久しぶりに妄想ドラマを始めます。
サトシックなラベンダーさんご希望。何か月も前
しかも“決して爽やかではない感じ”を目指したいと思います
だってそういうリクエストだったもん。ね?
今回は、5名様の中からお好きな誰かをキャスティングできるように、
主役の名前は高野渉(タカノワタル)にしました。
年齢は・・・末っ子に合わせて27歳ってことで。
私?
もちろんおーちゃんを主役に抜擢いたしました
《 主な登場人物 》
高野渉・・・・・俳優 27歳
鳴沢美菜・・・・若手人気女優 24歳
新田沙織・・・・女優 27歳
西野慶介・・・・渉のマネージャー
川崎博子・・・・美菜のマネージャー
沢渡一樹・・・・脚本・演出家
小田中真一・・・美菜の所属事務所社長
主題歌は嵐の『スパイラル』でどうぞ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
妄想ドラマ 『スパイラル』 (1)
いつもより時間をかけて丁寧に歯を磨いた。
それから鏡の中の自分の顔を見て、
小さくため息をついた。
憂鬱な気持ちが顔に出ている。
今度の舞台は気が進まなかった。
高野渉にとっては8本目の舞台だったが、こんなことは初めてだ。
携帯小説が原作のラブストーリーで、
ヒロインは若者向けのテレビドラマで人気の鳴沢美菜というのも気が重かった。
美菜とキスシーンを演じるとなれば、
そのことばかりがクローズアップされるのは目に見えている。
誰の考えなのか、キスシーンがあることはまだ伏せてあった。
マスコミにセンセーショナルに取り上げてもらうために、時期を計っているようだ。
しかし気が進まなくても、与えられた仕事は全力でやるしかないのもわかっていた。
鳴沢美菜の相手役を辞退できるような立場ではない。
そんなことをすればこれからの仕事に差し障りが出る。
渉は舞台での評価は年々高まっていたが、テレビでの露出が少ないため、
まだ知名度は低かった。
それでも恵まれたルックスと演技力の確かさで演劇ファンの女性の間で人気は高く、
渉が出演する舞台のチケットはいつも数日で完売していた。
美菜の所属事務所、小田中プロモーションの社長がそんな渉に目をつけて、
美菜の恋人役に抜擢したのだ。
小田中プロモーションは人気タレントを多数抱える大手で、放送業界にかなり顔が利く。
それに比べて、芸能界の片隅でなんとか生き残っているようなオフィスMKは
二つ返事で渉へのオファーを受けた。
渉が話を聞いたときは、すでにスケジュールも舞台の為に調整されていた。
そして事務所の社長にもマネージャーの西村慶介にもこれはチャンスだと言われた。
小田中プロが美菜のために用意したこの舞台はマスコミでも話題になる。
渉の名前と実力が世間に知られれば、連ドラの主役だって夢じゃないと。
渉はキャップを目深にかぶると、頬を両手でパンパンと軽くたたき、
無理やり気持ちを奮い立たせてマンションを出た。
稽古場に着くとマネージャーの西村が待っていた。
「今日から美菜ちゃんも稽古に来るって」
「どうせまた途中で帰っちゃうんじゃないの?」
「ドラマは昨日クランクアップしたそうだよ」
美菜はドラマとCMの収録のために本読みも途中で抜け、立ち稽古に入ってからは
まだ一度も顔を見せていない。
こんなに主役抜きで稽古が進められることは異例だ。
出番の少ない新田沙織がいつも美菜の代役を務めていた。
主役のいない稽古はみんなの士気も上がらない。
渉はいっそ沙織が相手役ならいいのにとさえ思っていた。
感がよく呑み込みも早い。
渉と芝居の息も合った。
色白で可憐な雰囲気の沙織は、27歳という実年齢よりずっと若く見えた。
主役を張れる実力も十分に持っている。
ただ、美菜のようにそこにいるだけでみんなの視線を集めてしまうような、
圧倒的な存在感は沙織にはなかった。
「そろそろ美菜ちゃんも本腰いれないとまずいでしょ。マネージャーの川崎さんと
話したんだけど、この舞台で可愛いだけじゃないってところを見せたいんだって」
「可愛いだけじゃない・・・」
ポスター用の写真撮影の時の美菜の綺麗な顔が浮かんだ。
「彼女も24だし、そろそろ演技派とかいう評価が欲しいんだよ。今後の仕事につなげるためにもね。
マネージャーの川崎さんって僕の大学の後輩でさ、ぜひ渉の力を貸してほしいって頼まれたよ」
「俺に頼むより本人次第だろ」
「まぁそうなんだけどね」
稽古場になっているスタジオBは本来ダンススタジオで、2年前のミュージカルの時も
渉が練習を重ねたなじみの場所だ。
舞台の練習に使っている広いスタジオの他に3つのスタジオと、会議室や控室もある。
今回は、それをまるごと小田中プロが借りていた。
この舞台への小田中プロの意気込みが感じられる。
ドアを開けると他の出演者たちはもう揃っていて、台本を広げたりストレッチをしている。
演出の沢渡一樹と40代後半くらいの男性がなにやら話し込んでいた。
同じ40代でも年中ジーンズにジャンパーといったカジュアルな服装の沢渡と違って
その男性は仕立てのいいスーツに身を包み、余裕のある上品な笑顔をみせていた。
裕福な暮らしぶりを匂わせている。
渉に気が付いて、沢渡が手招きした。
「渉、こちらが小田中プロの社長の小田中さん」
「どうも、高野渉です」
「小田中です。もっと早くお会いしたいと思ってました。間近で見ると思ってたより男前だなぁ。
美菜が惚れてしまわないか心配になってきた」
そういって小田中は愉快そうに笑った。
「君には期待してるんですよ。実力も申し分ないし、何と言っても舞台で美菜と並んだ時に
見劣りしない華がある。なんで今までテレビで表舞台へ出てこないのか不思議だよ」
「それはどうも」
渉はなんと言って答えたものか困ってあいまいな笑顔を浮かべた。
「高野君は27だっけ?僕ならとっくに連ドラの主役クラスにしてた自信があるな。まぁ今回は君にとっても
飛躍するチャンスだと思うし、美菜のことはよろしく頼みます。あの子にはね、
まだまだ秘めた力があるんです」
「精一杯やらせていただきます」
そう言いながらも、小田中のことを苦手なタイプだと思った。
人当たりのよい笑顔の裏に、人を値踏みしているような傲慢さがちらちら見える。
「僕がいると沢渡くんも美菜もやりにくいだろうから帰ります。それじゃみなさん頑張って」
小田中が帰って数分後、入れ違いに美菜が来た。
ノーメイクで長い髪を無造作に束ねているのに、稽古場の空気がパッと華やいだ。
「美菜ちゃん、セリフはどこまで入ってる?」
沢渡が聞いた。
「もちろん、すべて大丈夫です」
「じゃ美菜ちゃんが準備できたら、一幕の二人が上手から出てくるところからいこうか。
みんなもスタンバイして」
美菜はスタジオの隅にいた渉を見つけると、まっすぐにやって来て
挨拶もなしにいきなりこう言った。
「あなたが私のこと気にいらなくても平気です。仕事ですからちゃんとやります」
--------------つづく------------- 2話へ
ラベンダーさん、お待たせ
さて美菜と沙織どっちになる?
みなさんの中で渉は5名様の誰のビジュアル?
ではまた
サトシックなラベンダーさんご希望。何か月も前
しかも“決して爽やかではない感じ”を目指したいと思います
だってそういうリクエストだったもん。ね?
今回は、5名様の中からお好きな誰かをキャスティングできるように、
主役の名前は高野渉(タカノワタル)にしました。
年齢は・・・末っ子に合わせて27歳ってことで。
私?
もちろんおーちゃんを主役に抜擢いたしました
《 主な登場人物 》
高野渉・・・・・俳優 27歳
鳴沢美菜・・・・若手人気女優 24歳
新田沙織・・・・女優 27歳
西野慶介・・・・渉のマネージャー
川崎博子・・・・美菜のマネージャー
沢渡一樹・・・・脚本・演出家
小田中真一・・・美菜の所属事務所社長
主題歌は嵐の『スパイラル』でどうぞ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
妄想ドラマ 『スパイラル』 (1)
いつもより時間をかけて丁寧に歯を磨いた。
それから鏡の中の自分の顔を見て、
小さくため息をついた。
憂鬱な気持ちが顔に出ている。
今度の舞台は気が進まなかった。
高野渉にとっては8本目の舞台だったが、こんなことは初めてだ。
携帯小説が原作のラブストーリーで、
ヒロインは若者向けのテレビドラマで人気の鳴沢美菜というのも気が重かった。
美菜とキスシーンを演じるとなれば、
そのことばかりがクローズアップされるのは目に見えている。
誰の考えなのか、キスシーンがあることはまだ伏せてあった。
マスコミにセンセーショナルに取り上げてもらうために、時期を計っているようだ。
しかし気が進まなくても、与えられた仕事は全力でやるしかないのもわかっていた。
鳴沢美菜の相手役を辞退できるような立場ではない。
そんなことをすればこれからの仕事に差し障りが出る。
渉は舞台での評価は年々高まっていたが、テレビでの露出が少ないため、
まだ知名度は低かった。
それでも恵まれたルックスと演技力の確かさで演劇ファンの女性の間で人気は高く、
渉が出演する舞台のチケットはいつも数日で完売していた。
美菜の所属事務所、小田中プロモーションの社長がそんな渉に目をつけて、
美菜の恋人役に抜擢したのだ。
小田中プロモーションは人気タレントを多数抱える大手で、放送業界にかなり顔が利く。
それに比べて、芸能界の片隅でなんとか生き残っているようなオフィスMKは
二つ返事で渉へのオファーを受けた。
渉が話を聞いたときは、すでにスケジュールも舞台の為に調整されていた。
そして事務所の社長にもマネージャーの西村慶介にもこれはチャンスだと言われた。
小田中プロが美菜のために用意したこの舞台はマスコミでも話題になる。
渉の名前と実力が世間に知られれば、連ドラの主役だって夢じゃないと。
渉はキャップを目深にかぶると、頬を両手でパンパンと軽くたたき、
無理やり気持ちを奮い立たせてマンションを出た。
稽古場に着くとマネージャーの西村が待っていた。
「今日から美菜ちゃんも稽古に来るって」
「どうせまた途中で帰っちゃうんじゃないの?」
「ドラマは昨日クランクアップしたそうだよ」
美菜はドラマとCMの収録のために本読みも途中で抜け、立ち稽古に入ってからは
まだ一度も顔を見せていない。
こんなに主役抜きで稽古が進められることは異例だ。
出番の少ない新田沙織がいつも美菜の代役を務めていた。
主役のいない稽古はみんなの士気も上がらない。
渉はいっそ沙織が相手役ならいいのにとさえ思っていた。
感がよく呑み込みも早い。
渉と芝居の息も合った。
色白で可憐な雰囲気の沙織は、27歳という実年齢よりずっと若く見えた。
主役を張れる実力も十分に持っている。
ただ、美菜のようにそこにいるだけでみんなの視線を集めてしまうような、
圧倒的な存在感は沙織にはなかった。
「そろそろ美菜ちゃんも本腰いれないとまずいでしょ。マネージャーの川崎さんと
話したんだけど、この舞台で可愛いだけじゃないってところを見せたいんだって」
「可愛いだけじゃない・・・」
ポスター用の写真撮影の時の美菜の綺麗な顔が浮かんだ。
「彼女も24だし、そろそろ演技派とかいう評価が欲しいんだよ。今後の仕事につなげるためにもね。
マネージャーの川崎さんって僕の大学の後輩でさ、ぜひ渉の力を貸してほしいって頼まれたよ」
「俺に頼むより本人次第だろ」
「まぁそうなんだけどね」
稽古場になっているスタジオBは本来ダンススタジオで、2年前のミュージカルの時も
渉が練習を重ねたなじみの場所だ。
舞台の練習に使っている広いスタジオの他に3つのスタジオと、会議室や控室もある。
今回は、それをまるごと小田中プロが借りていた。
この舞台への小田中プロの意気込みが感じられる。
ドアを開けると他の出演者たちはもう揃っていて、台本を広げたりストレッチをしている。
演出の沢渡一樹と40代後半くらいの男性がなにやら話し込んでいた。
同じ40代でも年中ジーンズにジャンパーといったカジュアルな服装の沢渡と違って
その男性は仕立てのいいスーツに身を包み、余裕のある上品な笑顔をみせていた。
裕福な暮らしぶりを匂わせている。
渉に気が付いて、沢渡が手招きした。
「渉、こちらが小田中プロの社長の小田中さん」
「どうも、高野渉です」
「小田中です。もっと早くお会いしたいと思ってました。間近で見ると思ってたより男前だなぁ。
美菜が惚れてしまわないか心配になってきた」
そういって小田中は愉快そうに笑った。
「君には期待してるんですよ。実力も申し分ないし、何と言っても舞台で美菜と並んだ時に
見劣りしない華がある。なんで今までテレビで表舞台へ出てこないのか不思議だよ」
「それはどうも」
渉はなんと言って答えたものか困ってあいまいな笑顔を浮かべた。
「高野君は27だっけ?僕ならとっくに連ドラの主役クラスにしてた自信があるな。まぁ今回は君にとっても
飛躍するチャンスだと思うし、美菜のことはよろしく頼みます。あの子にはね、
まだまだ秘めた力があるんです」
「精一杯やらせていただきます」
そう言いながらも、小田中のことを苦手なタイプだと思った。
人当たりのよい笑顔の裏に、人を値踏みしているような傲慢さがちらちら見える。
「僕がいると沢渡くんも美菜もやりにくいだろうから帰ります。それじゃみなさん頑張って」
小田中が帰って数分後、入れ違いに美菜が来た。
ノーメイクで長い髪を無造作に束ねているのに、稽古場の空気がパッと華やいだ。
「美菜ちゃん、セリフはどこまで入ってる?」
沢渡が聞いた。
「もちろん、すべて大丈夫です」
「じゃ美菜ちゃんが準備できたら、一幕の二人が上手から出てくるところからいこうか。
みんなもスタンバイして」
美菜はスタジオの隅にいた渉を見つけると、まっすぐにやって来て
挨拶もなしにいきなりこう言った。
「あなたが私のこと気にいらなくても平気です。仕事ですからちゃんとやります」
--------------つづく------------- 2話へ
ラベンダーさん、お待たせ
さて美菜と沙織どっちになる?
みなさんの中で渉は5名様の誰のビジュアル?
ではまた