妄想ドラマ『スパイラル』 (18)
美菜がメールに気が付いたのは、朝になってからだった。
眠っている渉とその頬に添えられた女性の手。
しばらくボーっと眺めていた。
大好きな渉の寝顔なので見入ってしまう。
ふと我に返って送信してきたのが沙織だということを、もう一度確かめる。
やはり間違いない。
美菜はメールを削除し、沙織から電話もメールも
二度と来ないように着信拒否設定をした。
沙織がどこで渉の寝顔を撮ったのか考えると怒りがこみあげてくる。
今すぐ渉の声を聞きたい気持ちと、腹立たしさが交互にやってきて、
携帯を手にしたまま、どうすることもできずに涙がこぼれた。
しばらくすると、マネージャーの川崎が迎えに来た。
美菜は涙を拭うと、鏡の前で笑顔をつくり、気持ちを切り替えて仕事に向かうしかなかった。
その頃、渉は飲みすぎてむくんだ顔を鏡で見ていた。
冷たい水で顔を洗うと少しすっきりした。
昨夜は一つの仕事をやり終えた充実感で満たされていたのに、
今はもうその気持ちはしぼんでなんだか寂しい。
美菜に電話をしてみた。
無性に声が聴きたかった。
仕事中なのか、美菜は電話に出ない。
しかし5分も経たないうちに携帯が鳴ったので、美菜からだと思って
渉はあわてて携帯を手に取った。
「おはよう渉くん。二日酔いじゃない?具合はどう?」
「沙織か・・・」
「あら悪かったわね私で。心配してかけたのに」
「悪い。途中から記憶とんでるんだよねぇ。俺、寝ちゃったと思うんだけど、
誰が送ってくれたんだろう?覚えてないんだ」
「わすれちゃったの?残念。これから映画のプロモーションで
また会うこと事多いけど、よろしくね」
沙織がなにか意味深な言い方をしたのが気になったが、渉はあえて聞かなかった。
その日はとうとう美菜からの連絡はなかった。
クランクアップしたことは知っているはずなのに、メールの返事すら来ない。
渉の胸を不安がよぎった。
翌日になっても音沙汰がない。
川崎に言われた言葉が、突然渉の胸に蘇る。
「美菜はラブストーリーの相手役に惚れてしまうけど、本気にしないで。
憑き物が落ちるみたいにある日突然終わってしまうから」
-------つづく------- 19話へ
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美菜がメールに気が付いたのは、朝になってからだった。
眠っている渉とその頬に添えられた女性の手。
しばらくボーっと眺めていた。
大好きな渉の寝顔なので見入ってしまう。
ふと我に返って送信してきたのが沙織だということを、もう一度確かめる。
やはり間違いない。
美菜はメールを削除し、沙織から電話もメールも
二度と来ないように着信拒否設定をした。
沙織がどこで渉の寝顔を撮ったのか考えると怒りがこみあげてくる。
今すぐ渉の声を聞きたい気持ちと、腹立たしさが交互にやってきて、
携帯を手にしたまま、どうすることもできずに涙がこぼれた。
しばらくすると、マネージャーの川崎が迎えに来た。
美菜は涙を拭うと、鏡の前で笑顔をつくり、気持ちを切り替えて仕事に向かうしかなかった。
その頃、渉は飲みすぎてむくんだ顔を鏡で見ていた。
冷たい水で顔を洗うと少しすっきりした。
昨夜は一つの仕事をやり終えた充実感で満たされていたのに、
今はもうその気持ちはしぼんでなんだか寂しい。
美菜に電話をしてみた。
無性に声が聴きたかった。
仕事中なのか、美菜は電話に出ない。
しかし5分も経たないうちに携帯が鳴ったので、美菜からだと思って
渉はあわてて携帯を手に取った。
「おはよう渉くん。二日酔いじゃない?具合はどう?」
「沙織か・・・」
「あら悪かったわね私で。心配してかけたのに」
「悪い。途中から記憶とんでるんだよねぇ。俺、寝ちゃったと思うんだけど、
誰が送ってくれたんだろう?覚えてないんだ」
「わすれちゃったの?残念。これから映画のプロモーションで
また会うこと事多いけど、よろしくね」
沙織がなにか意味深な言い方をしたのが気になったが、渉はあえて聞かなかった。
その日はとうとう美菜からの連絡はなかった。
クランクアップしたことは知っているはずなのに、メールの返事すら来ない。
渉の胸を不安がよぎった。
翌日になっても音沙汰がない。
川崎に言われた言葉が、突然渉の胸に蘇る。
「美菜はラブストーリーの相手役に惚れてしまうけど、本気にしないで。
憑き物が落ちるみたいにある日突然終わってしまうから」
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