シンビジウムを夏の太陽から遮る為に造った「遮光棚」を解体した
この棚は夏になると遮光ネットで5方向を覆うので、昼間でも棚の中は
外気より幾分涼しく、遮られた太陽の光はシンビジウムに柔らかに注ぐ。
夜も入ってみたが、中からはネットを透かして外が見えるが、外から
中は全く見えない。懐中電灯で照らすと、照らされた部分だけが闇の中
に浮かび上がる。秋から冬、初夏にかけては遮光ネットは外してある・・・
そういう棚だった。造って7年が経ち、雨風に晒される箇所が腐りかけて
いた。解体した訳は、そういう理由である。
蒸し暑く寝苦しい夜などはよくこの棚の中で過ごした
真っ暗な中から、ネットを透かして見える外を飽きもせず眺めていた
頑丈に造った長いすは、簡単には壊れそうになかったが、水と空気と
太陽の光に、今は鉢さえ載せられない程に痛んでいた。
透明の波板を受けている垂木も、解体してみたら殆どが腐りかけていた
台風に遭わなくて良かったと、胸をなでおろした。
解体を始めた当初は、長いす以外は、ペンキを塗り直してまた組み立てる
つもりだったがそれも叶わなくなって、今はすっかり解体されて細切れに
切断しているところである。
「形有る物は何時かは壊れる」とは、頭の中では理解していても、思い出
多き遮光棚だっただけに、一抹の寂しさを感じた。名残の蚊取り線香の台
は錆び付いて手で握ると粉々に壊れてしまった。
物は壊れてしまったが、心の中にある思い出は死ぬまで壊れてしまう
ことはない・・・つくづくそう思う。