YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

オーストリアの旅~あの照井さんとウィーン駅で再会

2021-08-14 14:46:48 | 「YOSHIの果てしない旅」 第4章 西ヨーロッパ列車の旅
△ヘルシンキ港にて~右が私、左はソ連からマドリードまでの旅の友の鈴木

・昭和43年8月14日(水)晴れ(あの照井さんとウィーン駅で再会)
 翌朝、顔を洗っていたら騒いでいた彼等に、「貴方は何人か」と聞かれた。「私は日本人だ」と言ったら、彼等はそれ以上の事は言わず、黙って行ってしまった。又、何人かの人に、「昨夜はよく言ってくれた」と握手を求められた。
昨夜の様に外国に来て、英語で5~6人のドイツ人に注意を言えるようになった事に、私自身が驚いた。どこからそんな勇気が沸いて来たのであろうか。『私も随分成長した者だ』と自分で感心してしまった。
 2日間滞在しようかと考えていたが、ユーレイルパスの有効期限の事を考えると、ゆっくりも出来ないので、ウィーンを1泊滞在しただけで、ユースを去った。
 ウィーン中央駅構内で時刻表を探していたら、モスクワのロシアホテルで大いに語り合い、7月23日にストックホルムで別れた、あの照井さんが私の前を宛もないように歩いていた。偶然と言えば、全くの偶然であった。広い欧州でこんな事があり得るのであろうか、信じられなかった。鈴木と別れて以来、1人旅の寂しさ、そして暫らくの間、日本語を話してないので心境を分ち合える照井さんを見付けて、私は非常に嬉しかった。
「照井さんー」と、私は大きな声で呼び掛けた。彼もこちらを振り向き、「あぁ、Yoshiさん」と言って一変に顔が赤くなり、安堵感が漂ったように見えた。照井さんも不自由な、そして孤独な旅を続けている様子を感じ取った。我々は互いに硬い握手で再会を喜び合った。私は鈴木と二人でストックホルムからオスロへヒッチで行く事を決めてしまった経緯があり、ストックホルムで照井さん(仮称で以後、敬称省略)を切り捨てる様な別れ方をしたので、元気で再会が出来て本当に良かったと思った。
「照井さんはこれから何処へ行く予定だったのですか」と私は彼に聞いた。
「うん、オーストリアの田舎の方へ行こうかと思っているのです」と彼。
「私もオーストリアの地方へ行って見たいです。2・3日一緒に旅をしませんか」と私。
「そうしましょう。私もYoshiさんと共に旅がしたいから」と言う事で話が決まった。そして、今夜の9時45分発Lindau(リンダウ)行きの列車に乗る事にした。リンダウはオーストリア、西ドイツ、スイス国境にあるボーデン湖近く、オーストリアから西ドイツに入った国境の町であった。
 私は照井からソ連のツアー仲間のA子さんの消息を聞くことが出来た。彼の話しによると、「A子はアメリカ人か欧州人か分らなかったが、青年と共に旅をしていた。しかし彼女はもう疲れきった様子で、何度かやられている、若しくは身を売って旅をしている様であった。いずれにしても分ったものではない」と言う事であった。
彼は或る所で彼女を見て(彼女と会って)、彼の感じで私に話をしたのであるが、『やはりそうであったか』と私も想像が出来た。何故なら、私は彼女と会い、そして話して行く内にいつかその様な事もあり得るだろう、と言う必然的なものをその時に感じ取っていたのだ。
 私と照井は駅を出て、近くの公園ベンチに腰掛けて話しをした。それにしても気が知れている者同士で語り合うのは本当に楽しかった。暫らくすると同年輩風の2人の日本人がやって来た。我々は直ぐに彼等と打ち解け合い、そして色々な事について3時間以上に渡って話し合った。
例えば・・・「欧州の公園について」(その素晴らしさ、市民に開放的な管理、それに対して日本の公園の狭さ、貧弱さ、そして閉鎖的でお金を取る所が多い事等)、「ヨーロッパの建造物について」(全ての建物に歴史があり、文化があり、又芸術的に富んで素晴らしく個性がある等)、「日本人旅行者、特に団体旅行者について」(彼等の品やマナーの悪さ、田舎者丸出し行為、外国に対する無知、もっと目を世界に向けるべき等)、そしてベトナム戦争、核・安保・防衛問題、学生運動等々について話し合ったのでした。
結論として、「日本人は、もっと心の豊かな人間にならなければいけないのではないか。毎日コセコセと働いているばかりでは駄目なのだ。のんびり公園等で一時を過ごす事も必要なのではないか。或いは、暇な時にはパチンコ、テレビ、マージャン等に夢中になっているが、もっとする事が他にあるのではないか」等々であった。
 夜、私と照井は午後9時45分発のリンダウ行き列車に乗った。『暖房』が効いていて、夜行列車の旅は快適であった。


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