スーパーコンピューターについて文部科学省へ提出したパブリックコメント

私は民間企業から研究所へ出向し、生物学物理学分野でスーパーコンピューター用のプログラムを開発している者です。エクサスケールに向けて、全ての分野の基盤技術となる、応用数学とソフトウェア工学への注力を要望します。

どんなに速い計算機があっても、時代後れのアルゴリズムを使っていては無意味です。私が学生の頃に勉強したクヌース大先生の「The art of computer programming」などは、今では「旧約聖書」と呼ばれています。今世紀に入ってから書かれた「Numerical Recipe」も、最先端ではありません。並列計算機のための応用数学とアルゴリズム理論を研究開発し、社会人向けのセミナーの開催、通信教育、書籍の刊行などによって、HPC業界のプログラマーに広く知らせてください。

CPUの性能とコンパイラーの性能は、かけ算で効きます。日本製のCPUで構築した計算機のハードウェアが世界で何位かになっても、コンパイラーの性能とのかけ算でインテルに負ければ、使う側にとって無意味です。残念ながら、現在の富士通コンパイラーはいまいちです。世界一のハードウェアを目指すならば、世界一のコンパイラーも開発してください。

エクサスケールのハードウェアが実現できても、グランドチャレンジ級のプログラムを開発できる人が、日本に何人いるでしょう。MPIプログラミングは難解です。インターコネクトのアーキテクチュアに応じて最適なMPIプログラミングをチューニングすることは、さらに困難です。それに加えて、大規模なプログラムの保守も難問です。XMPとOpenACCに少し期待しています。並列処理を前提とした、新しいプログラミング言語を開発するべきかもしれません。エクサスケールのためのソフトウェア工学に人材と資金を投入してください。

以上、よろしくご検討のほどお願いします。



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