嵐ファン・大人のひとりごと

嵐大好き人間の独りごと&嵐の楽曲から妄想したショートストーリー

ショートストーリー『LIFE』

2009年09月06日 | ショートストーリー
妄想ドラマの前にもうひとつショートストーリーを。

嵐の『LIFE』をBGMにどうぞ♪






   『 LIFE 』





俺の朝は早い。

まだ暗い午前3時、ベッドから抜け出して冷たい水で顔を洗う。

昨夜は久しぶりに高校時代の同級生5人で飲んだから、正直眠くて辛い。

足音を忍ばせて階段を下り、自宅の一階にある店の厨房に入る。

壁の小さなオレンジ色の光をたよりにスイッチを押した。

天井の蛍光灯がいつもより眩しく感じる。

これからひとりで仕事開始だ。

始めに取りかかるのは、朝食用のシンプルなパン。

やっと親父がまかせてくれるようになった。

昨日のうちに計量しておいた材料をミキシングマシンに入れる。

季節や天候によって微妙に違う配合は企業秘密。

パン生地は生き物。

見て触って声を聴け、と親父は言う。

職人気質で時代遅れな男だと思っていたけど、一緒にパンを焼くようになって

少し見直した。

うまくいえないけど、その頑固なまでに自分の信じた道を行く姿勢は悪くないかもしれないと思う。



商店街の端のちっぽけな店だけど、ひいきにしてくれるお客さんは多い。

店が繁盛するのは嬉しいけど、子供の頃は一度も旅行に連れて行ってもらえないのが不満だった。

週に一度の定休日と正月意外は、親父が店を休まなかったからだ。

長い休みのあと、いつも友達の土産話の聞き手になるしかないのが寂しかった。

お袋は不満に思ったことはないんだろうか。


しばらくすると親父も起きてきて、厨房は一気に活気づく。

生地の発酵具合をチェックして満足そうだ。

俺だってもう半年もこの毎日を繰り返しているんだから当然だ。



親父が過労で倒れたと連絡をもらったのは去年の暮れだった。

大手企業でサラリーマンをやっていた俺は、

お父さんを助けてやってというお袋の頼みに負けて

パン屋になる決断をしたけれど、時々これでよかったのかわからなくなる。

サラリーマン時代も悩みはあったけど、必要とされている人間だという確かな手ごたえがあった。

社会の一端を背負っているというプライドがあった。

飲み会で会った友人たちに言われた。

「親の仕事を継いでるお前は気楽でいいよなぁ」

もやもやした気持ちが胸を塞ぐ。


やがてオーブンから立ち上る香ばしい香りが厨房に充満して、俺は少し緊張する。

「よし」

満足げな親父の声。

次々に焼きあがるパンが店に運ばれる。

7時半の開店まで休む暇がない。

焼きたてのパンとお袋が入れてくれたコーヒーで胃袋を満たす。


10時になるとアルバイトの女の子が来てくれて、

お袋はバタバタと家事をこなす。

彼女と俺は付き合って一年。

実は3ヶ月前、お互いの気持ちを確かめ合ったばかり。

でも彼女に、お袋と同じような人生を歩ませることにためらいを感じている。


休憩時間にテレビをつけた。

知らない町の駅でインタビューするリポーター。

「月曜日って仕事に行くの憂鬱だったりしませんか?あなたのやる気を出す秘訣はありますか?」

「えーっと、私の場合は朝、近所のパン屋さんの前を通ると焼きたてのパンの匂いがするんですね。

 そうすると、なんか頑張ろうかなって」

知らない人の笑顔に、胸の奥が熱くなった。

うちのパンを食べたい人のために頑張る、という親父の言葉が浮かんだ。



ある日、彼女とお袋が楽しそうに笑っていた。

ちらっと俺を見て店に戻る彼女。

「なんだよ。俺の噂?」

ふふっと小さく笑うとお袋が言った。

「あんたはすぐ顔に出るからねぇ。とっくにばれてるよ彼女とのこと」

「えっ・・・そうか。そろそろ言おうとは思ってたんだけど」

「あの子の気が変わんないうちにさっさと結婚しちゃいなさいよ」


親とマジな話をするのは照れるけど、思い切ってお袋に聞いた。

「忙しくてさ、お金稼いでも旅行にも行けなくて、そんなんで不満とかないの?」

お袋は振り返って親父がいないのを確認してから

「愛されてるからね」

と言った。

「ああ見えてお父さんね、ちゃんと言ってくれるの。何年かに一度だけど

 ありがとうって。お前がいてくれるからここまで頑張ってこれたって。

 だから私は幸せ」

それから俺の背中をポンと叩いて店に出て行った。


ガラス張りの向こうに見える彼女とお袋を見ながら、

繰り返される毎日の中で、俺にも大切なものを見つけられそうな気がしてきた。

きっとそれは目に見えるものじゃなくて、俺と彼女の心の中で育てるものなんだろう。

そしてパンの中にもちょっぴり練りこんで、食べた人にもおすそ分けしたい。

今度の休み、俺は彼女の両親に挨拶に行こうと思う。



         -------------end-------------



パン屋さんといえばCMで御馴染みの相葉くんか

将来の夢はパン屋さん?のおーちゃんでしょうか。

私の妄想では相葉くんでした


実は妄想ドラマ(相葉くん主演のほのぼのラブストーリー)の予定でしたが、

相葉くんのドラマと重なるのでショートストーリーに変更。

潤くんを産婦人科のお医者さんにする予定だったので、ちょっと残念ですが

それはまたいつかどこかで登場していただきましょう注・まったくエロくはありませんので誤解無きよう

では




           
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ショートストーリー『WAVE』

2009年08月13日 | ショートストーリー
久しぶりのショートストーリーです
 
嵐のWAVEをBGMにどうぞ♪





     『 WAVE 』



早朝の海辺でその人を見た。

風に髪をなびかせながら、海の向こうに、何かを見ていた。

綺麗な横顔が気になった。

でも声はかけない。

触れてはいけないような空気に包まれていたから。


混雑する夏の海もこの時間はまだ静かだ。

俺と同じように海とたわむれるサーファーたちが数人、遠くに見えるだけ。

今朝はオフショアの波。

最高のコンディション。

名残惜しいけど仕事があるので切り上げる。

いつの間にか姿が見えなくなったあの人は俺の姿を見てくれただろうか。



それからも時々彼女を見かけた。

何回目かで初めて言葉をかけた。

「海、好きなんだね」

「あなたも」

そういって笑顔を交わした。



会うたびにひとつ彼女のことを知り、俺のことをひとつ話す。

好きな映画、好きな音楽、好きな食べ物。



夏の終わりに俺は彼女を花火に誘った。

「海の家のバイト仲間で花火やるからって、知り合いに誘われたんだけど

 一緒に行かない?」

「でも・・・」

「大勢のほうが楽しいから誰か誘って来てって言われたんだ。夏の思い出にどう?」

「そうね。夏の思い出に」

彼女の笑顔はいつも静かで優しかった。




花火をしたり、ビールを飲んだり、スイカ割りに興じたり、

思い思いに夏の終わりを楽しんだ。

みんなから少し離れて二人で砂浜に座った。

「誘ってくれてありがとう。楽しかった」

「そう、よかった」

「私、そろそろ自分の居場所に戻らなきゃね」

この日が来るのは分かっていた。

「寂しいな・・・いつかまた会えるかな」

彼女はゆっくり首を振った。

「わからない」


波の音が心を支えてくれる。

「俺はたぶん、ずっとここの海にいるから話したくなったらおいでよ」

「優しいね」

「そう、海の男は優しいの!」

フフッと彼女は小さく笑った。

「私ね、まだ笑えるんだってあなたと会って発見した。だから頑張ってみる」

「そうだね。もっといっぱい笑えるようになるよ、きっと」

「うん」

今夜は柔らかなオンショア。

月が綺麗だ。

友達の気持ちから前へは進まないと決めていたのに、胸が苦しい。

初めて言葉を交わしたときにはもう好きだったのかもしれない。



立ち上がって、砂を払うと彼女が言った。

「ありがとう。元気でね」

「ああ、君も」

どちらからともなく手を差し出して握手をした。

彼女を抱きしめたい気持ちをぐっと抑えた。

そんなことをしたら永遠に会えなくなりそうで。

いつか、彼女を置いて海に消えた彼のことが思い出になったら・・・

またこの海岸で巡り会えるだろうか。



「みんなで写真撮るぞ!集合!」

誰かが俺たちを手招きする。

「はい、一たす一は?」

「にぃー!」



日焼けした20人ほどの集合写真の中に、白い君の笑顔が小さく写っている。

隣に意味のないVサインをしている俺。

海を渡る風はかすかに秋の気配。




      
               --------end---------




さて、誰をキャスティングしましたか?

やっぱりサーファーといえば潤くんですよね

いやんカッコイイ

でも相葉くんでもいい感じ。

にのちゃんは海が嫌いだし、翔くんもピンと来ないなぁ。

漁師さんもサーフボードを持ってる姿がいまいちしっくりきません・・・

海は似合ってるんだけど。デヘ~



“WAVE"は2007年のアルバムTimeに収録されている曲です。

夏に聴きたいですね。

車で綺麗な砂浜が見える海岸線なんかを走りながら。

ええ、助手席にはおーちゃん、後ろには釣り道具一式・・・???

会話はもちろん魚のこと

包丁、まな板、わさびに醤油も忘れずに!

バナナとゆで卵はおーちゃん担当で。

ん~色気無い
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ショートストーリー『Dear My friend』

2009年02月25日 | ショートストーリー
嵐のDear MY FrindをBGMにどうぞ

   




   『Dear MY Friend』


三月といってもまだ肌寒く春が一歩遠ざかったような日、

俺は5年ぶりにF空港に降り立った。

18年間をすごした懐かしい空気をおもいきり吸い込んでみる。

ひんやりとした空気が行きかう人々の言葉と共に染み渡り

帰ってきたことを体で感じる。



ここからお前のところまで私鉄を乗り継いで一時間半。

少し複雑な思いでいる。

お前はなんと言ってくれるだろうか?



二人でサッカーに熱中した日々。

プロへの道をただひたすらに追いかけた。

誰もが・・・そしておれ自身が疑うことのなかった将来は

ある日あっけなく閉ざされてしまった。

俺の不注意からのバイク事故。

自棄になってあれる俺をささえてくれたのはお前だった。

改まって礼を言ったことなんてなかったけど、気持ちは伝わっていたよな。



今でも季節の変わり目には膝が痛むこともあるけど

時々小学生のサッカーチームのコーチをしている。

昔の俺たちみたいなのがいて応援したくなるんだ。

子供、嫌いだったはずなのにな。



バスを降りるといい香りがした。

花の匂い?梅の花が咲いている。

そんなことに足を止めるなんて俺も大人になったもんだ。



梅の花がほころぶ頃、俺たちは揃って東京の大学に進学するためこの土地を後にした。

両親も生まれ故郷に帰った今、ここに来たのはお前に会いたかったから。



学生結婚したお前の息子も来年は小学生だ。

だんだん父親に似てきたよ。

お前が逝って泣いてばかりいた彼女もたくましい母親になった。



お前の許可をもらったら東京へ帰って彼女にプロポーズするつもりだ。

いいよな?

必ず暖かい家庭をつくる。

そしてお前の分まで幸せになる。



いつかそっちへ行ったら、また二人で酒を飲みながら馬鹿を言おう。

お前は22歳の若者のままで、俺は爺さんなのが悔しいけど仕方ない。

あの頃もらった勇気を胸に、

自慢話がいっぱいできるように生きていくから、

遠い空からエールを送ってくれ。







    ---------end---------




この『俺』の役は私の妄想劇場では翔くんでした。



Dear My Friend は2004年にリリースされたアルバム『いざッ、Now』に

収録されている曲です。

初めて聴いたときから何だかジーンときました。

結婚して遠く離れた土地に来てずいぶんと経ちましたが、

10代の終わりを共に過ごした仲間たちは今でも変わりなく大切な友達です。

会えるのは一年に一度あるかどうかです。

それでも彼女たちと縁が切れることは一生ないと確信しています。

この曲を聴くと会いたくなる。



嵐の5人もいい出会いをし絆を深めてきたんですね。

彼らを見ていると青春映画をリアルタイムで見ているようで

暖かい気持ちになります。

ずーっと応援するからね!!!

君たちがおじいちゃんになっても・・・・あれっ!?その頃わたしはあの世だわ!

へへっ・・・霊になって覗いちゃお





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ショートストーリー『チェックのマフラー』

2009年02月01日 | ショートストーリー
 嵐のチェックのマフラー♪をBGMにどうぞ!





      『チェックのマフラー』


 きょうは朝からハイテンションの俺。

「なんかさ、わかり易いのよねあんたって。いいことあるんでしょ?」

家族には悟られないように気をつけているのにアネキにはお見通しらしい。

無視して自分の部屋にもどる。



久しぶりのデート。香織に会える。

まぁ会うだけなら毎日学校で会っているんだけど、

学校以外で制服じゃない彼女と会うのは、

付き合っているという実感があって嬉しい。



香織とは二学期に席が近くなってなんとなく話すようになった。

しっかりしていて真面目な子という印象しかなかったけれど

実はちょっと天然なところもあって可愛い。

同じミュージシャンのファンとわかってよく話すようになった。



そして二学期最後の日、俺はCDを買いに行くからと彼女を誘い、

その帰りに告白した。



初めてのデートは部活が休みになった年末。

遅いクリスマスプレゼントを交換しあった。

映画を見てマックでいろんなことを話した。

信号で立ち止まり、どちらからともなく手をつないだ。

女の子の手は柔らかく華奢なことを知った。



その後、冬休み中は彼女が母親の実家に行ったり、

俺が部活で時間が取れなかったりして

あまり会えなかった。

メールで毎日やり取りしていても、何時間も彼女と一緒にいられるのとは違う。

顔を見て、体温が感じられる距離で声を聴く。

彼女が笑ったり、ちょっとすねたり、俺の背中を軽く叩いたり、

そんなことに幸せを感じる。



着ていく服が決まった。

香織からもらったチェックのマフラーを巻いてみた。

なんだか照れくさくて、学校へはしていかない。

玄関で靴を履いているとアネキが

「青春だねぇ」

と言うのが聞こえた。二つしか違わないくせに。



この辺では一番大きな図書館のある街の駅で待ち合わせた。

別に二人で勉強しようってわけじゃない。

高校生のデートコースといえば大型ショッピングセンターを中心にして、

映画館や本屋、ファミレスが集まっているT駅の周辺と決まっている。

誰に会うかわからないし、部活でバイトも出来ない俺たちは金もない。

二人で居られるならどこでもかまわなかった。



香織の方が先に来ていた。

改札の向こうで手を振っている。

俺も手を振る。



「ごめん。待った?」

「大丈夫、まだ約束の5分前。マフラーとても似合ってる」

俺に元気をくれる大好きな笑顔。

手をつないで歩き出した。

図書館まで15分。

降り出した雪が街を白く変えて行く。



いつもおしゃべりな香織が黙ったままだ。
「どうした?元気ないじゃん」

「そんなことない。ちょっと寒いだけ」

俺はマフラーをはずして香織の首に巻いた。

途端に彼女の目が潤んで今にも泣きそうになる。



「ごめんね。クリスマスに買ってもらったピアス片方なくしちゃった」

ナイキのシューズを買うのを諦めてプレゼントしたピアス。

とても喜んでくれたっけ。

ポロリと涙がこぼれた。

「泣くなよ。もっといいの買ってやる」

香織の涙をそっと手で拭い、マフラーを直してやる振りをしてキスをした。

誰かに見られたってかまわない。



まだ俺たちは始まったばかり。

こんな小さな出来事をずっと二人で作って行こう。

恋が愛にかわるまで。


        --------end---------



チェックのマフラーは2004年にリリースされたアルバム『いざッ!Now』に収録されています。


私の妄想劇場の<俺>は高校生。

Vの嵐の翔くんとか、ピカ☆ンチの相葉くんとか、金田一少年の潤くんとか、

あとは涙をふいてのニノ、高校生ではなかったけど四分の一の絆の智くんあたり。

それぞれどんなチェックのマフラーが似合うかな?

本当は長編にしたいくらいのエピソードがあるんだけど・・・



次回はどうしようかな。

まだ2月に入ったばかりだし冬の曲続きでいきますか。

う~~ん悩む。
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ショートストーリー『冬のニオイ』

2009年01月27日 | ショートストーリー
  ※嵐の「冬のニオイ」を聴いてから読んでいただけるとGOOD!



 
     『冬のニオイ』


 丘陵地にある駅のホームに立つと、冷たい風が体温を奪って行く。

天気予報では、深夜から今年初めての雪になると言っていた。

コートのボタンを掛けながら遠くに見える街の灯りを眺めていると、突然忘れたはずの想いが蘇る。

そう、いつも突然の不意打ち。

きみと過ごしたあの街、あの時間。

優しくてしっかり者だけど、僕にだけはちょっぴりわがままな人だった。

それがなんだか愛しかった。

誰よりも大切な人だと思っていた。



やがて僕らは社会に出て、目の前の変化に一喜一憂し、積み重ねたおだやかな愛を見失ってしまったんだ。

いや、大事なものを見失ったのは僕だけだね、きっと。



仕事でこの電車を利用するたびに君を思い出して切ない。

君の声も柔らかな髪の手触りも体は鮮明に覚えているのに

記憶の中の笑顔だけが少しぼやける。

もっと時間がたてば忘れることができるのだろうか。





駅のアナウンスが流れ、

あの頃と変わらないオレンジ色の車体がホームに滑り込んできた。

暖かな空気に包まれてドアから吐き出される一塊の人間たち。

冷たい風を身にまとい乗り込む僕。

仕事帰りのサラリーマンやOLでつり革は埋まっている。

ホームとは反対のドアの傍に立とうと一歩踏み出した時、

窓に映る人が目に入った。



見覚えのないコート、短くなった髪、それでも一瞬で君だとわかった。

どうすればいいのだろう。

ずっと誤魔化して自分を納得させてきたけれど、

本当の気持ちがあふれ出して止められない。




会いたかった。

でも言えなかった。

別れを切り出したのは僕だったから。

君の心を取り戻したいけれど、許されることだろうか。

君の進もうとしている未来にはもう寄り添う誰かが決まっているのかもしれない。

足が動かない。




振り返った君と目が合った。

一瞬、当惑の表情を見せた後、はにかんだように微笑むと

「久しぶり」と唇が動いた。

できるかぎり平静を装って近づいたけれど、窓に映った僕の笑顔はぎこちない。



「元気だった?」

「元気だったよ。仕事帰り?」

「えっ?、あぁ、取引先からそのまま帰るところ」

伝えたい気持ちがぐるぐると体の中を駆け巡るばかりで焦る。

目をそらして窓の外を見た。

思い出が詰まった街の灯りが遠くに消えていくのが見えた。

君を忘れることなんてできない。



「ずっと会いたかった」

言葉に出来たのはこれだけ。

誰かが雪が降ってきたと話している。





うつむいたまま黙っていた君がぽつりと言った。

「あの店まだあるかなぁ」

あの店・・・それは二人で映画を見た帰りに必ず寄った小さな店。

初老のマスターが一人で切り盛りしていて、忙しそうな時は頼まれもしないのに水やお絞りを常連客が出していた。

カウンターに料理が出てくると自分でテーブルまで運んだりもしたっけ。

僕らが注文するのはいつも煮込みハンバーグだったね。

マスターの自慢の一品。




「あの店がまだあるかどうか、これから二人で確かめに行ってみるってのはどう?」

僕は聞いた。



君は僕の目をしばらく見つめていた。

まるで僕の声にならない気持ちを読みとろうとしているかのように。

それから黙ったままゆっくり頷いた。



                  -----end-----





冬に聴くとジーンときてしまう『冬のニオイ』はおーちゃんのソロで始まる切ない曲ですよね

嵐のアルバム、5×5THE BEST SELECTION OF 2002←2004 に収録されています。

私の妄想ではやはり「僕」はおーちゃんですが、嵐の5人誰でもぴったりきますね。相葉ちゃんだとよけいにグッとくるかも

あなたなら誰?

この曲は切ないままですが、妄想とはいえ嵐くんたちが演じるとなると、

そこはやっぱり悲しいまま終わるのは忍びないので希望を繋ぎました。


次回のショートストーリーもやっぱり冬の曲で!と思ってます






































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