明澄五術・南華密教ブログ (めいちょうごじゅつ・なんげみっきょうぶろぐ)

明澄五術・南華密教を根幹に据え、禅や道教など中国思想全般について、日本員林学会《東海金》掛川掌瑛が語ります。

なぜ康煕字典の画数を使うのか? 明澄五術『子平姓名大全』 

2018年08月17日 | 五術

 なぜ「姓名学」や「姓名判断」に康煕字典の画数を使うのか?について、まだまだ判っていない人がおられるようなので、『子平姓名大全』から引用して説明します。


(以下 明澄五術全集第六巻『子平姓名大全』「序論」より)

 現在行なわれている「画数」による「姓名学」は、中国・清朝時代の康煕(こうき)五十五年(一七一六)に『康熙字典』が完成してからその拠りどころが生まれ、乾隆時代(一七三六~一七九五)ごろ世に出たものです。

 

 「姓名学」には、「数」「形」「音」「義」という四つの要素がありますが、

当初、その重要度は、

 

       第一に「数」(文字の画数)

       第二に「形」(文字の形)

       第三に「音」(音声)

       第四に「義」(文字の意味)

 

 という順序になっていました。

 当時の中国は、識字率が十%という状態で、漢字の意味を理解する人は少なく、「画数」によって姓名の現象を探究する方法は、ただ実状と一致していれば、因果関係が不明だと文句を言う人もいません。

 また、文字を見て受けるイメージというのは、文字の形が尖っているとか、丸みがある、というような、文字を知らなくても解る感覚的なものに限られました。

 すると「イ」(にんべん)のように、もともと人間の意味でありながら、刃の形というイメージから刺々しい感じを与え、「イ」を含んだ名前を持つ人は闘争的になりやすい、というように、漢字本来の意味とは無関係に、「字形」の「姓名学」が発達しました。

 なにしろ漢字の意味がわかる人が圧倒的に少なかったのですから、「字義」というのは「字形」や「字音」よりも重要度が下だったのです。

 

 ところが、現代ではこの順序は逆転してしまい、次のようになってしまいます。

 

       第一に「義」

       第二に「音」

       第三に「形」

       第四に「数」

 

 特に現代の日本のように、ほとんどの人が漢字を読め、意味も解るようなところでは、「姓名」にとって「字義」がほとんど決定的な要素を持つようになります 

 

 ところが、「ひらがな」や「カタカナ」だけで名前をつけますと、ほとんどその音声が与えるイメージだけで、名前の良し悪しが決定するようになります。

 「音声」によるイメージというのは、現代の日本のように、普段の生活や、放送、通信など、漢字をイメージするひまもなく、音声だけで名前を認識する機会が多いところでは、「字形」や「画数」よりも重要な要素になるのは当然と言えます。

 さらに最近では、漢字の意味を無視した名前が多くなったり、外国からの移民など、漢字の意味を知らない人も多くなり、重要度は次のように変化しております。

 

   第一に「音」

   第二に「義」

   第三に「形」

   第四に「数」

 

 かつて、日本の「姓名学」では「画数」ばかりが取り沙汰されておりますが、むしろ現代の日本では「姓名」を考える上で「画数」は小さな要素であり、以上のような考え方で、「姓名」を考えてゆかなければなりません。

 

 

(以下 明澄五術全集第六巻『子平姓名大全』「一、字画による姓名の見方」より)

 

    なぜ『康熙字典』の画数を使うのか?

 

 前述のように、姓名を判断するための要素は、「数」「形」「音」「義」に分けられます。「数」というのは、もちろん文字の画数のことですが、「姓名学」で言うところの画数というのは、実際に書かれている文字の画数とはあまり関係がありません。

 

 もともと「姓名学」の成り立ちは新しく、『康熙字典』が世に出た十八世紀以降のものであり、画数の数え方も『康熙字典』に従って分類し、かなり強引にデータを取って、いろいろな姓名と事象とを観察した結果として、良い画数、悪い画数、画数の組み合わせによる吉凶や象意などが決められてきたのです。つまりこの方法からすると、「数」とは言っても、本当は「数」自体に吉凶や象意があるというわけではなく、『康熙字典』に分類されている、ある文字とある文字を組み合わせた結果、ある画数の名前は吉作用が認められ、ある画数の名前には凶作用が認められた、ということですから、実は画数による姓名学は、『康熙字典』の画数を利用して文字を分類し、それらの文字の組み合わせを「数」という形で見ているというのが実態なのです。

 

 現在、日本では画数の数え方について、大きく康熙字典派と筆画数派にわかれておりますが、以上のような理由から、康熙字典派が正しいことは当然と言えるでしょう。

 

 ところが、康熙字典派にも大きな弱点があります。

 

 第一に、康熙字典派は、「サンズイ」を四画、「草カンムリ」を六画、などのように変則的な数え方をしております。これは『康熙字典』の部首索引で「サンズイ」を「水」と同、「草カンムリ」を「艸」と同、としているために、初期のデータを集めた人が、『康熙字典』では画数をそのように数えるものとカン違いしてしまったものと思われます。

 なぜそんなことが言えるのかといいますと、例えば、非常に有名な例で、「酒」という字は「酉」部の三画に分類されています。また「洛」という字は「水」部の六画に分類されていますが、同じ「洛」を含む「落」という字では、「艸」部の九画に分類されています。すると「サンズイ」は、部首であれば四画で、部首でなければ三画、という変なことになってしまいます。

 さらに、「英」という字は「艸」部の五画に分類されていますが、「瑛」という字では、「玉」部の九画に分類されていますから、「草カンムリ」は筆画どおり四画に数えています。

つまり『康熙字典』の「部首索引」では、「サンズイ」を四画に数えろとか、「草カンムリ」を六画に数えなさい、と言っているわけではなく、それらの部首がどこに分類してあるかを表示しているだけなのです。

 ならば、「サンズイ」は三画に数え直すのかと言うと、そういうわけでもありません。何故なら部首の「サンズイ」を四画、部首でない「サンズイ」は三画に数えて、データを取った結果として、今も伝わっている画数の吉凶や象意があるのですから、やはりそのまま認めるしかありません。

 

 第二に、日本では『康熙字典』にはない、独自の平仮名やカタカナ、さらに国字と呼ばれる日本製の漢字もあり、その画数をどう数えるかが問題です。

 平仮名の画数となると、筆画数派にとってすら困った問題で、国語審議会でも、平仮名やカタカナの画数についての公式見解がありません。結局、新たなデータがない限りは、そのまま筆画数で取るより仕方がありません。同様に「国字」と呼ばれる「榊」「辻」「峠」などの漢字も『康熙字典』にはありませんから、筆画数で数えることになります。

 

 第三に、康熙字典派がよく間違えているのが漢数字の画数で、一から十までの数については、字画数ではなく、その数字の数をそのまま画数に取っております。これは画数の姓名学の根拠を「数霊」に求める考え方から来るものです。ところが、四から十までの漢数字は、もともとは数字ではなく、四は死、五は誤、六は禄、七はあいくち、八は背中、九は杖、十は十字路、というように、本来別の意味の漢字を借りてきて数字として使ったものです。従って、もしいま仮に「数霊」というものを認めたとしても、これらの漢数字には「数霊」が宿るはずがありません。

 

 「姓名学」で「数」を扱うとき、『康熙字典』の画数を使わざるを得ないのは、以上のような理由です。もしこれを変更するのであれば、膨大なデータと長年の観察とが必要になってきます。今からそれを始めたとしても、我々が生きている間にそれを使える可能性は全然ありません。

 

 経済学者のフリードマンは、あらゆるデータを統計化した実績により、ノーベル賞を受賞しましたが、その統計のなかには、因果関係の分からないままに、多くの結論が出されております。  

 例えば、売春が公認された社会ほど治安が良く、売春の取り締まりが厳しい社会ほど治安が悪くなる、とか、医師免許制度が厳格な国ほど医療事故が多く、ニセ医者が横行する国ほど医療事故が少ない、など、常識で考えたら意味が解らないが、結果は確かにそうなっているということがあります。

 

 こうして見ますと、画数による「姓名学」なるものは、西洋科学的、還元主義的な見方からすればまったく根拠に乏しい方法ですが、数そのものに意味がある、つまり「数霊」が存在するというような考え方ではなく、ただひたすら文字を分類してデータを取った結果と考えるなら、現代科学と言えども、やみくもに画数の「姓名学」を否定しきれないことになります。

 

 

 

くるみ綴じ製本

   『子平姓名大全』
 
       ¥15,750(税込)

 日本で「姓名学」と言えば、画数による姓名判断ばかりが跋扈しておりますが、姓名には「数・形・音・義」という四つの要素があり、現代の日本では、画数という要素は優先順位を下げており、「数・形・音・義」に精通しませんと、姓名鑑定など到底勤まりません。

 本書では子平の理論に基づき、姓名の「数・形・音・義」すべてについて詳しく解説しており、姓名鑑定家にとって座右の書と言うべきです。

 

 

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