念坊ひとり旅

　　　一行詩
端居より月を眺めて幾夜かな
肌ぬぎの父の傷痕垂れにけり

　　　川　柳
打ち水をよけながら入る古割烹

念坊ひとり旅

　　　一行詩
夏の灯や庭に幽玄ただよはす
夏の霧上川盆地埋め尽くす

　　　川　柳
老いぼれにおこぼれあるや缶ビール

念坊ひとり旅

　　　一行詩
退院に彼に頼まれるサングラス
天道虫日本の自然守りたし

　　　川　柳
三連休コロナと雨の祟りかな

念坊ひとり旅

　　　一行詩
有明や盆地かすかに露涼し
工事しつつ手でかけ直すサングラス

　　　川　柳
目が覚めて今日も憂き世を耐え忍ばん

念坊ひとり旅

　　　一行詩
白壁の裾ラベンダー続きをり
街路樹の幹にひとすじ夏の雨

　　　川　柳
動かざる男陰湿かたかげに