こんばんは。
お待たせいたしました。
12月にしては暖かい一日でした。
1年お世話になり、ありがとうございます。
2017年が良い年になりますように。
兼題:冬
デンキブラン蛍雪灯す幸之助 藤三彩
冬帽子脱いで仏の前に立つ まきえっと
○(幹夫)日本人の信心深さが詠まれており共感しました。
○(ちせい)季語は「冬帽子」。仏壇の前だとか、遺影の前だとか、言外の内容を想像してみました。
(選外)(瓦すずめ)寒い中外から帰ってきてすぐ、ご仏前に行く。素敵なことですね。
まうすこし夢の続きを冬の朝 幹夫
○(泉)冬の朝は、なかなか起床できません。実感します。
下校の子冬田に影を遊ばせて 春生
◎(アネモネ)「影を遊ばせて」が上手い。
◎(幹夫)寒さなんか吹っ飛ばせえ!とは晴天の冬田。元気に遊ぶ下校時の児童の景が佳く詠まれており好感です。
◎(瓦すずめ)きっと複数人で帰っているのでしょう。影を遊ばせてというくらいだから、腕を振り回したりなんかして。賑やかでかつノスタルジーを感じる光景です。
◎(まきえっと)「影を遊ばせて」がよいですね。こういう経験はありませんが、優しい色で包まれています。
〇 (多実生) 刈入れの終わった田圃の広場。打ち放題投げ放題も思い出です。
〇(仙翁)こんな風景、昔はよくあったような。
◯ (アゼリア)畦道を友達と遊びながら帰って来たことを懐かしく思い出しました。
家事疎し仲持つも悲し冬至か 吾郎
◯(道人)家事の出来ない男の家庭内哀歓が滲み出て共感を覚えます。せめて柚子湯くらいはやって見せたいですね。味わい深い回文句。
◯ (アゼリア)冬至の季語が効いていると思います。
◯(宙虫)家事の分担は大事。
起重機の鋭角冬の虹架ける 珠子
◎(敏)一読、わが家近くの再開発の地に林立する起重機を思い描きました。それを見た時は冬虹ではなく、冬満月でしたが、実感迫る一句です。
◎(ルカ)たくましい起重機に、はかなき虹がかかる。いい景です。
◯(吾郎)そう見えたんだ…。曲線とエッジがいい案配
鬼平の皺も見納め冬の月 瞳人
メイドイン刑務所の椀冬日影 あちゃこ
◎(餡子)家にも、どういう訳か囚人の造った「鏡台」と「文机」があります。腕は確かです。透かし彫りなどもあって、芸術的です。誠意と努力が感じられます。私が物ごころついたころからありましたから、70年はたっているんですよね。
〇(瓦すずめ)窓から光が注いでお椀に注いでいるのでしょうか。罪を犯し償おうとしている人たちが作ったお椀が光る。肌に感じる寒さと相まって色々考えさせられます。
○(春生)句材の新鮮さに魅かれました。
〇(まきえっと)目のつけどころが新しいです。
(選外)(道人)「メイドイン刑務所」の発想が奇抜で面白い。季語も温かい。
車窓にはあくびせし吾冬ざるる 瓦すずめ
○(珠子) 北のふるさとへ向かう新幹線の中のわたしみたい。
◯(宙虫)退屈は退屈を呼び、がたんごとんと鈍行。。
手水場の褪せた手ぬぐい冬ざるる 餡子
◎(春生)中七「褪せた手ぬぐい」が季語「冬ざるる」と響き合っています。
○(あちゃこ)手ぬぐいの一年が垣間見られ、感慨がわきます。お疲れ様!
◯(道人)今は住む人のいない寒村の実家の洗い場の景であろうか。「褪せた手ぬぐい」に共鳴。
切り売りに出され冬菜の影薄し 敏
◎(藤三彩)白菜4分の1カット、キャベツ、大根半分、財布の紐が締まります。
○(あちゃこ)キャベツ?白菜?切り売りは、本意では無いでしょう。確かに。
持ち味は、丸ごと味わってこそです。
○(春生)目の付け所が見事。発見があります。
選外(吾郎)今年は葉物は高いからなぁ、それでいて時間が経つと売れないし
大学の厩舎に冬を越すつばめ アネモネ
◎ (アゼリア) 共存共栄? 大学の厩舎というのがまた心温まります。
○(ルカ)大学の厩舎、つばめを温かく見守ってくれそう。
○(ちせい)演歌の「越冬燕」などが思い浮かびました。
冬かもめ青春へゆく時刻表 宙虫
○(あちゃこ)一人飛び乗る夜行列車の時代があったなぁ。好きだった人に会いに行くのでしょうか?
○(珠子)「青春へゆく時刻表」この省略が力強い。季語もいい。
○(餡子)アルバイトをしては旅に出ていた私にとっても、時刻表はまさに青春!!本屋さんに今も積んであるので、このIT時代に誰が使うのだろうかと不思議に思ったのですが。
〇(まきえっと)「青春へゆく時刻表」やっぱり「時刻表」ですね。
やまびこの名所に立てば冬木の芽 多実生
◎(宙虫)広がりの大きな句。未来もあっていい。
冬の日に信心起こりお経聞く ちせい
ゆっくりと色を失う冬の虹 仙翁
〇 (多実生) 虹の消えるのをしっかり確認した記憶はないが全くこの通りです。
◯(吾郎)寒さの中にもゆったりとした時間、いいですね。
冬木の芽ふくらみ温し銀の靄 とっきー
冬夕焼どこまでもゆく三輪車 ルカ
◎(吾郎)いいなぁ、赤い夕焼けにほっぺも赤い一本道。昨今は曲がり角が危ないからなぁ。
〇(瓦すずめ)寒いさに負けず、懸命に漕いでいる様子はほほえましいですが、夕方なのでどこか心配になります。
(選外)(道人)冬夕焼の薄き橙と三輪車の赤の色合いと景の大小、微妙なコントラストが佳いですね。
難民や故郷捨てて冬の海 泉
○(藤三彩)クルージングの地中海旅を愉しむ富裕層もいれば、置き去りにされる避難民の悲報が入る。痛哭な人事句。
閉店セールのすかすかの棚冬日淡し アゼリア
目当てなき自由探索冬日没る 道人
〇(仙翁)何とはなしに歩いていると、日も暮れる。
テーマ:何か忘れたような
寒風や恥を忘れたカジノ法 泉
○(藤三彩)オリンピック開催に向けてのIRカジノなんだろうが、国民のためじゃない裏を文春さんがすっぱ抜くか。
○(餡子)あまりにも、国民をばかにしていると思います。怒りをどうすればいいのか分からないうちに、するすると・・・・。
(選外)(幹夫)賛否両論のIR推進法案成立ですね。
極月の再告どこかにマイナンバー 藤三彩
○(泉)そう言えば、マイナンバーってありましたね。私の番号は分りません。
トリスぐい飲み鍋並の胃薬と 吾郎
○(藤三彩)よーくできた回文に感心。
○(餡子)忘年会シリーズ。胃薬は必携です。
○(敏)私も大好きなトリスですが、鍋並みの胃薬を用意しての「ぐい飲み」っていったい何杯くらい飲むつもりなのでしょう。愉快な回文句。
〇(まきえっと)「放題」という時代には薬は絶対です。
遠き日の小さき恋や薮柑子 とっきー
◎ (多実生) 浮かんでは消えて行った小さな恋。数多くあり見逃がされる藪柑子でぴったりです。
〇(ルカ)小さき恋、自分の心も小さかったころ。
◯ (アゼリア) 宝のような思い出ですね。藪柑子の季語がぴったりです。
「切り札」を名乗る奴めと忘年会 瞳人
◎(ちせい)季語は「忘年会」。「切り札」と言う言い方が衝撃的だと思いました。
初氷以下空白の備忘録 敏
◎(道人)「初氷」では手も脳天も悴んで、備忘録も白紙でしょう。季語の斡旋、取合せ、省略の効いた調べとも佳いですね。テーマ詠としても秀逸。
○(あちゃこ)季節の変化を記して終わる日が増えていくのは、寂しかったりうれしかったり?心次第ですね。
○(アネモネ)なかなかの俳味だと思いました。
〇(まきえっと)取り合わせが素敵です。
電線に枯れ蔦ここが祖父の郷 瓦すずめ
〇(瞳人)祖父恋し、というせつなさです
◯(宙虫)季語が少しつきすぎかもと思うが、電線と祖父はいい塩梅。
寒月の湖にぽっかり竹生島 幹夫
置き去りにしたかされたか枯野道 ルカ
○(アネモネ)所在なさが伝わってきます。
〇 (多実生) ひとり彷徨うこんな経験も思い出です。
〇(仙翁)枯野が残されたのか、枯野に残されたのか。
生湯葉のかろきのど越し年つまる アネモネ
○(藤三彩)生湯葉って京料理なのかも。おせち料理の正月が近い。
◯(吾郎)そうやって年を経ていく。忘れちまっていいんです、つまんないことは。
落葉踏みて恥ずかしきこと思い出す 仙翁
冬越や栗鼠の忘れし野菜屑 あちゃこ
○(幹夫)小気味よいリズムで詠まれていると思いました。
忘年の句会リックの軽さかな 多実生
七曜を問うて問わるる年忘れ 道人
○(アネモネ)自分のこと云われているようで・・・。
○(餡子)我が家の生活の一齣を言い当てられました。
鐘の音やたちまち消ゆる冬夕焼 春生
〇(仙翁)確かに、冬の夕焼けは消えるのが速そうな。
○(ちせい)季語は「冬夕焼」。たちまちと言う言い方が気に掛かりました。
第三の矢落ち葉に埋もれ焚かれけり アゼリア
◎(泉)安倍総理の第三の矢。今は全く聞きません。何処へ行ったのでしょうか?
(選外)(道人)現政権の成長戦略の第三の矢は何だったんでしょうか?つい忘れがち。新聞も焚火ならぬ、焼却されたかも。再生されれば良いですが。
生家なき故郷鵙の贄乾く 珠子
○(アネモネ)とてもいい取り合わせだと思いました。
○(幹夫)テーマ「何か忘れたような」に季語「鵙の贄」がよい塩梅の取合せで詠まれていると思いました。
○(敏)喪失感の滲み出た作品。「鵙の贄乾く」に、なんとも言えぬ感慨が込められているようです。
◯(道人)懐かしい生家の記憶も途切れがち。思い出すのはよく聞いた鵙の高音。「贄」は「記憶の断片」でもあるのかも知れない。
月末は忘却多し冬林檎 ちせい
ダンススクールの少女が抱いている冬灯 宙虫
〇(瓦すずめ)意味は具には解っていませんが、ダンスの最中にセットの一部である街灯(を模したもの)を抱いたということでしょうか。神秘的な光景です。
(選外)(道人)少女が何を忘れたのか分かりませんが、ともかくポエジー豊かです。
鴨鍋に何か足りないけれど何 餡子
○(アネモネ)最後の「何」に至るまでのリズムがなかなか。
〇(瓦すずめ)とぼけた言い方が好きです。鴨鍋に何を入れ忘れたんでしょう。鴨を入れ忘れたなら面白いですね。
◯(吾郎)あはははは、鴨だったりして。
冬北斗差出人を書き忘れ まきえっと
○(泉)そろそろ私も・・・。ともあれ、ユーモラスな俳句だと思います。
〇(瞳人)ついに、やりましたか、私もすぐかと
○(春生)これは大変。投函したポストをじっと見ている作者が見えるようです。
雑詠
おでん串ぽつぽつ星をつっついて 宙虫
〇(瓦すずめ)屋台でおでんを食べているのでしょうか。寒い空気の中に串をさらし、星をつつくように突き出す。なぜそのようなことをするのか、分からないのですが、でもなんとなくやってみたくも思います。
◯(吾郎)こういう屋台で燗酒と大根と玉子。いいなぁ
(選外)(幹夫)ネット炎上!コンビニのおでんツンツン男を連想しました。
寒卵懐に抱く闘争心 まきえっと
(選外)(道人)冬に対してだけでなく、何か気概が伝わって来る。中七を介して「寒卵」と「闘争心」の取り合わせが巧い。
ゆったりと生きて此岸の師走かな 道人
〇(瞳人)そういう気持ち、危ないと思いつつ、また一杯
〇 (多実生) この年になると師走の実感も薄いですね。
○(敏)誰もが忙しいと感じる師走に、「ゆったりと」生きる気概を羨ましいと思いました。「此岸」は「ただいま現在の私のいる所」と受け取った次第です。
闇汁やピンチをチャンスにすることも とっきー
○(春生)雰囲気が出ています。
◯(アゼリア)こうありたいです。
○(ちせい)季語は「闇汁」。志の高さを感じました。
(選外)(藤三彩)戦後の焼跡闇市派に高度経済成長期があり、よかった時代か。
引き返す時を過つ大枯野 餡子
◎(仙翁)人生は引き返せないか。どんな大枯野か?
陰日向ないと装う年の暮 多実生
凍て空の聖地を巡る案内図 あちゃこ
○(餡子)「君の名は。」の聖地巡りが流行っているようですね。
海の香の荷物の届く師走かな 春生
○(幹夫)所謂お歳暮、自然に詠まれており好感を持ちました。
○(ルカ)私も、そんな荷物を待っているところです。
楽しきこと先ずは書き込む新暦 アゼリア
○(藤三彩)句会や投句の締切を書き込み・・苦会なんですが
○(幹夫)納得の内容が詠まれています。
〇(瞳人)これです、まったく
〇(ルカ)かくありたいですね。
〇(まきえっと)本当にそのとおりです。
選外 (多実生) 予定の書き込み私もこの通りです。
寒げいこ龍が来るなら打ち殺す 瓦すずめ
○(珠子)この断定の小気味よさ。ちびっこの稽古でしょうか。
○(泉)何だかアクション映画の様ですね。勇ましいと思います。
含羞を秘めて散りゆく落葉かな 仙翁
◯(道人)落葉には「含羞」はよく似似合う。
極月や会ふ人毎のそんな顔 瞳人
◎(珠子)「会ふ人毎の」「そんな顔」って!こういう見方・切り取り方ができたら俳句は楽しくなるハズ!私には程遠いですが、いいなあ。
枯木星三つ数へて帰りけり 幹夫
○(珠子)中学生の部活の帰りのような。この場合の「三つ」は動かないでしょう。シンプルでさわやかです。
考えのまとまらぬ日のおでんかな ルカ
○(春生)おでんを食べても、考えはまとまらないかも、でも、慌てるなかれ。
○(敏)ホントにその通り! 私もいつもセブンイレブン作を愛用しています。
○(ちせい)季語は「おでん」。おでんで気散じになったことが推測されます。
◯(宙虫)よくわかる気分。
師走やも定款書いて燃やす和紙 吾郎
○(珠子)定款も約款も取説も大の苦手です。「わかりやすく説明する力のない方の文章」だと思うことにしています。わかりやすく書こうと努力している過程でもないでしょうが、何か問題が発生した訳ですね?
○(敏)新しい年に向かって、古い定款を燃やして独立でもしようという魂胆かも知れませんね。
朝粥や窓に校歌の山眠る 珠子
◎(あちゃこ)校歌には、故郷の自然を歌詞に載せているものが多い。この句の山は折ある毎に眺めた山なのでしょうね。
生気を失った山にも生の息遣いが感じられます。朝日にきらめく山の美しさ。
◯(道人)静かな冬の朝の日常を切り取って味わいあり。「校歌の山」は郷愁ともとれるが、作者の場合、故郷に根ざした生活をされているのでしょう。
通夜葬儀欠席続く師走かな ちせい
〇(瞳人)それでいいと思うようになりました
日記買う文具屋消えし海馬地図 藤三彩
煩悩も老いてゆくなり除夜の鐘 泉
◎(瞳人)新しい年より振り返ること、その方が心安らぐ、という枯れた心のさみしさをつい思ってしまい
〇 (多実生) 何もかも老いて除夜の鐘の感動も薄れました。
〇(仙翁)煩悩も老いますか。老いても煩悩は消えませんね。
◯ (アゼリア) 共鳴の一句です。
◯(宙虫)老いる煩悩が面白い。
(選外)(道人)毎年同じような煩悩を抱えて、除夜の鐘を数えながら新年を迎える。考えて見れば、108の煩悩の大半は身体とともに老いて行く、当たり前の様でありながら感慨深い。
(選外)(まきえっと)会社の私の隣の席の人が、わんこそばを108杯で止めた話を思い出しました。
弁当の保温確かに深雪晴 アネモネ
○(泉)愛妻弁当でしょうか。ともかく、暖かい弁当は嬉しいものです。
〇(ルカ)この弁当を持つ人に、想像がふくらみます。作った人にも。季語がいいですね。
裸木やネオンに絡まれあかくなる 敏
○(あちゃこ)クスリとさせられる一句。
私には、着飾られて淋しさが増幅するという句がありますが、なるほどこう来るか、と発想にハッとさせられました。
楽しく投・選句ができました、下手な投・選句ながら。
さて、今年の最後、まさかと思うような選句・評に出会い、驚愕の思いです。
前書・注なり付いていればともかく、わかりにくそうな句に、よくもまあ、と。今宵は温め酒に、とろけます。
ありがとうございました。
今年一年、大変お世話になりました。まきえっとさん、宙虫さんのご苦労は大変な事だろうと、いつも感謝しております。来年もよろしくお願いいたします。