裏で聞くのが素敵
○(敏)足の裏に枯れ落葉が立てる音を聞いているのでしょう。
〇(のそう)足裏の感受性が発動し、木の実を踏んだ、あ、秋だ。
桟敷への狭き階段冬立つ日 アネモネ
○(宙虫)いつも見ている階段がより狭く感じる立冬。
〇(あき子)出番を待って狭い階段に立つ緊張感が、冬立つ日の緊張感と響きあう。
〇(まきえっと)普段なら気にならないだろう。立冬って覚悟がいります。
枝影と重なる落葉踏む小道 仙翁
〇 (多実生) 枝影も気にならぬ明るさの落葉道。
(選外)(道人)「枝影と重なる」が写生の妙。動詞を一つに絞りたいが題詠なのでやむなしか。
初霜や今朝の一歩を踏み出せば 幹夫
◯(アネモネ)白息まで見えて来ます。
女工らの越えたる峠落葉踏む 春生
◯ (アゼリア) 野麦峠でしょうか?まだ幼い少女がどんな思いで峠を越えたのか想像すると心が痛みます。
数えればさよならいくつ紅葉踏む めたもん
クリスマス踏絵の歴史ありにけり 泉
○(卯平)それなりに読ませる句。「ありにけり」で余韻を伝える。
〇(藤三彩)信仰心はなくともすーだら節で生きてゆけた歳晩のクリスマスがあった時代。狐狸庵先生が悲しむ。
喪の葉書袂へ庭の柿取りに 瞳人
◯(道人)喪中の葉書を受け取った時のショックがさり気なく描かれている。何年も会っていなくても大切な方であろう。
息白く足踏みをして始発待つ アゼリア
〇(瞳人)昔懐かしです
〇 (多実生) 遠距離通勤者の早朝です。
○(餡子)始発は5時頃でしょうか?冬の早朝は足踏みしても寒いことでしょう。
〇(仙翁)田舎の駅では、よく見るような光景です。
大白鳥池に沈みし空を踏む 敏
〇(あき子)「空を踏む」に現実感があって、静寂の池に屹立する大白鳥の姿がみえてきます。
〇(のそう)水が鏡になって居る。白鳥の下に空と言う構図がいいと思いました。
アクセルを踏み込むペダル冬ぬくし まきえっと
○(敏)最近老齢運転者によるとんでもない事故がありましたね。ハンドルを握るときは慎重な上にも慎重に。決してブレーキとアクセルを踏み間違えることの無いようにしたいものです。
踏破する歴史の重み柿落葉 のそう
僕を踏み男ら霜の夜をゆく 宙虫
○(吾郎)シベリア虜囚か? 無事に帰国の船に間に合うか?
○(餡子)一体どんなドラマの始まりなんでしょうか?サスペンスのような気もしますし、社会派ドラマのような気もします。面白い切り取り方!
〇(春生)状況が分かりませんが、現代社会の強烈な風刺画です。
〇(仙翁)僕は、霜の下の、冬草のことでしょうか。面白い。
○(あちゃこ)歪んだ男の顔がうかびます。ドラマがありますね。
未踏の地きつき熊突き血の疎み 吾郎
◎(藤三彩)熊を突くような未踏な地という設定が凄い回文。
木枯に混じる嗚咽や踏み絵踏む アダー女
◎(泉)日本にもキリスト教徒への、弾圧の歴史がありました。
○(宙虫)苦しさだけの句だが、どん底を抜ければ。
落葉踏む十万年の放射能 珠子
◎(楊子)地球規模の環境破壊を小さな季語「落葉踏む」で取り合わせてむしろ迫るものがあります。
〇(春生)福島の被災地からの声として受け取りました。
〇(めたもん)「十万年」の長さは実感が湧かないほど。それが放射能への乾いた哀しさにつながっています。
◎(あちゃこ)中七からの展開が絶妙。地球の過去と未来を想像させます。自然と人間の闘いも。
○(幹夫)地球温暖化十万年の歴史。
凩や白き車線を踏み直し 卯平
雑詠
たっぷりと冬日吸い込む白きシャツ まきえっと
◎(アダー女)「黒は熱の吸収率が高く、白は低い。」なんていう科学的実証はさておいて、洗濯され干されている白いシャツは冬の日を燦々と浴びて暖かそうなのだ。たっぷりと温かい冬日がしみこんだ白シャツとそれを着る幸せそうな人の心が感じられる素直で温かい句。
パートの主婦釣瓶落しの家路かな 泉
角の店取り壊しとか帰り花 あき子
○(餡子)コロナのせいで閉店や解体が増えてきていますね。馴染みの小さな飲み屋でしょうか?季語が切ない。
渇筆の篁牛人落葉焚き 藤三彩
○(吾郎)水墨画の鬼才、勉強になります。
◎(敏)渇筆(かっぴつ)という読み方も水墨画法も、それを良くしたという篁牛人(たかむらぎゅうじん)という人のことも、この一句で初めて知りました。斡旋された季語により画人の人柄まで窺えるように思いました。
◎(ルカ)大倉集古館に、私も彼の絵を直接見たくて、遠方だが見に行った。もっと知られてもいい画家。季語がよい。
(選外)(めたもん)今頃篁牛人記念美術館の近くは落葉焚きの雰囲気。上五「渇筆」が好きです。牛人がもっと多くの人に、と願わずにはいられません。
噛み切れずをり沢庵も茎漬も アネモネ
◎(瞳人)そうなって吾が身のことがわかるのですね
テレビ通話が踏み込んでくる冬の雨 宙虫
〇(めたもん)中七「踏み込んでくる」が的確だと思います。テレビ句会もいいなと思いつつ、踏み込まれるのはちょっととも。
寒暁やときに躓く靴の音 餡子
◎(春生)素晴らしい描写力です。生きた人間が髣髴として浮かんできます。
〇(あき子)夜明け前の厳しい寒さの中を、ときに躓く誰かの靴の音を聞きながら、仕事に向かう作者を想像しました
〇(のそう)早朝の散歩に躓きが。
〇(まきえっと)しょっちゅう躓いております。
玉子酒とろりと母のアルミ鍋 楊子
◯(アネモネ) いいですねえ。「とろりと」がなかなかです。
〇(瞳人)どうしてアルミなのかなあ、でもおいしそう
○(吾郎)昭和のぬくぬく感満載
◎(珠子)アルミ鍋にはほろりとします。何十年も使い込んだ小さなアルミ鍋。
○(あちゃこ)くたびれたアルミの鍋が全てを語っています。家族の歴史と母の思い出。
◎(まきえっと)母のアルミ鍋がいいですね。
セーターに荒むこころを隠し置く 春生
〇(瞳人)隠せればいいけど、なかなか隠せないね
○(アダー女)ふんわりと優しいセーターに身を包めば、イライラした気持ちも収まってきますよね。「セーターに」であって「セーターが」でないところに、句の主人公は、あくまで自分だというのが良いですね。
〇(めたもん)一読モディリアーニの「黄色いセーターの女」が浮かびました。セーターの中には人生の悲哀が。
午後二時のひかりの穂先冬薔薇 敏
女の業負いて尼僧の逝く枯野 アダー女
○(敏)言うまでもなく瀬戸内寂聴さんの面影が揺曳してきます。
○(餡子)寂聴さん、さようなら。枯野ではなく花野でしょう、きっと。
(選外)(卯平)尼僧に「女の業背負う」ことは織り込み済みではないか。
プリンターの調子おかしく冬ぬくし のそう
〇(瞳人)生きものみたいですね
〇(藤三彩)インクジェットはがきの年賀状を作成しようという十一月。インクは乾くし紙詰まりもするしわかります。
折り畳み傘を忍ばせ翁の忌 ルカ
○(泉)「時雨忌」とも言います。
〇(あき子)折り畳み傘の控え目な感じがいいですね。
(選外)(卯平)芭蕉忌との関係で上五中七は生きてくる。当初選を迷った。「忍ばせ」に多少の違和感が。
ネクタイの一見客とおでん酒 幹夫
◯(アネモネ)ビッグコミックオリジナルの「深夜食堂」を思い出します。
○(泉)ネクタイが、よほど印象的だったのでしょう。
○(卯平)おでん酒には不釣り合いなネクタイ姿。何処か哀しさが伝わる。
◎(吾郎)見てるとそのうちに頭に巻くから──ほらね。
〇(珠子)お客の方も逡巡しながらの店選びです。おでんで短時間でという一見さんも多いことでしょう。第6波が気になるところです。
○(アダー女)サラリーマンと思しき男がふらりおでんの赤提灯に誘われ入ってきたのか。その一見さんとなじみ客がおでんをつまみながら酒酌み交わす。なんとも冬の駅裏のジャパニーズ風景が目に浮かびますね。
〇(めたもん)飲み屋でよくこんなことがありました。景はもちろん匂いや話の内容も浮かびます。
◯(ルカ)気軽に他人と話せるのが、おでんやのいいところ。
〇(まきえっと)もうこういう景って見られないんだろうな。
地に戻す落葉の栞寂聴逝く 珠子
〇(藤三彩)寂聴さんの『源氏物語』などに紅葉の栞を挟むのですね。
◎ (多実生) 晴美から寂聴、素晴らしい変身の完結。
◎(あき子)思う存分生きて落葉の栞のように自然に還った寂聴さん。
○(あちゃこ)落葉の用い方が上手いですね。人物も浮かびます。
◎(道人)「落葉の栞」の斡旋が寂聴さん追悼に相応しい。
◯ (アゼリア) 激しく生きて安らかに逝かれたのでしょうね。
(選外)(卯平)寂聴追悼句としては読ませる句。上五が少々邪魔くさい。
爪切つて放心してゐる十一月 瞳人
〇(藤三彩)コロナ禍の一年が終わろうとしている。この一年もなだったんでしょう。
◎(宙虫)夜に切る爪。一日の疲れからか放心状態。しかし、まだ十一月。あとひと月もある・・・・。
(選外)(卯平)上五の動作に放心してゐる姿をどう読み解くか。少々言い過ぎではないか。面白い句とは思うが。
きな臭い地球憂ふる冬北斗 アゼリア
〇(春生)いつになったらこの悲惨な紛争が終わるのでしょうか。アフガニスタンを思いました。
賑わいの戻る駅なか夕時雨 道人
○(幹夫)時事に共感。
鉢植えが見てよ見てよと返り花 多実生
バリウムを一気呑みせり茜雲 卯平
○(泉)検診に対する、作者の覚悟を感じます。
綿虫を掴むふりして答待つ めたもん
◎(アネモネ)「答え待つ」に得心です。
〇(楊子)良い答えだといいですね。情景がよく表されています。
○(アダー女)どんな答を待っているのか?下世話な解釈ですが、女の答えを待つ男とみました。照れ隠し?いや所在なさに居もしない綿虫をつかむふりしている男の姿が目に見えます。特選二句選んで良いならこの句も選びたかった。
ラソシレは金管寒気晴れし空 吾郎
〇(宙虫)金管と寒気のもたらす空気感がいい。
〇(仙翁)ラソシレ、なかなかいい響きです。面白い。
◯(道人)寒晴れの空に響き渡る金管楽器の音。トランペットであろうか。気持ちのいい回文句。
〇(まきえっと)冬の乾いた空気には「ラソシレ」が合いそうです。
◎(幹夫)見事な回文!
老猫の眠る眠らず日向ぼこ 仙翁
〇 (多実生) 眠りと日向ぼこ、特に初冬の猫の姿。
◯(道人)作者も老猫も、眠っているような眠っていないような昼下がりの日向ぼこ。
〇(ちせい)うとうとしている猫。庭の日差しが濃い。
鬩ぎ合う黒き海原冬銀河 あちゃこ
☆☆次回をお楽しみに。
第465回小麦句会選句(幹夫)
短調に変わる耳鳴り冬の夜
○(幹夫)「冬の夜」がよくあてはまる。
けん玉のひびく木の音冬ぬくし
○(幹夫)素敵な取り合わせ。
ミシン踏む母の背中や冬温し
○(幹夫)心があたたまる。
落葉踏む十万年の放射能
○(幹夫)地球温暖化十万年の歴史。
賑わいの戻る駅なか夕時雨
○(幹夫)時事に共感。
ラソシレは金管寒気晴れし空
◎(幹夫)見事な回文!
あちこちの句会に駄句を出しても無反応、こんなのという(蔑まれた?ような)表情ばかり、それをここに出すと、時にあっと驚く評に出会います。
それは、作者の一句に込めた思いを図星で読み取ってくれて。今回三句ともそのような状態にて、胸の底から呻いた次第です。
広島は次第に冬らしくなって来ました。しかし、今年はまだまだ暖かいと思います。九州場所と日本シリーズが終われば、いよいよ冬です。それにしても、鈴木選手が大リーグへ行くのは、残念ですが活躍して欲しいものです。