念坊ひとり旅

　　　　一行詩
春の野や鳥も人らもあそびけり
買ふもずく裏に海雲と字のありて

　　　　川　柳
使ったカネ回ってこない天下の嘘

念坊ひとり旅

　　　　一行詩
春の日や隣の人の旅の本
春の闇五時にはすでに日に染まり

　　　　川　柳
液状化議事堂あたり欺瞞露出

念坊ひとり旅

　　　　一行詩
春の虹むきあうまえに退散し
屋上の照明了へし春茜

　　　　川　柳
赤い糸切れてしょんぼり恋心

念坊ひとり旅

　　　　一行詩
散策に素手でまにあふ春日かな
故郷の在る方角へ行く雁見

　　　　川　柳
イヤホンに笑いを誘う志ん生

念坊ひとり旅

　　　　一行詩
低けれど目の届く子らの山遊び
久々の住職老けて仏生会

　　　　川　柳
三日月に向かって老いの放物線