「久し振りだね。十年振りかな」
「懐かしい。最後に逢ったのは、確かイスタンブールの市場」
「トルコに行った事はない。マナウスのバーで、何度も呑み明かした」
「ブラジルは知らん。蘇州の寒山寺を覚えているかい」
「中国には縁が無い。シベリアで、キャビアを食べながらウォッカを呑んだ」
「ロシアなんて、写真で見た事すらない。ところで、此処は何処かね」
「アンドロメダ星雲の重力圏内。同じ宇宙船に乗せられた」
「何故、十年間の記憶が無いのだろう」
「記憶を抹殺されたか、或いは」
「あかの他人かも。それなら、初めましてと云うべきだ」
「初対面の挨拶は、お互いの素性が判明してからだ」
「そう云われてみれば、口が無いのに何故話せるの」
「君こそ。耳が無いのに聴いてる」
「目が無くても、僕の顔が見える様だね」
「だんだん、体が重くなって来た」
「後十秒で、巨大な重力のブラック・ホールに突入する」
「いや七秒。別れの言葉を云う場面だ」
「後五秒という時になって、形而上(けいじじょう)学的な疑問が生じて来るなんて」
「後三秒。今生(こんじょう)の名残に、是非教えてくれ」
「トルコとマナウス、蘇州とロシアで逢った二人は、一体何処の誰だったんだろう」
「懐かしい。最後に逢ったのは、確かイスタンブールの市場」
「トルコに行った事はない。マナウスのバーで、何度も呑み明かした」
「ブラジルは知らん。蘇州の寒山寺を覚えているかい」
「中国には縁が無い。シベリアで、キャビアを食べながらウォッカを呑んだ」
「ロシアなんて、写真で見た事すらない。ところで、此処は何処かね」
「アンドロメダ星雲の重力圏内。同じ宇宙船に乗せられた」
「何故、十年間の記憶が無いのだろう」
「記憶を抹殺されたか、或いは」
「あかの他人かも。それなら、初めましてと云うべきだ」
「初対面の挨拶は、お互いの素性が判明してからだ」
「そう云われてみれば、口が無いのに何故話せるの」
「君こそ。耳が無いのに聴いてる」
「目が無くても、僕の顔が見える様だね」
「だんだん、体が重くなって来た」
「後十秒で、巨大な重力のブラック・ホールに突入する」
「いや七秒。別れの言葉を云う場面だ」
「後五秒という時になって、形而上(けいじじょう)学的な疑問が生じて来るなんて」
「後三秒。今生(こんじょう)の名残に、是非教えてくれ」
「トルコとマナウス、蘇州とロシアで逢った二人は、一体何処の誰だったんだろう」