「あんたは、あの箱をあんたの好きな物でいっぱいにするのよ。」
読んだ時、その一言に胸がギュッとした。
作家の寺島陸人さんが書いてくれたnoteの一説。
ニヒル牛店番だったおかやんとのやりとりだ。
陸人さんが"私の心の灯火"とまで言ってくれていた思い出に、ああ、そうだったと。
本当に。
23年間も店をやっていると、色んなことに鈍くなる。
大切な芯が分からなくなる。
ニヒル牛に箱代があるのは、例えば売れる物だけでなく。
作りたい物、見て欲しい物を、作家さん達が遠慮なく置くためでもあった。
誰もが、『好きな物で箱をいっぱい』にするため。
説明した覚えはないのだけれど、おかやんは当たり前に、ニヒル牛のその意味を知っている店番だった。
作家さんを愛して作品を愛して、お客さんが大好きで、この場が自由であるべきなのを、一番理解していた店番だった。
私たちは、店番としてのおかやんを失った。
その大きな穴を、忘れないようにしないといけない。
作家さん、どうか箱を、好きなものでいっぱいにして下さい。
それぞれが、好きな物でいっぱいにした箱が並ぶ店が、つまらない筈がないもの。